ベルギーの欧州戦闘機開発関与希望がさざ波を

ベルギーが仏独スペインのFCASへオブザーバ参加希望か
FCAS主要企業の賛否が分かれる中
ニッチ分野への自国軍需産業関与狙いか

Dedonder.jpg6月16日付Defense-Newsは、F-35のFMS購入国であるベルギー国防相が最近数か月間に繰り返し、欧州で進んでいる2つの次世代戦闘機開発プロジェクトのどちらにどの程度関与するのかを明確にすべきだと同国政府に要望しているが、実質的には「仏独スペイン」チームが進めるFCAS計画への「オブザーバー」参加を求め、同チーム国に打診していると報じています。

この報道を理解するため、2018年頃からスタートしている2つの次世代戦闘機開発プロジェクトを復習しておくと・・・

「独仏スペイン」のFCAS(Future Combat Air System)
→独Airbus, 仏Dassault, スペインIndra、仏Thales, 仏MBDA and 仏Safranなど
「英伊スウェーデン+日本」のGCAS(Global Combat Air System)
「TEMPEST」計画とも呼ばれる
→英BAE、英ロールスロイス、スウェSaab、日MHI、伊Leonardoなど

FCAS.jpg・・・の2つですが、本日取り上げるベルギーは、日本が昨年参画を表明した「英伊スウェーデン」チームのGCASではなく、「独仏スペイン」チームのFCAS計画の方に「オブザーバ」参加を打診しているとのことです。

ちなみにベルギーは、F-16戦闘機の後継として、2018年に34機のF-35A導入を決定し、2030年までに34機導入完了する契約を結んでおり、最初の4機を2023年に受領することになっています(ただ、コロナの影響で今年は2機のみ受領になりそうとか)

FCAS2.jpg記事は、「オブザーバ参加」の定義は明確になっていないとしつつも、複数のベルギー関係者の話として、ベルギーは当面の間はとりあえず正式共同開発国ではなく「オブザーバ」の位置づけでFCASに関与し、特許や中核的技術部分へのアクセスや製造参画は追求せず、ニッチな装置や部品提供を通じてベルギー軍需産業界のFCASへの関与を追及しているのではないか・・・と伝えています

「独仏スペイン」チームのFCAS計画は現在、独仏スペイン3か国政府と主要関連企業である独Airbus, 仏Dassault, スペインIndraを交えた「シェア争い」が続いており、より多くのシェアを要求して一歩も譲ろうとしない仏Dassaultの強硬な姿勢を受け、「着地点を探して上空で旋回中」との状態継続中とのことですが、FCAS関係企業のベルギーの希望に対する反応は様々です

Trappier.jpg警戒心を強く打ち出しているのは仏Dassault社のCEOであるÉric Trappier氏で、「オブザーバ参加」について排除するとまでは言及していないようですが、F-35購入国が「独仏スペイン」と同等の共同開発国に入ることには強く反対し、

5月の講演で「ベルギーの関心事項を耳にしてはいる」、「F-35購入国がFCAS計画メンバーに入ることは賛成できない。F-35を選択した国の関係者に、なぜ私の工場やオフィスで場所を提供する必要があるのか?」、「ベルギーにも仕事を分けてやれよと言う人がいるが、私は賛成しないし、戦う用意がある。なぜベルギーに仕事を分け与える必要があるのだ」と声を荒げて語ったようです。

(ちなみに独は2023年3月にF-35導入決定しており、NATOの核運搬任務遂行のためとの大義名分はあるものの、仏としては不満があるのかも・・・)

Dedonder2.jpgこの発言に対しベルギーの女性国防相Ludivine Dedonder氏はDefense-Newsに対し、「仏Dassault,社CEOの発言は想定していた内容だが、一つの企業のCEO発言より遥かに重い国益が掛かった問題であり、将来の戦闘機、それがFCASか、GCASかに関わらず、我が国防上の重要プログラムであり、我が国の企業が参画していることが重要なのだ」と政治的な問題であることまで示唆し、強い意志を示しています

FCASに関与している他の企業では、仏Safran社CEOは「英伊スウェ日本のGCAS側で参画されるより、我がFCAS側に関与してくれる方が望ましい」とコメントし、Airbus社報道官はベルギーの参画可能性についてコメントを避けつつ、新たな参加国受け入れの是非については、仏独スペイン3か国の政治的判断にゆだねられる問題だと述べるに止めてぃます
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F-35 Greece4.jpg現代の戦いの中での戦闘機の位置づけや重要性が急降下する中でも、大きな「お金」が動く戦闘機開発や売込みの世界には、相変わらず様々な思惑がうごめいています。

ウクライナ問題で大きな経済的打撃を受けている欧州経済を背景に、主要なF-35調達国である「米英伊」などが維持費高止まりや戦い方の変化を受けてF-35調達数削減に向けた動きを加速する中、34機のF-35導入を決定してしまった小国ベルギーも、様々に国益確保のため動き出したと見るべきでしょう・・・

仏独スペインのFCAS開発
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
英スウェ伊+日本のGCAS開発
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11

最近のF-35購入又は追加購入決定
「小国ルーマニアも」→https://holylandtokyo.com/2023/04/18/4519/ 
「シンガポール追加」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「ドイツも核任務用に」→https://holylandtokyo.com/2023/03/10/4343/
「カナダがやっと決定」→https://holylandtokyo.com/2023/01/12/4134/
「チェコが東欧で2番目」→https://holylandtokyo.com/2022/07/25/3492/
「フィンランドが15番目」→https://holylandtokyo.com/2021/12/14/2520/
「スイスが14番目の購入国に」→https://holylandtokyo.com/2021/07/02/1976/
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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