高価な空対空ミサイル(AMRAAMやAIM-9)使用を極力控え
より安価な対地攻撃用の精密誘導ロケット弾(APKWS)で苦心の迎撃
AGR-20 Advanced Precision Kill Weapon System (APKWS)
ドローン迎撃のために1発1億円~数1000万円する高価な空対空ミサイル(AMRAAMやAM-9)使用を極力控えるため、より安価な1発数100万円の誘導機能を付き対地攻撃用ロケット弾システム(APKWS)でのドローン迎撃訓練を行ったと紹介しています
James B. Hecker欧州米空軍司令官は、米本土で実施すれば部隊移動に多額の費用が必要となるが、英空軍の協力も得て演習場や模擬標的となる無人機まで提供してもらい、同演習の「英国開催」にこぎつけて経費と時間の節約に成功し、加えて模擬標的を(誤って撃墜した標的1機を除き)ほぼ無傷で再利用可能な状態で訓練を終えたともアピールしており、米空軍の台所事情の厳しさをにじませる「副産物的」宣伝にも成功(?)しています
中東では、イランやイエメンからイスラエルへの多数の弾道ミサイルや無人機攻撃を、イスラエル軍と米軍を中心とした西側空軍が迎撃する戦いや、紅海で西側船舶を実質無差別にミサイルやドローン攻撃するフーシ派との戦いが続いていますが、そんな中での大きな問題が、安価な敵無人機を1発1億円〜数1000万円する高価な空対空ミサイル(AMRAAMやAIM-9)で迎撃していては破産してしまう・・・との切実な課題です
そこで米軍が目を付けたのが、「Hydra-70」ロケットにレーザー精密誘導機能を付加したAPKWS (AGR-20 Advanced Precision Kil Weapon System)で、「打ちっぱなし能力:fire-and-forget」が無いため、ロケット弾を命中させるまで目標にレーザー照射を継続する必要があるものの、
低速なドローン迎撃であれば、レーザー照射用F-16とロケット弾を16~28発も搭載可能な発射母機F-16が連携訓練すれば対処可能として、過去1年間のフーシ派ドローン対処に成果を上げてきたということです
また、今回の「臨時英国開催版」演習では英軍から模擬標的の提供を受けていますが、英企業QinetiQ社提供の模擬標的機「Banshee Jet 80」と「Banshee Whirlwind drones」は、米本土の訓練で使用する標的機(QF-16やBQM-167A)より、
「速度が遅く、小型でレーダー探知されにくく、赤外線の強度も低い」点で、より実戦的な訓練になったと、英国ウェールズ西海の射撃場でF-16を70回出撃させ、約10発のAM-9Mと60発以上のAPKWS ロケット弾を発射する訓練を終えた第 555戦闘飛行隊長は振り返っています
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当該飛行隊長は、「我々は新たな脅威に対処するため、新たな武器を訓練している」、「我々の誰も対地攻撃用のAPKWS ロケット弾を発射したことが無く、もちろんドローン迎撃に使用したことはないので、評価演習だが重要な実戦に通じる体験訓練でもある」と正直に語っており、全てが「脅威の急激な変化」を受けた「突貫工事」であることが分かります
高価な空対空ミサイル(AMRAAM やAIM-9)が不要な時代になった・・・とまでは申しませんが、イスラエルやウクライナや中東展開の米軍が「被害を受けている脅威が何か」を考えたときに、前述の飛行隊長が語っている様に、そろそろ世界の空軍は本格的に「新たな脅威」に正面から向き合い、資源配分を見直すべきではないでしょうか?
アジア太平洋地域の米軍防空兵器 PAC-3が、全て中東へ派遣されてしまっている現実を、またウクライナ防衛が防空ミサイル消耗戦に入っている現実を、米軍幹部や世界の軍関係者はどのように見ているのでしょうか?
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