高出力マイクロ波兵器HiJENKSとTHORに進展

HiJENKSは高市議員も言及したCHAMPの発展型
THORは無人機の群れ撃退用で1年の前線テスト終了
エネルギー兵器とご紹介してきた高出力マイクロ波兵器

CHAMP5.jpg7月1日付Defense-Newsは、2種類の重要エネルギー兵器(高出力マイクロ波兵器HPM:high-power microwave)の開発発展状況を6月24日の説明会模様から紹介し、敵電子システム無効化を狙うCHAMPの発展小型化を狙うHiJENKSと、無人機の群れ対処兵器THORの装備名「Mjölnir」を取り上げています

どちらも、高出力マイクロ波を制御して敵基地や兵器、更には無人機の群れに照射し、高出力マイクロ波が敵システム内部の電子回路内部に強い電流を発生させて破壊する原理の兵器ですが、人や建物に対する被害を抑えながら、兵器システムの中心部分を破壊するいかにも近代的な兵器です

高市早苗.jpg日本では、2021年9月の自民党総裁選挙で候補者の高市早苗議員が、「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」、「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する」と、CHAMPをイメージさせる兵器の導入を主張して話題となりました

いずれにしても謎の多い兵器ですが、CHAMPは2009年から検討が始まり、2019年5月に米空軍が射程約1000㎞の空対地ミサイルJASSM-ERに搭載してを20発保有していると発表し、飛翔中に50目標に対し電磁パルス攻撃が可能と明らかにしているようです。THORは、昨年から試作機が「場所非公開」の海外前線に持ち込まれ、実地にテスト&改良が進められていました

CHAMPの発展型HiJENKS開発
HiJENKS.jpg●6月24日、米空軍研究所AFRLの開発チーム長Jeffry Heggemeier氏が記者団に対し、CHAMP(Counter-electronics High-powered Microwave Advanced Missile Project)の成果を基礎とした、米空軍と米海軍が5年計画の共同開発の最終段階として、2か月間の「capstone tests」に加州の海軍China Lake基地で取り組んでいると説明した
●開発しているのは、CHAMPを発展させ、最新技術でより小型化や強靭性を高めたHiJENKS(High-Powered Joint Electromagnetic Non-Kinetic Strike Weapon)で、主にニューメキシコ州Kirtlandのエネルギー兵器研究部で研究を進めてきたものだと説明した

CHAMP6.jpg●Heggemeier氏は、今回の「capstone tests」結果等を踏まえ、具体的にどの航空機にHiJENKSを搭載するかなど細部について、海空軍それぞれで検討していく事になるが、HiJENKSが(CHAMPより)小型化できたことで搭載機種が拡大できるだろうと記者団に語った。
(なお、CHAMP装置を搭載した空対地ミサイルJASSM-ERは、B-2、B-1、B-52H、F-15E、F-16に搭載可能で、F-35への搭載準備も行われている模様)

無人機の群れ対処THORを「Mjölnir」と呼称して
THOR3.JPG●無人機の群れ攻撃から基地を防御する兵器として開発されてきたTHOR(Tactical High Power Operational Responder)について、米空軍研究所は2月にLeidos社と約32億円の契約を結び、2024年初めに「Mjölnir」との装備名のプロトタイプ作成することになっている
●THORは約1年間の前線テスト(場所非公開)を経て5月に帰国したが、その間、開発チームは現地でテストしながら主にTHORの射程範囲拡大に取り組み出力を5割アップさせ、また現場で実運用する空軍Security Forcesからの意見も踏まえ操作性の改善に取り組んできた

●空軍研究所の開発責任者Adrian Lucero氏らは、「無人機対処兵器には、ガンやレーザー方式、捕獲網方式などがあるが、高出力マイクロ波はより広範囲の無人機により短時間で対処可能な点で優れている」と6月24日に説明した
●またLucero氏とHeggemeier氏は、前線派遣先での実績から「THORは94%の信頼性を証明した」と説明し、今後は海外派遣先から持ち帰ったTHORを分解して部品の損耗程度等を確認し、「Mjölnir」としての開発時の改良に反映すると述べた

Leidos社のTHOR解説映像(約30秒)


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HiJENKSもTHORも、具体的な効果のイメージ把握が難しい兵器ですが、特にTHOR(Mjölnir)は友軍への副次的被害の恐れや射程距離が気になりますし、HiJENKSについては開発者が強調する「小型化」の効果がどの程度で、MQ-9など無人機への搭載が可能になるのか気になります

THOR4.jpg秘匿度の高い装備品だと思いますが、高市議員が政策オプションとして公の場で言及したぐらいのCHAMPですから、空対地ミサイルJASSM-ER 搭載型やHiJENKSの米国からの導入可能性もゼロではないと思いますので、チマチマとフォローしておきましょう

CHAMPとTHOR関連の記事
「高市議員が語った電磁波で敵基地無効化兵器CHAMP」→https://holylandtokyo.com/2021/09/13/2225/
「THOR:強力電磁波で大量の小型無人機を同時無効化」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/

無人機対処にレーザーや電磁波
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14

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