「Masaoさん」による極超音速兵器探知センサー検討
CSIS研究員が12月18日発表の同兵器対処宇宙センサー検討
極超音速物体の表面が高温の空気流と反応し放出される「イオン、ガス、粒子、その他の化学副産物の航跡」を検出する高周波電磁波センサーや紫外線センサー
→https://www.airandspaceforces.com/hypersonic-missiles-tracking-space-sensor/
レポート現物→https://www.csis.org/analysis/getting-track
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終末の大幅減速でPAC-3やSM-6で迎撃可能性大
同兵器の迎撃回避機動は大減速と射程減を伴う
技術未成熟&開発製造高価で費用対効果を要再考
12月8日付Defense-Newsが、極超音速兵器に関するMITとスタンフォード大学研究者2名の意見投稿を掲載し、同兵器装備化のための開発や同兵器迎撃システム開発に多額の経費が投入され、今後も更なる投資が予期されているが、シミュレーション分析では同兵器終末段階の大幅減速でPAC-3やSM-3で迎撃可能性が高く、迎撃を難しくする同兵器の機動性も速度や射程の大きな代償を伴うものであると、世間一般の「過剰評価」を戒める投稿内容を紹介しています
更に2名の投稿者は、同兵器の飛翔速度維持し射程距離を延ばすためのスクラムジェット技術には未成熟部分が多く、同推進装置に必要なエンジンと燃料は同兵器全体を大型にして重量を増やし、発射時のブースターを更に大型化する必要があるなど、兵器全体の信頼性確保を困難にする要素にあふれており、また更なる高速化は兵器の耐熱性向上の課題も抱えることになることから開発費高騰も予期され、同兵器関連の費用対効果を再検討する必要があると主張しています
寄稿者の一人であるMITのDavid Wright客員研究員(物理学博士)による意見投稿は、5月末にもDefense-Newsに掲載され末尾の記事でご紹介していますが、今回はスタンフォード大学のCameron Tracy研究員(材料工学博士)も加わって、シミュレーション試験や各種分析を加え、巨額投資の費用対効果を疑問視し、MaRVs弾道ミサイルが多くのシナリオ下で費用対効果で上回ると訴えています
8日付Defense-News掲載の寄稿の概要
●音速の 5 倍以上で大気中を滑空する極超音速兵器開発推進の主な動機は、相手のミサイル防衛装備システムへの対応である。国防省高官の中には「南シナ海で活動する米海軍艦艇は中国の同兵器に対し無防備に等しい」と警鐘を鳴らしている一方で、3月には国防省が「最新装備のイージス艦は同兵器に一定程度対処可能だ」とも発言している。我々は、何が真実で現実なのか、何が可能で不可能なのか理解する必要がある
●例えば我々の最近の分析によれば、一般に流布する情報とは異なり、同兵器が飛翔途中でMach 10-12に加速しても、最終段階で地上目標に大気中をダイブする際の空気との摩擦で大幅に減速し、最新の米軍PAC-3やSM-3で十分に迎撃可能な状態になる。この点はウクライナに提供されたPAC-3が、露製の極超音速兵器Kinzhalの迎撃に多数成功している結果からも証明されている。
●南シナ海上の米海軍艦艇も、最新のイージスシステムを装備していればウクライナ軍と同様の発見・追尾・迎撃対処が可能であり、米ミサイル防衛庁が公開している艦艇MDシステム解説アニメ映像(https://www.dvidshub.net/video/801628/mda-hypersonic-concept)でも、SM-6で迎撃可能なことを説明している
●同兵器の迎撃を困難にするためには、更に同兵器の飛翔速度を上げる必要があるが、これ以上の飛翔速度アップは同兵器の大気との摩擦熱を増大させることになり、同兵器製造上の大きなネックとなる可能性が高い
●また同兵器は、飛翔途中に大気中で柔軟に飛翔コースを変更可能で、敵の迎撃を困難にすると吹聴されているが、我々の分析では、仮にマック10の同兵器が30度進路を変更するだけで、速度がマック6まで大気摩擦で減速し、射程距離も4割以上ダウンすることが計算で示されている。つまり、軌道上の進路変更は、迎撃側に有利に働く可能性が高い
●最終段階での同兵器の飛翔速度を確保するため、同兵器にスクラムジェットを搭載したタイプの開発も進められているが、スクラムジェットは未成熟な技術である。また、同兵器の弾頭部に付加するスクラムジェット(エンジンと燃料タンクで構成)は兵器重量を増やし構造を複雑化させ、また発射時にスクラムジェット点火に必要な初速を稼ぐブースター部の大型化も必要なことから、同兵器全体の信頼性リスクも増え、開発費用も含め高リスクな開発案件となる
●極超音速兵器と弾道ミサイルを比較すると、弾道ミサイルは極超音速兵器と同等かより早く発射準備が可能で、弾頭に終末段階で機動可能なMaRVs(maneuverable reentry vehicles)を用いれば、大気圏突入後に数百キロ単位の目標修正も可能で、極超音速兵器と同程度の誘導精度も確保できる
●我々は、多くのシナリオにおいて、また多くの評価側面で、極超音速兵器よりMaRVs弾道ミサイルが優れていると評価している。最近の米議会Budget Officeの分析でも、MaRVs弾道ミサイルは1/3の予算で極超音速兵器の効果を確保できるとの結果が示されている
●極超音速兵器を巡り、中露等との軍拡競争の緊張が高まったり、同兵器開発や迎撃システム開発予算が膨らむ傾向にあるが、一般に吹聴されているような性能・能力・効果を同兵器がもたらさず、国家安全保障や国益確保につながらないと我々は考える。米国は同兵器への多額の投資の費用対効果について、事実と現実に目を向け、再考すべきである
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今年3月15日に、米ミサイル防衛庁MDAのJon Hill長官が講演で、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル(GPI:Glide Phase Interceptor)開発のため、日米共同開発に成功した弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」の経験を活かし、日本との共同開発が可能かどうか日本側と協議を開始していると語っており、その後どうなったか把握していませんが、とっても心配です
グローバルホークRQ-4やオスプレイ、そして日本の戦闘機族の下支えもあって引き受けたF-35も含め、日米同盟の負の側面となっている装備に続くことが無いよう、中露の脅威の動向も冷徹ににらみつつ、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル開発には対応して頂きたいと思います
同筆者による5月末の寄稿紹介記事
「被撃墜事例相次ぐ同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
米軍の極超音速兵器開発
「陸軍の最終試験&配備は来年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/
迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/