60歳B-52のエンジン換装に並行しデジタル計器盤へ

3種類の試作デジタル計器盤を比較テスト中
エンジン&レーダー&通信ナビ換装に併せて検討
大規模改修を76機全てに対し20230年までに

B-52 digital gauges2.jpg10月10日付米空軍協会web記事が、平均機体年齢61歳となるB-52H爆撃機のエンジン換装を中心とした大規模近代化改修(B-52J、更にB-52Kへの改修改名)について取り上げ、主要な改修であるエンジンとレーダーと通信&ナビ装備の更新の陰に隠れて目立たない、デジタル計器盤の導入に先立つ試作品3種類の視認性チェックが行われている様子を紹介しています。

過去数年間にわたる激論を経て、2024年度予算で実施がようやく決断されたB-52H爆撃機76機の大規模近代化改修は、現在のT-33エンジンを、民航機用のロールスロイス製BR725エンジンをベースにしたF130エンジンに換装し、機体寿命のある2050年までオーバーホール修理不要かつ燃費3割アップをめざす改修を中心としたもので、

B-52 CERP3.jpgその他に、部品メーカー撤退で2030年には修理不能になるAPG-166レーダーを、FA-18搭載レーダーAPG-79派生型AESAレーダーに換装し、探知追尾、地上地図作成、電子戦能力に加え、維持整備負担を大幅に改善する計画を含んでいます。更に通信や航法器材の更新に加え、アナログ操縦席をデジタル表示に一変する「グラスコックピット化」も組み込まれた、総額約4500億円のプロジェクトとなっています

そんな中の試作デジタル計器盤のチェックを同記事は
●B-52の操縦席計器盤は、人間が使いやすい機材システムを追求する「human systems integration」の発想が全くなかった1940年代に設計されたもので、狭いコックピット内に、どのように計器類を詰め込むかを中心に設計されたもので、例えば8台のエンジンそれぞれの温度・回転数・油圧・燃料使用量等を表示する計器が30個以上並び、機長と副操縦種の席で計器配置が異なるなど、厄介な代物である

B-52 cockpit.jpg●デジタル計器盤の3種類の試作品が加州エドワーズ空軍基地のテストパイロットや機上エンジニアに提供され、より容易に効率的に機体状況を把握し、より任務遂行に頭脳を使えるようにするには、どの試作品のどの部分が最適か、また好ましくない表示手法が使われていないか等を評価している

●夜間の着陸や厳しい脅威環境での飛行時には、計器類を瞬時にクロスチェックして機体状況を把握する必要があるが、この計器盤デザインや表示要領設定により、読み取り時間を0.25~0.5秒短縮することの積み重ねが、任務全体に大きな影響を与えることをテストパイロットたちは身にしみて感じており、評価にも力が入っている

B-52 digital gauges.jpg●「グラスコックピット化」により、搭乗員の判断を助ける例えば理想的な数値を現状数値に重ねて追加表示したり、表示の色を変えて視認性をよくする効果が得られるが、一方でシステムが推奨する数値を鵜吞みにして過度に依存し、誤った計器示唆に従ってしまう「自動化バイアスautomation bias」や、様々なアラーム表示に慣れて真の危険察知が遅れる「アラーム疲れalarm fatigue」とのデジタル化特有の問題もあり、評価チームは細心の注意を払っている

●試作品評価チームはこれらの課題に関し、軍用エンジンは自動化に依存することが極めて少なく、民航機が時に利用する「自動スロットル」を導入していない点や、既に商用エンジンに組み込まれていたいくつかの表示アルゴリズムを、軍用機には不要だと削除したこと等、「自動化バイアス」や「アラーム疲れ」への対応に抜かりが無いことを強調している
B-52 CERP.jpg●またエンジン製造企業や機体改修担当のボーイング技術者と緊密に連携を図り、様々な新規搭載システムの状況把握と操縦上に必要な表示の在り方を日々議論しながら、3つの試作品の良い点を抽出して最善の操縦席をレイアウトしたいと評価チームは意気込んでい
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ウクライナや台湾海峡だけでなく、地中海東岸のイスラエルにも火の手が上がる厳しい国際情勢となっていますが、そんな中でも、老朽化機体の若返りに地道な努力を続ける現場の様子を取り上げることで、「元気の源」にしていただきたいと思い取り上げました

B-52.jpgそれにしても・・・、あれだけ周到に準備された大規模かつ多様な作戦で構成されたハマスによる奇襲攻撃が、こともあろうに「ヨムキプール」に行われるとは・・・。

「イスラエル情報機関は何をしていた?」、「ハマスは奇襲作戦の落としどころを考えているのか?」、「アブラハム合意を発端とするイスラエルと湾岸アラブ諸国との雪解けの流れはどうなるの?」等々、次から次へと素朴な疑問が湧いてきて、頭がくらくらしております

B-52関連の記事
「インドネシアにも2機展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/23/4785/
「極超音速兵器ARRW導入を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「B-21導入による米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/
「重力投下核爆弾の任務除外」→https://holylandtokyo.com/2020/01/29/877/

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