米国防省が小型無人機対処戦略を発表

国防省のJCO:Joint Counter-sUAS officeが作成
情報収集、防御体制確立、他との協力体制構築の3本柱で

CUAS3.jpg7日、米国防省が小型無人機対処戦略(Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy)を発表し、「体制整備&情報収集分析」、「防御体制確立」、「他との協力体制構築」の3本柱で取り組みを加速すると明らかにしています。担当は国防省のJCO(Joint Counter-sUAS office)で、リーダーを米陸軍のSean A. Gainey少将が務めています

背景には、急速に普及・拡散が進む無人機技術とその脅威に対処するため、各軍種各部隊がバラバラに様々な対処装備を次々と導入して「無駄」や「重複」や「混乱」が生じているとの危機感があり、調達担当次官が無人機対処兵器を数種類に絞り込みたいと昨年秋に発言するまでに至っていた事態があります

CUAS.jpg装備の絞り込みだけでなく、運用ドクトリンや運用や訓練手法なども統合レベルで統一した基準を示し、米軍として一体的な取り組みを推進することも本戦略の重要な狙いとなっています。また指揮統制システムや既存システムとの連携も重要な課題で、報道では、最も進んだTHAAD指揮統制システムとの連接が極めて重要とのGainey少将の発言も紹介されており、広がりの大きな事業であることを伺わせます

更に、無人機対処と言っても海外展開拠点の防御から国内基地の警備まで対処環境は様々で、同盟国と協力した海外敵対勢力の無人機脅威分析から、米連邦航空局と連携した米国内で使用される小型無人機の把握などまで、多様なことを考える必要のある大きな課題で、加えて同戦略は「国内技術開発への投資政策」や「対処装備の海外への売込み」までを視野において記述されており、中身「山盛り」感のあるものとなっています

昨年末の記事で、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争で、前者が攻撃型無人機で後者を圧倒し、ロシア製最新兵器を粉砕して世界の軍事関係者に「ついに現実になったか・・・」との衝撃が走っているとご紹介しましたが、米国防省も遅ればせながら本格的に動き出した形です

CUAS2.jpg1月中に本戦略遂行のための具体的なロードマップ計画が示されるようで、その中に4月にYumaの陸軍試験場で陸空軍が協力して行う「複数の企業提案対処装備の評価実験」も含まれており、既選定済の海兵隊採用車両搭載型「Light-Mobile Air Defense Integrated System」や、Bal Chatri社製の手持ち兵器「DronebusterとSmart Shooter」に続く対処装備の選定が行われるようです

本戦略の背景や概要をご紹介しましたが、以下では戦略の3本柱である「情報収集分析:Ready the force」、「防御体制確立:defend the force」、「他との協力体制構築:build the team」の3本柱(Ready the force, defend the force and build the team)について、つまみ食いでご紹介します

7日付Defense-News記事によれば
●To prepare the force
— 脅威分析のため、現在と将来の脅威情報収集と分析体制を確立し、具体的な情報要求や収集優先順位を設定する
— 無人機対処技術開発のため、科学技術投資先の見極め評価基準を統制し、この活動を米本土内だけでなく、同盟国との間でも行う必要がある
— これらを推進するため情報共有枠組みを構築する必要があり、標準化されたインターフェースや相互運用性のある仕組みが求められる。企業が提案する防御装備の評価や審査に関する評価標準も必要となる

●To defend the force
— 平時から大規模紛争時までをカバーする作戦運用ドクトリンやコンセプト開発が必須で、装備品、訓練、政策、運用管理組織を有機的に束ねる必要がある
— またこのドクトリンやコンセプトは投資選択の基準としても重要で、一連の対処装備をファミリーとして整備していく上での基礎ともなる

●To build a team
— 米国内だけでなく同盟国やパートナー国を含めた作戦運用協力や技術開発協力が重要である。特に最新技術を導入するために、新たなパートナーをひきつけなければならない
— 多様な協力関係を構築するための民間機関との協力合意形成や、法執行機関や展開先ホスト国との協力体制や共通手順の作成が重要となる
— 作戦運用や情報収集面だけでなく、必要な装備品の売却や提供の円滑化迅速化を図る必要もある
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ちなみに本戦略では、「小型無人機」の重量25㎏以下(55ポンド)のものを「小型」と定義しているようです

CUAS4.jpg小型無人機の運用に関しては、米国内でも諸外国でも法体系の整備が「道半ば」「日々変化中」で、米国防省の対応も大変そうです

5日の週には、米連邦航空局FAAが小型ドローンの登録制度を強化(?)し、米軍基地周辺を飛行する小型無人機の識別や対処に有用な情報が得られやすくなるようですが、たとえ悪意のない小型無人機であっても無害であるとは限らず、平時の対応は法執行機関との調整を必要とします

これが海外の展開先ともなれば一層困難です。在基地米軍基地周辺を小型ドローンが飛行していたとして、国土交通省のwebサイト上に識別や対処に必要な情報が公開されているかと言えば心もとない限りでしょうし、迎撃兵器を使用すれば周辺住宅への落下被害の恐れもあり・・・・複雑です

この戦略関連で様々な報道や情報が提供されており、まとまりのないご紹介となりましたが、それだけ差し迫った「Clear and Present Danger」だということです

米国防省の小型無人機対処戦略(1月7日)
Counter-Small Unmanned Aircraft Systems Strategy
→ https://media.defense.gov/2021/Jan/07/2002561080/-1/-1/1/DEPARTMENT-OF-DEFENSE-COUNTER-SMALL-UNMANNED-AIRCRAFT-SYSTEMS-STRATEGY.PDF

世界の軍事関係者に衝撃
「攻撃無人機でアゼルバイジャン圧勝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-21
無人機対処にレーザーや電磁波
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20-1
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24

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