4月5日にAFRLが過去最大の群れ対処試験を実施&成功
引き続き細部性能は非公開ながら2024年デモ機製造へ
5月19日付米空軍協会web記事は、米空軍研究所AFRLが約4年前から具体的開発に着手している、マイクロ波による電磁パルス効果(EMP効果)で無人機の電子回路を破壊する方式の兵器THOR(Tactical High-power Operational Responder)試験を4月5日に実施し、AFRL史上最大規模の「無人機の群れ」対処に成功したと紹介しています
この「無人機の群れ対処に成功」した試験で、何機で構成された「無人機の群れ」だったのか?、群れの全ての無人機が無効化されたのか?・・・に関する質問にAFRLは回答を避けていますが、
AFRLのTHOR開発責任者は「THORは、その広いビーム範囲、高いピークを持つ出力、目標無人機を補足追尾する早い動作のアンテナを生かし、小型無人機の群れ対処に極めて優れた有効性を示した」とし、また副開発責任者の大尉は「THORは初期型のデモ機だが、THOR開発を通じて獲得できた技術が、世界中で無人機防御態勢強化のために活用されるだろう」との声明を出しています
THOR開発は、2019年の小型無人機1機への対処試験から本格化し、2020年からは海外最前線への試験配備で教訓や運用者の意見を聴取して改良を進め、2021年には成果を見た米陸軍も開発投資に参画、2022年2月にはLeido社と装備名「Mjolnir」で2024年デモ機製造で契約締結して今日に至っています
THORや装備名「Mjolnir」の具体的な「有効射程距離」や「対処可能無人機の規模や機数」は不明で、都市部で使用した場合の「副次的被害の恐れ」についても情報が全くありませんが、機関砲やミサイルによる迎撃より単位当たりの対処コストが安価で、電磁波による「光速」対処が可能な点で優れた可能性を秘めた防御兵器ですので期待したいと思います。
以下では、関連過去記事の要旨と関連映像を過去記事からピックアップ紹介します
【2021年7月の記事】
●THORは、マイクロ波電磁パルス効果(EMP効果)で機体の電子回路を破壊する兵器で、細部性能は不明ながら、AFRL2021年公開映像のナレーションでは「光速」かつ「long range」で小型無人機の電子回路を静かに破壊でき、数百の小型無人機を同時無効化も可能と説明
●長さ6mコンテナ上にパラボラアンテナを取り付けた形状の装置。C-130輸送機で空輸可能で、2名が3時間で現場設置可能。ニューメキシコ州のKirtland空軍基地がTHOR開発拠点
●レーザーや妨害電波による小型無人機対処兵器は、同時に1機にしか対処できないが、THORは同時に大量の無人機対処が可能。また、防空ミサイル迎撃は高価だが、THORは電気代だけで安価に同時多数に対処可能
【2022年7月の記事】
●無人機の群れ攻撃からの防御兵器THOR(Tactical High Power Operational Responder)開発に関し、米空軍研究所AFRLは2022年2月にLeidos社と約32億円の契約を結び、2024年初めに装備名「Mjölnir」でプロトタイプ作成することになっている
●THORは2021年から約1年間の前線試験(場所非公開:中東と推定)を経て5月に帰国も、その間、現地で射程範囲拡大に取り組み出力を5割アップさせ、また現場試験運用した空軍Security Forcesから意見聴取しながら操作性の改善に取り組んできた
●AFRL開発責任者Adrian Lucero氏らは、「無人機対処兵器には、ガンやレーザー方式、捕獲網方式などがあるが、高出力マイクロ波はより広範囲の無人機により短時間で対処可能な点で優れている」と6月24日に説明した
●またLucero氏とHeggemeier氏は、前線派遣先での実績から「THORは94%の信頼性を証明した」と説明し、今後は海外派遣先から持ち帰ったTHORを分解して部品の損耗程度等を確認し、「Mjölnir」プロトタイプ開発時の改良に反映すると述べた
米空軍研究所AFRLの解説映像2021年
Leidos社のTHOR解説映像(約30秒)
THOR関連の記事
「装備名Mjölnirで24年にプロトタイプ作成へ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「マイクロ波で小型無人機の群れ無効化狙う」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/