米国が新型の重力投下核爆弾B61-13開発へ

政府や議会等の様々な勢力が絡む駆け引きの中で
維持費かさむ旧式B83やB61-7破棄を進めたい国防省
中露の拡大増強を受け、核戦力強化狙う共和党など

b61-13 5.jpg10月27日、米国防省が重量投下型核爆弾B-61シリーズの新型爆弾として、「B61-13」の開発検討を開始すると発表しました。

核兵器の問題は、バイデン政権が作成した新たな方針「2022 Nuclear Posture Review」が示すように、それ以前のテロ組織やならず者国家(北朝鮮やイラン)等への核拡散防止重視から、中国やロシアの核戦力大増強や核軍縮&監視条約(INF全廃条約やオープンスカイズ条約)無効化の中での対応に焦点が変化し、

B61-13.jpg同時に、サイバーや宇宙ドメインと言った国家存続に直結するリスク分野や関連兵器が登場したことで、核兵器の位置づけや抑止の在り方の再整理が求められて久しい状態にありますが、核兵器関連施設の老朽化による核兵器維持コストが増大する時期を迎え、政策担当者には頭の痛い問題となっています

米国防省は厳しい予算の中、何とか効率的に従来核戦力を更新&維持したいと考えていますが、現有装備老朽化更新に伴う核兵器運搬手段開発(B-21ステルス爆撃機やコロンビア級戦略原潜開発)や新規ICBM開発(ミニットマンⅢ後継のGround-Based Strategic Deterrent開発)に加え、廃止も含めた非常に多様な意見が存在する重量投下型核爆弾の維持など、大きな投資を要するプロジェクトが同時に発生する難しいタイミングにあります

B61-13 3.jpg政治面では、オバマ前大統領に代表される米民主党は核軍縮を目指し、トランプ前大統領が分かり易い例の共和党には「中露に後れを取るな」の姿勢で核戦力の根本的見直し増強を主張する勢力が多数おり、米国防省は難しいかじ取りを迫られており、そんな中での「B61-13」爆弾の開発検討開始の決定について、知識不十分ながら27日付Defense-News記事から概要の概要をご紹介します

10月27日付Defense-News記事によれば
●米軍の重量投下型核爆弾の保有状況(総数4-500発)
・国防省が早期退役狙う維持費がかさむ老朽爆弾
–B83-1 →1200キロトン(1.2メガトン=広島型の威力80倍)
–B61-7 →360キロトン
・最近導入開始の核爆弾
-B61-12 →20~50キロトン

●開発検討開始の新爆弾「B61-13」
–B61-13 →B61-7と同等の威力(360キロトンレベル)
・・誘導能力付与のため尾部に誘導翼キット装着
・・製造弾数は「a few dozen」:B61-12製造計画数を削減した分だけ、B61-13を製造し、総量を増やさない
・・開発中B-21爆撃機に搭載予定、F-35に搭載予定なし

●「B61-13」開発検討開始の背景
(FASの核兵器専門家Hans Kristensen氏の見方)
Kristensen.jpg・大型の核爆弾B81-1はオバマ政権時に廃止の方向となったが、トランプ政権が維持に方向転換。その後バイデン政権は再びB81-1廃止の検討中
・国防省は、維持費がかさむ40年前製造のB81-1を、厳しい予算状況から同じく老朽化進むB61-7と共に早期に破棄したいが、単純な破棄では上院で多数を占める共和党核軍拡派を説得できないため、「B61-13」開発検討開始を持ち出した

・「B61-13」は400キロトン程度で、1200キロトンのB83には及ばないが、誘導精度を高める「tail kit」を付加することで攻撃効果を維持
・共和党の共和党核軍拡派は「B61-13」開発検討開始を、「非常にささやかな前進だが、正しい方向ではある」と評価している
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B61-13 4.jpg非常に政治的な匂いの漂う「B61-13」開発検討開始だと考えて頂ければよいと思います

本来であれば、弾種別の数量や維持費や開発費等の見積もり状況もお伝えできれば良いと思いますが、そこまでの気力なく、今日は記事内容のご紹介までとさせていただきます

米軍の重力投下核爆弾関連
「独が戦術核任務にF-35導入決定」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/
「空軍は海軍戦術核の補完不要」→https://holylandtokyo.com/2020/12/17/345/
「F-35がB61-12搭載試験終了」→https://holylandtokyo.com/2020/12/08/338/
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
核兵器の経費関連記事
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1

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