異常気象下でハリケーン観測WC-130J部隊の活躍

25年使用のWC-130気象観測機10機で異常気象
予備役のみ20名の搭乗員が米沿岸からグアム島付近まで
膨れ上がる政府機関からの観測要請に

wc-130j hurricane3.jpg5月6日付米空軍協会web記事が、ハリケーン観測を中心とした気象測定を担うミシシッピ州Keesler空軍基地(初耳!)母基地の第403航空団第53気象偵察飛行隊(Weather Reconnaissance Squadron)を取り上げ、異常気象でハリケーンの影響範囲や発生時期が拡大する中、1990年代から実質変化のない編制で増大する任務に立ち向かう同飛行隊の活動を紹介しています

同飛行隊は米空軍所属で米空軍基地運用に必要な気象データ観測を行うほか、米政府機関であるNOAA(米国海洋気象庁)や国立ハリケーンセンターの要請を受け、ハリケーンに突入して様子を観測するほか、ハリケーンの進路や発達予測に資する基礎データ収集のため、米本土沿岸のみならずカリブ海やグアム島付近までの太平洋上の気象観測も担っている部隊で、

wc-130j hurricane.jpg1999年の導入開始当時は最新型だったC-130Jをベースとた、10機のWC-130Jと20名の搭乗員(10名はフルタイム予備役で、他10名はパートタイム予備役)と推測100数十名の整備員(指揮官大佐)で1990年代から任務に当たっていますが、異常気象に伴う観測需要の増加や気象モデルの発達に伴う観測データ種類の増加などで飛行任務が増加し続ける中でも、1996年から変わらぬ機材数と人員で対応しているとのことです

任務の増加傾向を記事からご紹介すると、1990年代はハリケーン観測のために夏を中心に6か月間のみの飛行任務だったようですが、最近は10か月間のハリケーン観測と2か月間の基礎気象データ観測遠方遠征の年中無休体制となっているそうで、特に米本土西海岸に影響を与える太平洋上の基礎気象観測飛行ニーズが2018年以降6倍に拡大し、飛行隊全体の飛行時間が同年以降2割増で、2023年は過去10年で最大となり、2024年も前年を上回るペースとなっているようです

wc-130j hurricane7.jpg同飛行隊整備部隊指揮官(大佐)は、保有10機は、機体維持のため8機を運用可能態勢に維持しつつ、2機を定期整備に回す運用がベースだと説明していますが、既に様々な観測ニーズ全てに対応できない状況が続いており、(現在程度の要請対応レベルを維持するとすれば)最近のペースで任務飛行ニーズが拡大すれば、2年毎に1機保有機数を増加させないと対応できなくなると語っています

記事によれば、同飛行隊の気象観測における貢献度は、ハリケーンの進路予想や警戒地域予想の精度を20%向上させており、暴風雨の警報対象予報地域が1マイル広がれば約1.5億円様々な対処経費が発生する現代社会においては、計り知れない経費節減効果を生んでいる紹介されており、また2016年から始まったグアム島への派遣で得られた、米西海岸での気象現象を72時間早期に察知するための観測飛行により、緊急対応チームや非常用物資の事前派遣や配分が可能となり、600件以上のケースで被害極限に貢献したと評価されているようです

wc-130j hurricane4.jpgなお、米政府機関であるNOAA(米国海洋気象庁)もハリケーン観測機を保有しているようですが、米空軍WC-130Jの存在を前提として、異なる観測データを対象とした観測機器を搭載していることから、米空軍第53気象偵察飛行隊は唯一無二の存在となっている模様です

以上のような異常気象や気象予想モデルの発達に伴う観測ニーズの増大にもかかわらず、米軍の予算不足の影響は同飛行隊にも及んでおり、また他の政府機関にも経費負担をしてもらっていることから、予算要求調整が極めて複雑な手続きや承認決済を必要としており、老朽化しつつあるWC-130J部隊の機体や装備の更新はニーズに追い付いていませ

wc-130j hurricane2.jpg具体的な予算ニーズでは、機体老朽化を受けた母機C-130の後継検討や、高度な観測機器を搭載するために必要な「電力」確保が大きな視点での要検討事項ですが、喫緊のニーズとしては、搭載レーダーデータの国立ハリケーンセンターへのリアルタイム伝送能力付与や高解像度のドップラーレーダ搭載、更に任務により取り換え可能な観測機器搭載ポッドの取得を同飛行隊幹部は上げています

更に言えば、母基地から遠方基地への派遣観測が急増する中、1機あたり搭乗員と整備員35名チームでの出張形態のようですが、予備役兵でありながら出張頻度が激増しており、このあたりの不満や負担に対する給与面や福利厚生面でのケアも緊急の課題だと記事は紹介しています
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wc-130j hurricane5.jpeg日本の気象庁と米国の政府機関(NOAAや国立ハリケーンセンター)との運用要領の違いを把握していませんが、対中国作戦に備え、WC-130Jがグアム島派遣の際は、西太平洋地域の基礎気象データ収集にも活躍していると想像をたくましくしています

作戦運用の基礎の基礎である天象気象の情報共有にも、日米のみならず、地域の同盟国等の連携が求められています

特殊なC-130の話題
「AC-130から105㎜砲取外し検討」→https://holylandtokyo.com/2023/11/10/5219/
「MC-130で飛行中航空機のサイバー対処」→https://holylandtokyo.com/2021/12/23/2548/
「AC-130用のレーザー兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/21/2332/
「MC-130に海面着陸フロートを」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/
「MC-130からミサイル投下発射」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/

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