2020年の初飛行で墜落の「5GAT」を国防省と陸軍が再開
より高い要求の米空軍も支援し、停滞気味「NGAT」に活用か
9月7日付米空軍協会web記事が、米空軍と米陸軍がそれぞれ異なる要求性能を持ち、3~5年前から開発に着手したものの、事故や(恐らく)コンセプト&技術未成熟や(恐らく)予算制約などで開発が中断や停滞している「次世代無人標的機:Aerial Target」開発に関し、米国防省と陸軍が8月4日に民間企業と開発契約を結んで再スタートを切ったと報じ、空軍も協力していると紹介しています
経緯を振り返ると、まず米陸軍が「5GAT:5th Generation Aerial Target」プロジェクトを2017年に開始して「Sierra Technical Services社」と契約し、2020年には初飛行を迎えましたが同飛行での墜落事故で計画がとん挫し、2022年4月に企業募集から仕切り直しましたが、今年8月に再び「Sierra・・」と「Advanced Technology International Inc.」と契約発表するまで大きな動きはありませんでした
8月の再契約に際し、陸軍と共にプロジェクトを推進する国防省は、「(2020年に初飛行で墜落した)当時の5GAT機体は、全体設計や機器の組み合わせは今振り返っても良くできており、今回の契約で機体の能力や価格妥当性が確認できれば、製造契約に進む方向だ」と明らかにしています
一方で米空軍は、中国のJ-20ステルス戦闘攻撃機やロシアのSu-57ステルス戦闘機を模擬する狙いで、国防省と陸軍が取り組む「5GAT」よりも高い要求性能を追求する「NGAT:Next Generation Aerial Target」計画を2021年に開始して企業にアイディアを募り、翌2022年には超音速飛行が可能な無人敵機の運用と整備までを委託可能な企業がないかを問いかけていたところです
しかしその後は空軍NGATも動きが無く、2024年度予算案には具体的なNGAT予算は見当たらず、担当開発部署も「NGATは依然として調達前段階にある」と述べるにとどまっています。ただ「技術的リスクを見極め、搭載装備の適応性を見極める設計分析は継続されており、電子戦装備の適応などが検討されている」、「これら検討結果は、NGATコンセプト固めや次の段階の詳細設計やその後の試験内容にも使用される予定だ」と関連文書に記載されているようです
ただ5GAT関連で国防省報道官は、「5GAT計画は空軍のNGAT計画の道しるべの役割を果たすだろうし、5GAT計画は米空軍と連携を図りつつ進めている」と表現する一方で、「5GATは、NGAT計画のニーズを満たし、とって代わるようなものではない」と明確に述べており、J-20やSu-57を模擬する高性能な無人敵機を目指すNGATと、5GATには相当な性能差が存在する模様です
話は戻って、8月に国防省と陸軍が契約した5GAT契約ですが、契約企業が「本プロジェクトの成果(であるプロトタイプ)は、必要な装備搭載など生産段階に移行するため、各個別の軍種に直接移管される(may be transitioned directly to the individual service branches)」と声明を出しており、複数軍種への提供が示唆されていますので、空軍も提供先に含まれているのでしょう
また8月の国防省&陸軍の契約対象となった2社以外に、米空軍研究所AFRLが「Blue Force Technologies社」と「仮設敵としての使用を想定した高性能ドローン」製造契約を2022年に結んで「Fury計画」を本格化していたところ、9月7日にソフト会社「Anduril」が「Blue社」を買収して同計画に大きな投資を行うと発表するなど、「ドローンAerial Target」分野は、急速な盛り上がりを見せています
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中国のJ-20やロシアのSu-57を模した高性能無人ドローンと、米空軍のF-35やNGADが空中戦訓練を行うつもりなのでしょうか?
意味が全くないとは言いませんが、そこまで技術が成熟するなら、有人第5世代戦闘機や次世代戦闘機への投資を抑えて、「NGAT」をそのまま米軍の戦闘機や攻撃機として使用した方が早いような気がしますが・・・
仮設敵機部隊の話題
「米海軍が空軍F-16を仮設敵機に」→https://holylandtokyo.com/2021/06/17/1873/
「米空軍が19年ぶりに空対空戦闘競技会」→https://holylandtokyo.com/2023/06/12/4735/