12月2日の「Roll Out」式典を前にNorthrop Grumman社が事前発表
B-21初披露前に頭を整理するためご紹介します
11月29日、B-21爆撃機が初披露される12月2日を前に、Northrop Grumman社(以下NG社)がB-21爆撃機に関する事前情報を「10個の視点」で公表していますので、同日付米空軍協会web解説記事も交えてご紹介いたします。
もちろん、過去7年間の開発製造段階で「秘密のベール」に包まれてきたB-21に関し、驚くような新事実が明らかになったわけではありませんが、B-2爆撃機が初披露されて以来34年ぶりの米軍大型爆撃機のお披露目ですので、その特徴を頭に入れるべく取り上げます
1. Sixth Generation
・「第6世代」との言葉の定義は明確ではないが、NG社は、過去30年間の攻撃機やステルス機技術を投入し、最新ネットワーク技術やオープンアーキテクチャーも導入して、ハイエンド脅威環境で米空軍の任務達成のための緊要な役割を果たすと説明
・ 同時に、あくまでB-21は「family of systems」の一部をなす戦力であり、非公開の他のアセット(有人機や無人機や地上設備や衛星などなど)との連携で任務を果たすとも説明
・ 最近になってKendall空軍長官は、B-21に随伴する自立型無人機の開発を止めたと発言しているが、B-21からのデコイや電子妨害兵器やISR無人機の射出は否定していない
2. Stealth
・ NG社の30年に渡るステルス技術開発(材料および製造技術)の蓄積には、B-2 爆撃機、YF-23 戦闘機プロトタイプ(F-22開発の敗者)、Tacit Blue stealth demonstrator、AGM-137 Tri-Service Standoff Missileの他、非公開の複数の開発案件の経験が含まれている
3. Backbone of the Fleet
・ 新世代の柔軟なデータ融合、センサー技術、兵器搭載能力(核兵器を含む多様なスタンドオフ兵器とスタンドイン兵器の搭載能力)で、最も効率的な航空アセットの一つになる
4. A Digital Bomber
・ 最新のデジタル設計・製造技術を投入し、最新のソフトや先進的な製造技術を最大限に活用することにより、開発設計製造段階での(遅延や費用膨張などの)リスクを局限し、今後の維持整備上の課題にも柔軟に効率的に対応可能
・ また、事前のデジタル試験を経て、初号機が量産型とほぼ同じまで成熟しており、開発から製造までの時間を大幅に短縮
5. Cloud Technology
・ 新たに地上のクラウド空間内に「Digital Twin:実在機体の双子のB-21」を作り、製造試験段階からの各種データや運用データを蓄積し、部隊運用&維持整備段階における最適かつ効率的な機体管理に貢献する
6. Open Architecture
・ 脅威環境の変化に迅速に対処すべく、最新技術を随時迅速に機体に導入するためのオープンアーキテクチャを一層有効活用するため、機体の能力向上は従来機のような「block upgrades」方式では行わず、切れ目なく最新ソフトやハードの導入を行う
7. A National Team
・ 2015年にNG社が主担当企業としてB-21開発契約を米空軍と締結して以来、米空軍や軍需産業界から総勢8000名以上が関わって設計試験製造を進めてきて来たほか、全米40州の400以上のサプライヤーが今後も安定した機体製造と維持整備を支えて行く
8. Sustainment
・ B-21は、設計段階から安定して効率的で持続可能な維持整備体制の確立を優先事項として開発が進められてきており、航空機の要求性能達成と並行して、稼働率の維持など運用継続性と維持整備費用の妥当性も満たすことを重視してきた
9. Global Reach
・ B-21は、米軍爆撃機の柱として国家抑止戦略の中核を支えるための最新の長距離精密攻撃能力を提供するとともに、最近関係者が強調し始めているように、敵陣深いエリアでの「ISR node能力」、「電子戦能力」、「マルチドメインでのネットワーク能力」面でも任務を遂行して国家抑止に貢献することが期待されている
・
10. Raider
・ B-21の愛称「Raider」は、大平洋戦争時に日本への戦略爆撃に初めて成功し、後の戦いを連合軍優位に導いた、Doolittle中佐率いる80名で構成された16機のB-25爆撃機編隊による「Doolittle Raid」の勇敢な精神を引き継ぐべく採用されたものである(日本人にとっては複雑な思いがあるが・・・)
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12月2日(金)の「Roll Out」式で、新たな情報や映像画像が発表されれば追記いたします(元気があれば)。
気になるのは、機種選定時には「100機程度製造」とされていたものが、最近米空軍関係者が「170機」必要との主張を始めている総調達機数に関する米空軍の考え方や今後の調達ペースです。
更に部隊運用開始見通しについても聞きたいところです。更なる情報を待つことといたしましょう
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「2018年春時点の爆撃機構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2