ヨルダン軍が先陣を切った支援物資投下を米軍中心に拡大
ヨルダンの共同調整所で複数国が連携
イスラム食のパック食料を世界中から懸命にかき集め
4月5日付米空軍協会web記事が、米軍と多国籍有志国により実施されているガザ地区への食料等援助物資の空中投下作戦を取り上げ、3月29日に実施された米空軍C-17輸送機によるミッションへの同乗取材の様子や、空輸作戦全体の概要を紹介していますので、取り上げます。
ガザ地区の約100万人と推測される避難民に食料などの支援物資を届けるための物資投下は、2023年11月にヨルダン軍が初めて行い、3月2日から米軍が追随し、有志国も駆けつけて多国籍体制で現在進められており、ヨルダンに設置された共同空輸統制所を司令塔として、現在では数か国のC-130、米空軍C-17、有志国のエアバスA400輸送機で実施されているとのことです。
本来は陸上輸送が中心となればよいのですが、限られた道路とイスラエル軍による国境通過チェックが厳しいことから地上輸送が円滑に進まず、また海上輸送には適した港湾施設がなく、現在JLOTS(Joint Logistics Over the Shore)と呼ばれる簡易港湾桟橋とそれに通じる通路建設計画が練られていますが、運用主体や安全確保を含めた多様な課題に解決のめどが立っていない状況で、航空機からの投下が重要な役割を担っている状況です
4月5日付米空軍協会web記事によれば
●3月29日に2機の米空軍C-17輸送機は、カタールを離陸し、往復6時間を飛行する空中投下任務を実施し、2機合計で80個のパラシュート付きパレットに梱包された計46080個の食料パックMRE(Meal ready to Eat)を投下した。ヨルダンを拠点とするC-130は、搭載物資量はC-17に劣るが、往復2時間の飛行で投下任務が可能
●米軍は主にガザ北部のサッカー場程度の広さの投下場所を割り当てられているが、MQ-9無人偵察機が上空で哨戒して提供するリアルタイム映像で各機に搭乗の情報士官が地上の安全状況等を確認しつつ、事前の気象予報や現場上空で観測する風向風速等を勘案し、上空3000フィートからパレットが投下された(原文記事に映像あり)。80個のうち、26個は陸地に近い海上に直水したが、避難民の安全等を考慮した結果である
●3月2日以降、約50万食の食料パックと15万本の水ボトルが投下されたが、ヨルダンの共同空輸投下調整所は、投下ミッションの数日前までに、投下場所や時間や飛行ルートなどを参加有志国と調整して決定する。29日のC-17投下任務指揮官の少佐は、12種類のチャットや通信アプリを使用して遠隔地に居ながら問題なく調整が実施でき、任務中のC-17機内からでも共同調整所と連携が可能な体制にあると説明している
●空中物資投下任務の資格を持つC-17搭乗員は、操縦者で25%、ロードマスターで50%だが、昨年アジア太平洋地域で初実施された空軍史上最大規模の空輸演習「Mobility Guardian 2023」で大規模な空中投下訓練も行われており、その成果もガザ任務で行かされている
●投下する食料はイスラム食(ハラール)である必要があり、有志国は協力してパック入りイスラム食の在庫を世界中に問い合わせて探している。また投下用のパラシュートも、軍事作戦で使用する落下速度が速いものではなく、地上の安全に配慮して落下速度の遅いものを使用しているが、この確保にも苦労している
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記事現物には、パレット投下を機内から撮影した映像や、地上準備拠点の写真など多数の映像資料が掲載されていますので、ご興味のある方は元記事をご覧ください
今や世界のメディアはイスラエル批判一色ですが、ヨルダンが共同調整所を提供して進められているベルリン空輸以来最大規模の物資空中投下作戦に焦点を当て、概要をご紹介しました
Mobility Guardian 2023関連や兵站重要性記事
「米空軍最大の空輸演習@西太平洋」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/
「太平洋軍司令官候補が兵站の重要性を」→https://holylandtokyo.com/2024/02/14/5540/