米空軍が新兵募集年齢上限を42歳に引き上げ

募集難受けこれまでの39歳から3歳引き上げ
米海軍の上限41歳を超え、空軍が最高齢許容へ

age limit2.jpg米空軍&宇宙軍の募集サービス局が、10月26日から新兵受け入れの年齢上限を従来の39歳から42歳に引き上げると発表し、同サービス局報道官が「42歳上限は米空軍と宇宙軍の正規兵(士官と下士官両方)募集に対して適用される」、「この変更は、より多くの米国人に米軍での勤務機会を提供するとの米国防省の大きな方針と合致するものである」と説明しました

また同報道官は「この募集年齢上限引き上げにより、現在の規定上の勤務年齢上限である62歳まで、20年間の勤務機会を提供するものである」とも表現しています。
なお、昨年11月には米海軍も募集年齢上限を引き上げ、39歳から41歳に引き上げていますが、米空軍の今回の引き上げは海軍の「41歳」を上回り「米軍内で最高」となりました

age limit5.jpg本件を報じる10月26日付Military.com記事は、米空軍の2023年度(2022年10月~23年9月まで)の新兵採用結果が公式に発表され、1999年以来24年ぶりに募集目標数を達成できず、未達成数は11%(目標26877名に対し、採用24100名で、不足2777名)にも上る深刻な結果となったことを受けた措置だろうと解説しています

2023年度の新兵募集の厳しさは米空軍だけでなく、米軍全体で非常に厳しい結果となっており、組織の規模から募集人数目標が小さい海兵隊と宇宙軍を除き、陸海空軍の全てが採用目標数を達成できませんでした

age limit6.jpg厳しい新兵募集の背景には、コロナ後の企業活動や社会活動活発化による社会全体での新人採用急増による人の奪い合い、更に、肥満、麻薬、身体&心理健康問題で対象人口の23%しか採用基準を満たせず、対象人口の1割未満しか米軍入隊に関心を持っていない対人接触をあまり好まない「Z世代」へのアピール不足等々が原因だと考えられています。

なお最近の調査では、米軍5軍を言える割合が5割以下との調査結果も出ており、かつて徴兵制を経験した世代が家族や社会に存在して軍経験の話を聞く機会が比較的得られた時代が終わり、軍の存在を身近に感じる機会が減少したことから生じる「忍び寄る社会と軍の遊離」がより深刻な課題だと言われています

age limit4.jpgただし、少なくとも米空軍に関しては、10月から始まった「2024年度」の新兵募集は回復傾向にあり、9月にKendall空軍長官も楽観的な見通しを示していましたが、26日に同報道官も「cautiously optimistic」との表現を用いつつ、「募集は回復傾向を見せており、空軍の目標レベルには達していないが、継続して応募が上昇傾向を示している」と語っています。

この2024年度の回復の背景には、「コロナ後」の社会全体での新規採用急増の落ち着きの他、米空軍が昨年から実施した募集条件の様々な緩和や優遇提供(肥満率や体脂肪率不合格者への一時的猶予、手や首への入れ墨許容範囲拡大、入隊学力試験への電卓持ち込み許容、マリファナ検査陽性者への再受験機会提供、合法移民への帰化手続き迅速化優遇提供、大学学費ローン返済支援)や、募集担当者への成果ボーナスや表彰制度充実などがあると言われています
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age limit Japan.jpg米空軍が昨年から実施している募集条件の様々な緩和や優遇提供が空軍に与える「負の影響」については様々な意見があり、米議会にも共和党を中心に根強い反対派が存在しますが、他に代替案が見つからず米軍全体で同様の方向に進んでいます

ちなみに我が自衛隊では、2018年に従来の「27歳未満」から「33歳未満」に引き上げています(令和5年夏発表の防衛白書P440より)。実際に米軍がどのような職種に30代後半や40代の人間を採用するのか興味深いところですが、サイバーや研究開発等の「特定分野の専門家の中途採用」が狙いではないかと推測します

age limit3.jpgなお米軍では、各階級に昇任できる人数上限が予算で定められ、各階級毎の上限年齢で上の階級に昇任できなければ継続勤務の道は閉ざされ退職しなければならず、上記の「勤務年齢上限である62歳」は軍人最高位の大将に昇任できたものの中でも一部にしか適用されないことにご留意ください

 

新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

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