UH-60 Black Hawk 2000機の後継ヘリFLRAA選定
Bell社の「V-280 Valor」に決定
1980年代から計画と中止を繰り返したヘリ選定の末に
もう一つのヘリFARA機種選定は継続実施中
12月5日、米陸軍が2021年夏から実施してきた将来長距離攻撃ヘリ(FLRAA:Future Long-Range Assault Aircraft)機種選定において、争った2機種「Bell社のV-280 Valor」と「SikorskyとBoeingのDefiant X」から、オスプレイのようなティルローター式のV-280 Valorを選定しました。
FLRAAは、UH-60 Black Hawk約2000機の後継ヘリと見なされており、1対1で後継機が導入されるわけではないようですが、「米陸軍で過去40年間で最大のヘリ調達案件」と言われる大きなプロジェクトで、海外需要も含めると10兆円近くの巨大プロジェクトになる可能性があると言われている選定でした
2021年夏からのFLRAA機種選定だと冒頭で申しましたが、2つの候補機種は2017年と2019年に初飛行を行い、その後米陸軍による段階的な様々な検証やフライト試験を経て、2021年夏からの最終評価段階を迎えており、米陸軍担当の少将は「米陸軍航空部隊の歴史上、最も大規模で複雑な機種選定であった」と結果発表会見で述べています。
そのようなコメントが米陸軍幹部から出るのも当然で、米陸軍は1980年代から新規ヘリ導入プロジェクトにことごとく失敗しており、最近では約9000億円の開発費を投じた「Boeing-Sikorsky RAH-66 Comanche」ヘリ導入を、最終段階の2004年に断念するなど、退役済みヘリ2機種の後継機を決められないまま、現有機種と無人機で代替してきた「黒歴史」を刻んでいるところだからです
今回の選定も、全くタイプが異なる、ティルローター型の「V-280」とステルス形状の従来型ヘリ「Defiant X」が候補機で、目指すところがわかりにくい選定となっており、「米陸軍の対中国等の本格紛争での役割の迷走」と陰口をたたかれる事態となっている選定です
敗れたSikorskyとBoeing側は、米陸軍からの選定結果フィードバックを待って「next steps」を考慮すると意味深な声明を出しており、米陸軍航空関係者は気が気ではないところでしょう。
加えて、FLRAAと同じく2030年部隊配備を目指す将来攻撃偵察ヘリFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft)候補機2機種が2023年末までに初飛行を行い、機種選定の山場を迎える予定となっており、1200機保有のApacheヘリの後継検討も絡んで、米陸軍航空関係者の悩みは尽きないところです
ところで今回FLRAAに選ばれた「V-280」は、
●兵装した12~14名の陸軍や海兵隊兵士を輸送できるティルローター機で、UH-60の約2倍の速度「280」ノットを目指して命名され、テスト飛行では300ノットも記録している
●UH-60の航続距離が320nmであったのに対し、400nmの航続距離を目指している・・・との特徴を持つ機体です
一方の「DefiantX」は、初飛行がBell社製より2年遅れ、その後も開発トラブル続きで素人的には印象は良くありませんでした。最高速度247ノットですが、低高度高速で機動性をアピールしていたところでした
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強固に防御された戦域での戦いを米軍が追求し、米陸軍も、部隊が分散し、機動的に移動して戦う演習に取り組む様子を先日ご紹介しましたが、その構想に「Bell V-280」が合致したのでしょう。でも、米陸軍がどこを目指すのか、対中国でどのような戦い方を追求するのか、未だによくわかりません
順調に機種選定結果が受け入れられ、FARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft)の選定も順調に進むことを祈念申し上げます
UH-60後継検討について
「米陸軍UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「米陸軍ヘリは無人化でなく自動化推進か!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11
「UH-60後継を意識した候補機開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-06-16
対中国を想定した太平洋陸軍の演習
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/