次の米空軍トップは現在の副参謀総長か?

現職Brown大将の推薦で空軍内評価も高いが
副参謀総長には現作戦部長で特殊作戦のプロが候補
バイデン大統領が女性大将を押す可能性も

5月17日付Defense-Newsが、複数の現職及び退役空軍高官(匿名)からの情報として、Brown空軍参謀総長が統合参謀本部議長に就任した後の後任空軍人トップに、現在の副参謀総長であるDavid Allvin大将(輸送機パイロット)が就き、その後任に現作戦部長のJim Slife中将が就任する案が米空軍案だが、「多様性」を重んじるバイデン大統領等が米輸送コマンド司令官である女性のJacqueline Van Ovost大将を押す可能性があると報じています

米軍高官人事は現在、一人の上院議員が妊娠中絶希望女性兵士への帰国旅費拠出問題を持ち出して動きがストップしており、債務上限問題に隠れて米軍全体で大問題となっており、今後の動きが全く読めませんが、記事は現在のBrown参謀総長も強く推している「輸送機と特殊作戦ヘリパイロットの空軍ツートップ」の主役Allvin大将の人物像とその頭にある米空軍の将来像(F-35調達大幅削減と先進ドローン調達増など)の一端を紹介しているので取り上げます

空軍参謀総長候補と噂のDavid Allvin副参謀総長
Allvin10.jpg●1986年空軍士官学校卒業後、C-141輸送機パイロットとしてキャリアを開始し、後にテストパイロットとなりC-17輸送機の導入試験に参画。その後テストパイロット経験から宇宙飛行士への道を志すも、時期尚早との周囲の勧めもあり空軍に残り、1999年ACSCを優秀学生で卒業し、隣接する上級エアパワー研究所で航空戦力運用分野で修士号
●中佐から大佐にかけ、飛行教育分野や輸送機部隊の指揮官等を歴任し、その間にテストパイロットとして素養もありF-15,やF-16戦闘機を含む12機種以上を操縦し、大将としては異例の4600時間以上の飛行時間を誇る

●2010年9月に准将に就任し、アフガニスタンでの飛行教育担当をNATO職務として遂行し、その後2012-13年の間、空軍輸送コマンド作戦運用センター長として世界中で運行する空軍輸送機や空中給油機の作戦運用や航空機取り回しを仕切る
●以後の(最近)10年間の経歴が、Allvin大将の「完璧なインサイダー:consummate insider」との評価を確立する。つまりこの間、国防省、空軍司令部、米欧州軍、国連(J-5から派遣の米国連大使の上級軍事補佐官)で複数の戦略および計画担当将官の任務を果たして昇進し、空軍の利益をより強力に推進擁護し、複雑な米国政府官僚機能の中でのナビゲーターとして「完璧なインサイダー」の地位を確立した、と関係者は評価している。

●2020年11月に空軍副参謀総長に就任し、主に予算編成や新事業推進管理に中心的役割を果たしているが、「完璧なインサイダー」としての実力を遺憾なく発揮し、「ワシントン流のノウハウを備えた教授的なリーダー」として、更に「人とは異なる大きいビジョン」を持ちつつ、熱心に勉強し、自制心を持ち、他者に敬意をもって政府内外の見識を集めて議論を進める高い能力を発揮した
●特に副参謀総長として参加した国防省の新規事業計画の評価を行う「Joint Requirements Oversight Council」の指導的メンバーとして、また戦略的計画ペーパーの取りまとめで能力を発揮し、米空軍の優先事項が従来より確実に国防省予算案に組み込まれて「空軍に莫大な勝利をもたらした」と空軍司令部や空軍OBから評価されている

●また、厳しい現実に直面している新兵募集や操縦者・整備員・サイバー専門兵士等の確保についても、彼はその経験から兵士の職域管理に柔軟性を持たせることなど独自のアイディアを持って推進しており、Brown現参謀総長が推進するACE構想に関しても、空軍全体から草の根のアイディアを募って積極的に具現化するなど手腕を発揮しBrown大将も評価している
●空軍予算の拡大獲得等を通じてKendall空軍長官とも緊密な関係を築き、特殊作戦ヘリ操縦者ながら空軍作戦部長に2022年12月から就任(史上初)している行動派の副参謀総長候補Jim Slife中将とも良好で緊密な関係を構築しており、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と早くも予想している。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶりとなる

Allvin11.jpg●現在のBrown参謀総長・Allvin副参謀総長・Slife作戦部長体制は、維持費のかさむF-15やA-10の早期退役を加速し、F-35の調達機数も計画よりも削減し、先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案を練って推進し始めているが、「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制に加え、同じ方向の在韓米軍副司令官Scott Pleus中将を空軍司令部スタッフのまとめ役に配置する人事案も進めてモメンタムの維持を追求している
●Allvin大将の作戦運用面での経験不足を懸念する声もあるが、対中国の専門家でACE構想発案者である太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach大将を「戦闘機族のボス」と言われる空軍戦闘コマンド司令官にする「異例の人事案」も進められており、後任の太平洋空軍司令官にもペンタゴンとのパイプが太くかつ地域専門家の即戦力Schneider中将を推薦しており、大きな問題とはなっていない
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あくまで米空軍内での「皮算用」であり、オースチン国防長官やバイデン大統領が、上記記事のような人事案を認めるのか全く定かではありません。

まんぐーすの個人的感想を申し上げれば、今の時代だからこそ、改革推進派の「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制を実現してほしいですし、10年ぶりの非戦闘機パイロット2トップに大いに期待したいです

米空軍参謀総長候補のAllvin副参謀総長公式経歴
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108725/david-w-allvin/

関連する米空軍人事案
「Brown参謀総長は米軍人トップ候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「ACCトップ候補が極めて異例」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補は元在日米軍司令官」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/

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