残るは米国とリビア(?)だけ
27日、ロシアは1997年4月に発効した化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)に基づき、膨大なソ連時代の化学兵器の全ての破棄を完了したと発表し、同条約の履行を監視する国際機関の査察官もこれを確認して称賛しています。
ロシアのプーチン大統領は返す刀で、まだ完全な破棄に至っていない米国等の条約加盟国を非難しており、米国は微妙な立場に置かれることになります。
ロシアの完全破棄を確認した化学兵器禁止機関(OPCW:Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons)にケチをつけるだけの基礎知識はありませんが、ロシアの広大な国土や属国(シリアなど)に隠している可能性をどうして否定できるのか不思議な気もします
しかし、ちなみに、OPCWは2013年にノーベル平和賞を受賞しています
28日付Defense-News記事によれば
●ロシアの関係高官はプーチン大統領に対し、ロシア国内7箇所で行われてきた化学兵器の破棄が、ウラル山脈周辺の施設で27日に行われたVXガス野戦砲弾の処分で完了したと報告した
●1997年4月に発効した化学兵器禁止条約に対する措置を、ロシアは約20年かけ、多額の費用をかけて終了したことになる
●化学兵器禁止機関(OPCW:197年5月発足)のAhmet Uzumcu事務局長は、ロシアによる化学兵器の完全破棄履行は大きなマイルストーンであると述べ、「ロシアを祝福し、完全破棄に関わってきたすべての専門家の皆さんの努力に敬意を払いたい」と声明を発表している
●なお、同条約加盟192国の保有する化学兵器の96%は破棄されたと同機関は述べている
●プーチン大統領は完全破棄の報告を受け、破棄を完了していない米国を批判し、「米国や他の破棄未完両国が、彼らの責務を果たすことを期待する」と皮肉を込めて述べている
●一方で、同条約が発行した1990年代、ソ連崩壊後の経済的破綻で混乱下にあったため、ロシアは米国や西側諸国の支援を得て初めて同兵器破棄を開始することができた。後にロシアの経済復興に伴い、自らの負担で破棄活動を引きついたのではあるが・・・。
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化学兵器禁止機関(OPCW)には約90名の査察官が所属し、日本からも3名の自衛官が派遣されています。事務局長には陸上自衛官OBが付いたこともある機関ですが、何せ多国籍編成ですので、何がどれだけできるのかよくわかりません
なお、事務局長は最近ロシアと急接近のトルコ人です!
イスラエル(署名国)、北朝鮮、エジプト及び南スーダンが未締結国です。
条約発効後10年が完了期限で、期限を延長したとしても15年が限度だったのですが、締結国の中で破棄完了していないのは、米国、ロシア及びリビアでした
そこで2011年12月の第16回締約国会議において、同3か国が化学兵器の廃棄を継続するとのコミットメントを確認し、可能な限り早い時期に化学兵器の廃棄を完了するよう慫慂し、OPCWが中心となりその廃棄の進展を確認するための措置をとることを骨子とする決定していました
リビアの現状は知りませんが、北朝鮮と米国が同列で言及する輩が出てくるかもしれません。
外務省の「化学兵器禁止条約」解説
→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bwc/cwc/index.html
シリアと化学兵器と米軍攻撃
「シリアの化学兵器分散」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-23
「シリア巡航ミサイル攻撃の裏側」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08
「続編:同攻撃の裏側」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-11
激震:トルコがついにロシア製防空システム契約
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14