当初は2023年量産契約予定も、3年遅れの2026年へ
ただ試験用機体増強で既に4年遅れの運用体制確立は 2028年死守
一方で、既に稼働率が大きく落ち込み、前線部隊で不足するパイロット養成の大きな「ボトルネック」となっているT-38練習機の現状に鑑み、T-7の量産開始が遅れてもIOC初期運用体制確立がこれ以上遅れないよう、試験用のTー7機体数を現在の5機から9機に増強して対応すると併せて明らかにしました
T-7 練習機は、共にボーイングが契約を勝ち取ったKC-46A 空中給油機と共に、画期的な「固定価格契約」と「デジタル設計」の2本柱を導入した調達改革の「先駆者」&「優等生」として当初は大いに宣伝され高評価を得ましたが、
結果的にボーイング社 Dennis Muilenburg 前々CEO方針による「背伸びしすぎた契約獲得」が原因で、開発遅延と開発経費大幅超過(超過経費はボーイング社持ちでDave Calhoun 後任CEOが苦労した後に24年8月退陣の悲劇)を引き起こし、今や調達の「問題児」典型事例となっている案件です
T-7 調達の経緯をザックリ振り返ると・・・
好調な出だし
●2018年、NG、ロッキード、レイセオン、ロッキード、トルコIAI社チームとの機種選定を勝ち抜き、ボーイング提案採用が決定。351機を契約
●わずか1年後の2019年には、デジタル設計を駆使して重要設計審査を通過。審査終了時点で量産型2機で飛行試験も開始済で、設計図から試作機初飛行まで僅か3年で実現し、航空機設計に「革命をもたらした」と話題に。「レッドホーク」の愛称を披露
暗露立ち込める
●2021年、米空軍はT-7が高迎角時にロール軸が不安定になる問題発覚と明らかに
●2022年後半、飛行制御ソフトウェアと射出座席の問題(小柄な女性などへの対応が不十分)発覚
●2024年初、T-7の一部の部品に品質上の問題発覚
以上のような「暗雲立ち込める」以降の状況により、2022年以降、毎年「量産契約時期」と「IOC 初期運用体制確立時期」が1年づつ延期され、記事冒頭でご紹介したように1月15日 発表では、「量産契約時期」は3年遅れの2026年、「IOC 初期運用体制確立時期」は4年遅れの2028年となっています
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T-7 練習機だけでなく、KC-46も民間旅客機も、ボーイング製品は既に各種市場で「疑念の目」を集めており、Dennis Muilenburg 前々CEOの「いけいけ契約獲得戦略」の尻ふきを2020年1月から押し付けられ、2024年8月退任に追い込まれた Dave Calhoun 前 CEO(左の写真)は「ほぼ打つ手なし」状況だったと理解しています。
24年8月 Kelly Ortberg氏が現CEO 就任以降も、大規模な従業員ストライキで経営は厳しさを増し、最新3か月間決算でも 9400億円の赤字と、コロナの影響でどん底だった期間を含めた2020年10月以降で最悪の経営状態となっているようで、本当に危ないボーイング社の現状です。
T-7練習機(T-X 計画)関連の記事
「更にT-7練習機開発は遅れます」→https://holylandtokyo.com/2024/04/04/5706/
「デジタル設計の優等生 T-7が3年遅れ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/24/4539/
「1年遅れ:女性意識の射出座席が」→https://holylandtokyo.com/2022/12/19/4065/
「デ設計で審査短縮や新規参入促進」→https://holylandtokyo.com/2022/08/23/3550/
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