全世界対象を念頭に作戦遂行に不可欠な重要情報の精度向上へ
有事には地上観測データ入手不能を前提に衛星画像等で
未だ軍事作戦は天候に大きく左右されるのが現実
6月14日付Defense-Newsが、同日講演を行った米空軍省のWinston Beauchamp副CIO(Deputy Chief Information Officer)の発言等から、米空軍が世界各地での軍事活動を念頭に、未だ軍事作戦が大きな影響を受ける気象予報精度を上げるため「AI」を導入しようと取り組む様子を紹介しています
普段、我々民間人が目にする天気予報でも、人工知能は当然活用し始めているのでしょうが、それら民間の一般気象予報は、地上に多数設置された日本のみならず世界各地の観測点情報や、船舶や航空機からの情報、観測気球などによって収集された多様な情報・データを集約しておこなわれます。
一方で有事の軍事作戦の場合、作戦場所がどこになるか予想は困難であり、地域の特性を人がすべて把握しておくことは容易ではなく、また普段は問題なく入手可能な地上観測点のデータ等が敵対国から提供されない、又は捏造される可能性も大と考えられるため、軍事作戦用の天候予想は重要かつ難しい課題です
また、いくら精密誘導兵器や各種ミサイルが発達した現代においても、まだまだ気象が軍事作戦に与える影響は大きく、異常気象や激しい気象現象が頻発する近年においては特に、気象予報の重要性は変わらないとBeauchamp副CIOや空軍は訴えています
Beauchamp副CIOは空軍の取り組みについて
●AIを活用することで、地上観測点のデータなしで気象予想モデルの精度を上げ、収集可能なデータの範囲で将来予想・推測能力を上げて、世界中の予想精度向上に取り組んできた
●我々が作戦遂行する際は、民間の気象予報士が利用できる全てのデータを利用できる環境に無いにもかかわらず、気象条件の重要性が(軍事技術の発展により)意識されにくくなっている。忘れてはならない。軍事作戦立案において、気象条件は甚大な影響を現代においても与えるのだ
●米空軍は2021年にボストンの「Tomorrow.io社」と約24億円の契約を結び、レーダー搭載の気象観測衛星開発や気象インテリジェンス強化に取り組んでいる。また同年、Oak Ridge国立研究所と連携してスーパーコンピュータ活用の気象予報システムを立ち上げている。なお同システムをエネルギー省は、「世界最先端の気象予報モデルだ」と評価している
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ロシアによるウクライナ侵略は、極めて「20世紀的な戦いだ」とも評価されていますが、古今東西の戦史がその重要性を指摘してきた「兵站」「通信」などの戦いの基礎となる要素が改めてクローズアップされた戦いだ・・・ともみることができるでしょう
気象情報や気象予報も「戦いの基礎」となる重要要素であり、ハイテク化した戦いにおいても決して無視できないファクターであることを再確認するため、ぼんやりした記事ですがご紹介いたしました
少しは関連のある過去記事
「米国防省が気候変動対処プランCAPを発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/