若手研究者による「デジタル権威主義」解説

防研のNIDSコメンタリーが部外者の論考掲載
37歳の上智卒&自治体職員後&防大大学院博士が執筆
超苦手な学術論文風ですが・・・

digital authoritarianism2.jpg4月17日付で公開の防衛研究所「NIDSコメンタリー」に、愛知学院大学准教授 大澤傑氏による実質4ページの論考「デジタル技術が促進する新たなたたかい—流動化する国際秩序とデジタル権威主義」が掲載され、デジタル技術が独裁者に乱用される、いわゆるデジタル権威主義の状況や脅威について解説していますのでご紹介します

失礼ながら、論考の前半部分の多くを割いて記載されている、言葉の定義というか、権威主義国家の捉え方等々についての部分は、若手研究者として致し方ないのでしょうが、結果的に一般の読者を遠ざけるような「学術的色付けのためのこねくり回し」となっており、この部分はバッサリ無視させていただいて、まんぐーすが理解できそうな部分だけ、記載事項の並び替えや解釈も交え、適当につまみ食いで取り上げます

大澤准教授の論考によれば
Oosawa2.jpg●米国同時多発テロや世界金融危機、新型コロナの広がりなど、連続する危機との直面で各国の政治体制は動揺し、民主主義国家の体制に対する信頼が低下する一方、(中国やロシアなどの)権威主義はデジタル技術を用いてそれを乗り切った。むしろ権威主義国家では、その危機を梃子として体制を強化する傾向が見られる。かつては民主主義を促進させると考えられたデジタル技術も、今となっては権威主義との相性の良さが浮き彫りとなありつつある

●権威主義の至上命題は体制維持で、その手段として3つの要素「抑圧」、「懐柔」、「正統化」を用いる(抑圧を除けば、民主主義においても一定程度見られる統治手法)

digital authoritarianism3.jpg抑圧→反対派や体制の脅威になる者を排除して体制の安定化を図る「ムチ」。デジタル技術抑圧とは、ネットのシャットダウンや、監視による反対派の補足などが好例

懐柔→親体制派が体制から離反しないよう、また人々が体制を支持するように特権や利益を与える「アメ」。独裁者はアメとムチを利用した統治を行う。デジタル技術による便利で安心安全な社会の構築が一例

正統化→体制の正統性を担保し、人々が自発的に体制を支持するように仕向ける方法。個人崇拝化や業績のアピールなど。デジタル技術懐柔による生活環境の改善だけでなく、体制を賛美する言説の流布や、フェイクニュースやディスインフォメーションを用いた認知の誘導などが該当

●中国の統治手法が一例
digital authoritarianism.jpg人々の様々な特性を指標化した「社会信用スコア」は抑圧のツールにもなるが、行儀が良い人々が様々な特権を得られることから懐柔のツールにもなる一方、それによって構成された便利な社会は体制を支持する人にとっての正統化の手段ともなる。

中国のデジタル権威主義の抑圧的な側面を強調する論調がある一方で、これまで与信を得ることができなかった人々が「社会信用スコア」の導入によって権利を獲得することができたとの指摘もある。

中国では「五毛党」200 万人以上がネット上に共産党政権の正統性を高める書き込みを行っている模様。デジタル技術を利用し、独裁者は権威主義的な統治を効果的に行うことが可能となったといえる。

一方、民主主義国家においても同様にデジタル化によって便利な社会構築が進められたが、それに伴う情報集積はハイブリッド戦での脆弱性につながった

●ただ、デジタル権威主義の未来は明るくない
digital authoritarianism4.jpgロシア→政治体制の個人化を進め、高い抑圧で難局突破を狙うが、それを維持できるかは軍や警察にいかに懐柔できるかに依存し、先行きは不透明

中国→少子高齢化や新型コロナ蔓延などに伴う経済停滞で、懐柔、正統性がともに低下しつつある。戦狼外交や野心的対外政策で国民のナショナリズムを喚起して体制を維持しているが、この先は不透明

●そこで中露が陰の「たたかい」ハイブリッド戦に注力
Oosawa.jpg両国はサイバー攻撃や影響力工作や選挙介入を通じ、自国に有利な国際環境を「戦わずして」構築すべく企図

抑圧や懐柔維持が困難になりつつある両国は、「西側諸国による覇権主義的な国際秩序への対抗」という言説で、「民主主義対権威主義」を語り、外部批判で自国の正統性を際立たせる正統化に力を

他方、両国は民主主義的価値の流入や西側諸国の影響力が高まることによって体制が転覆する可能性を恐れている

中国はグレート・ファイアウォールを構築し、ロシアは独立系メディアを締め出している 北朝鮮やクーデタ後のミャンマーでも同様の動きアリ。軍事的コストが低く、正統化を図ることができるハイブリッド戦は有効な選択肢である。
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Oosawa3.jpg防衛研究所の研究者のアピールの場である「NIDSコメンタリー」に、なぜ部外者である大澤傑氏の論考が掲載されたかは「?」ですが、上智大学院から一度は地方自治体に就職した大澤氏が、どのような経緯かは不明ながら防衛大学校総合安全保障研究科博士課程修了して博士(安全保障学)を取得した経緯か、

または大澤氏の研究分野が、防衛研究所の研究者だけではカバーできない重要分野だったため、依頼して論考掲載の運びとなったものと推察いたします

省略した論考前半部分については、ご興味のある方はじっくり原文https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary310.pdfでご確認ください

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