2023 年末に関連企業へ人材派遣の情報提供依頼
海兵隊の 1/18 規模で宇宙軍人的戦カモデル追及
単なるモニターや機材トラブル対処ではなく
任務遂行に直結する役割担当を RFI で問いかけ
3月29日付米空軍協会 web 記事が、発足から僅か4年目で、2025 年度予算が満額認められても軍人と文民職員合わせて 15000名規模しかない米宇宙軍が、増え続ける任務要求に対処するため、他軍種で行われている「業務の部外委託」の枠を超え、より任務遂行に直結する役割を民間企業社員に業務委託できないか、RFI情報提供要求を発出して検討している様子を報じています
米国防省や米空軍が反対する中、結局はトランプ大統領の「鶴の一声」で誕生した宇宙軍ですが、フランス軍が追随して宇宙軍を設けたり、ウクライナでの戦いで宇宙センサーや衛星通信の重要性が一段とクローズアップされるにつれ、宇宙軍の存在自体への反対は目立たなくなりましたが、陸海海兵隊の中で最小の海兵隊でさえ 17万人規模の中、軍人9400名と文民4600名の宇宙軍は如何にも小さく、世界に展開する米軍と統合作戦するにも「頭数」不足は否めません
宇宙軍トップ Saltzman 大将は3月27 日講演で
●我々のようにな小規模な軍は、持てる人員をどのように募集・育成・評価・動機付け等するかについて、特に注意を払い慎重に取り組まなければならない。そして小さな戦力の全てをよく掌握し、如何に最大能力を発揮させるかを継続的に検討し続ける必要がある
●どの部署の勤務者に長期勤務で経験を積ませる必要があるか? 軍人や文民職員に経験を積ませて実施させるべきポストはどこか? 部外の業務請負業者に委託して軍人や文民職員の負担を軽減可能な職務があるか? 宇宙軍所属戦力と部外委託人材の適切な混合比はどのあたりか・・・等々を よく見極める必要がある
●宇宙軍は、他軍種とは異なる独自の人的戦力構成モデルを編み出す必要があり、我々は検討に着手している。そこで宇宙軍独自の考え方や手法で、軍人と文民職員と部外委託人材の最適な組み合わせを見出したいと考えており、その一環として2023年末に関連企業に宇宙軍の素案を示し、業務委託が可能か、疑問点や問題点があるかを尋ねるRFI情報提供要望を発出している
Saltzman宇宙軍大将のニーズは理解できても、米宇宙軍の考えている事は他軍種の部会委託の範疇を超え、日々の作戦任務遂行や緊要な作戦任務の実行までを委託する可能性もはらんでおり、RFIには、24時間体制交代勤務の現場のクルーに入り、宇宙監視(Space Domain Awareness & Intelligence)、ミサイル警戒監視(Missile Warning/Defense)、衛星通信運用(MILSATCOM)、軌道上作戦運用(Orbital Warfare)等の業務を請負可能かを問う質問も含まれているようです
つまり従来の訓練支援や衛星関連の維持サポート業務以外に、例えば敵ミサイル警戒警報任務においてリアルタイムで衛星運用を担ったり、同盟国宇宙アセットまで操作する業務を含む「業務委託」を念頭に置き、関連企業に対応可能性や問題点を問いかけているようです
もちろん懸念事項は多く、宇宙軍の指揮命令系統と部外委託業者との関係はどのように整理するのか? 部外委託業者はどこまで責任を負えるのか? 文書上の業務委託契約で様々な状況があり得る軍事作戦の役割を担えるのか?・・・等々の疑問が関連企業経営層から既に提起されているようです
宇宙軍は、長らく完成発表が待ち望まれている民間企業活用の指針となる「commercial strategy」を間もなく公開する予定であり、上記の疑問に宇宙軍の考え方が示されると期待されています
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宇宙軍の任務についてよく把握しておらず、具体的にどのような任務を「部外委託」の対象として検討しているのかイメージがぼんやりしていますが、急速な宇宙利用の拡大や衛星打ち上げ会社の台頭を考えれば、「部外委託」の拡大はニーズに対応するために避けられないのでしょう。サイバー戦分野も似ているような気もします
宇宙分野の民間活力利用は、米宇宙軍や国防省の前線勤務者からの強い要望でもあり、今後の進展を関心を持って見守りたいと思います
宇宙軍と企業連携
「衛星への燃料補給で2企業連携」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/5554/
「正規兵のパートタイム勤務許可」→https://holylandtokyo.com/2024/01/30/5479/
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「民間衛星守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/