昨年6月から西側が懸念する南シナ海沿岸施設
米豪支援の施設を取り壊した後に中国支援施設を
6月8日に起工式が行われ・・・
6月12日、3年ぶりに開催されたアジア安全保障会議(Shangri-La Dialogue@シンガポール)でカンボジア国防相が、南シナ海沿岸のカンボジア海軍基地内に中国の資金援助で建設が開始された港湾施設を、中国に「exclusive」に使用させることはないと強く否定し、カンボジア国内に外国軍基地が存在することを同国の憲法が認めないと主張しました
昨年6月の記事で取り上げたように、2021年6月頃から西側メディアや研究機関が衛星写真や入手した秘密協定案等を証拠に、カンボジアの「Ream Naval Base」に中国資金で港湾施設建設が計画されており、その準備に同基地内に米豪が2012年建設してカンボジアに提供した施設(海洋監視ボート用の保管&整備施設)を取り壊していると警告を発してきたところです
これに対し、Shangri-La Dialogue 開催直前の6月8日に、中国支援施設の建設起工式典をメディアも招いて大々的に行う「大胆不敵」な行動に出たカンボジア国防相は、12日の会議「Q&Aセッション」で「Ream海軍基地内の施設建設は、カンボジア軍の施設近代化要求に基づき実施を決定したものであり、(中国による)排他的な使用などあり得ない」と述べ、米WP紙等の「中国が排他的に基地の一部を使用する」との報道を「侮辱的な報道だ」と批判しました
西側専門家の視点の一つとして6月12日付Defense-News記事は、米海軍予備役でアジア太平洋軍事専門家のBlake Herzinger氏が「Foreign Policy誌」に寄稿した内容を取り上げ、「6月8日の式典で明らかにされた事実は、この建設案件が僅かな結果しかもたらさないことを示している」、「WP紙が中国に提供される指摘したエリアは、0.3平方㎞の小さな地籍で、カンボジア政府が中国のパワープロジェクションのために使用に同意したと考える理由はほとんど見当たらない」とのコメントを紹介しています
カンボジア国防相はShangri-La講演でこのほかに、国防能力の改善は地域や世界の安全保障環境変化に基づき全ての国が取り組んでいることであり、技術の発達に追随するため国防支出が増加することも予想されることである等と主張を展開したようです
その他Defense-News記事は、SNS上などで出回っている画像から、カンボジアの港で中国製の「AR2 long-rangeロケット」や「Type 90B multiple rocket launcher」、 「155mm SH-1 self-propelled howitzer」が、総数は不明ながら目撃されていると伝えています
//////////////////////////////////////////////////
Blake Herzinger氏がどんな方かも存じ上げませんが、この雰囲気で上記のような発言を行う「勇気」に感心いたします。
同カンボジア海軍基地周辺では、北京政府と関係が深い中国リゾート開発会社による沿岸地域での謎の「リゾート開発」が始まっており、その一つとして同基地5㎞北の湾内で目的不明の埋め立て工事が進んでいる様子もCSISによる衛星写真分析で確認されており、疑って見ておく必要があることは間違いなさそうです
2021年6月時点での関連記事
「カンボジア海軍基地への中国進出警戒感高まる」→https://holylandtokyo.com/2021/06/18/1921/
めっきり減った南シナ海の話題
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国大型機16機がマレーシア威嚇飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/06/03/1868/
「比に三菱製レーダー提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/
「航行の自由作戦活発化???」→https://holylandtokyo.com/2020/02/13/827/
「初のASEANと米国の海洋演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「次期米軍トップが中国脅威を強調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14-1
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-13
「F-35搭載艦艇がFONOP」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-07
「中国艦艇が米艦艇に異常接近」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-1