Asia/Africaへの中国無人機の売込みに警鐘

ロシアの市場を乗っ取って東南&南中アジアへ
アフリカ市場は言うに及ばず
米国が人道懸念で売却を制限する中、低価格を武器に

Wing Loong II.jpg中国による精力的な無人機開発と、低価格と使用制限なしを武器にしたアジアやアフリカ諸国への猛烈な売込みが、まもなく米空軍にとっても大きな問題として立ちはだかることになろうと、米国防大学や米空軍大学のイベントで専門家が訴えています

米国は以前からこの問題に気づいており、トランプ政権時に「人道主義」を前面に出したオバマ政権時の方針を大きく転換し、武器輸出に積極的な姿勢を見せ、「MTCR(ミサイル技術管理レジーム)」解釈変更による攻撃型無人機輸出への道を進んでいました

Wing Loong II2.jpgしかしバイデン政権は、発足当初こそ中国やトルコ等による中東などへの無人機輸出攻勢などを意識し、武器輸出に関するトランプ政権の方向性を維持する姿勢と報じられたものの、全く動きがみられない状況が続いています

米国の武器輸出に慎重な勢力は、イエメン等の紛争地域で民間人が犠牲になる恐れや地域の軍事バランスを不安定化させる懸念、軍事技術の海外流出を懸念材料としていますが、米国防省で武器輸出を取り仕切るDSCA(Defense Security Cooperation Agency)トップだったHeidi Grant氏は、米国が進出しなければ他の競争者(中国など)が進出するだけだと警鐘を鳴らし続けながら、状況が改善しない中で昨年11月に怒りの辞任をしています

本件に関し米国専門家は(6日付米空軍協会web記事より)
Mulvaney CASI.jpg●米空軍大学China Aerospace Studies InstituteのBrendan Mulvaney所長はインタビューに応え、「中国が精力的な研究開発に取り組む無人機は、低価格かつ使用制限がないことから発展途上国が大量に購入し、軍事的に優位なロシアにウクライナが巧みに使用して対抗しているようになろう」と述べ、
●「小規模国家が、米国が想像していなかったような方法で大量のドローンを使用し、米国を攻撃してくる可能性がある」と述べ、「米国は高出力マイクロ波による無人機の群れ対処法を研究し、有効性も確認されているが、いつどんなタイミングでもそのような対処兵器が使用可能とは限らない」とその脅威に警鐘を鳴らした

IDA.jpg●また国防分析研究所(Institute for Defense Analyses)のDavid R. Markov研究員は、5月17日の国防大学での「中露協力」に関するパネル討論で、「成長を続ける中国軍需産業が生み出す無人機は、低価格なうえに、誰に対してどのように使用できるか制限がなく、特定の地域の国にとっては魅力的な兵器となる」と説明した
china uav.jpg●そして同研究員は、「中国の目標は無人機の世界市場の大半を確保することであり、特にロシアが売り込んでいた「東南&南中アジア」や、反政府活動やテロリストで国が混乱しているアフリカ諸国で、ロシア製を抑え込んで無人機市場を支配しようとしていると語った

●更に同研究員は、「かつて中国が成功できなかった市場で、中国が巨大なマーケット獲得の可能性を目の前にしている」と分析し、まもなく米空軍の大きな問題としてのしかかってくるだろうと訴えた
●そして「低価格で運用コストが安い無人機を、それらの国が導入しない選択肢はない」、「我々はこの問題に対しほとんど何も対処していない。考えようとしているかも怪しいし、対処の策については全く考えていないと言い切れる」とまで述べた
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Grant3.jpgなお、昨年11月にDCSA長官を「怒りの辞任」したHeidi Grant女史は、辞任後すぐにボーイング社の「defense, space and government services sales teams」担当副社長に就任しています。KC-46やT-7Aや大統領専用機VC-25Bで多額の損失を出しているボーイングで、いかがお過ごしでしょうか?

米国の無人機輸出の障害だったMTCR(ミサイル技術管理レジーム)の縛りに関しては、「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の無人航空機」輸出を「原則禁止」としてきたMTCR規定の解釈を米国として2020年7月に変更し、同範囲の無人機でも「速度が時速800km/h以下の無人機」は輸出可能とすると発表したはずです。

「MTCR解釈変更で無人機輸出へ?」https://holylandtokyo.com/2020/07/27/581/

これで諸外国から要望が多いMQ-9 Reaper(巡航速度370 kph)やRQ-4 Global Hawk(同575 kph)が輸出可能になったはずですが、Grant女史が2021年11月に辞任したように、バイデン政権下で輸出話は停滞したままと認識しています。

米国の無人機&武器輸出の緩和問題
「兵器輸出責任者が怒りの辞任」→https://holylandtokyo.com/2021/10/19/2343/
「半年以内に武器輸出制限を緩和したい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-18
「MTCR解釈変更で無人機輸出へ?」→https://holylandtokyo.com/2020/07/27/581/
「国防次官:半年で武器輸出規制緩和へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-18
「MTCRの縛りで中国に無人機輸出で負ける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-04
「2018年の武器輸出促進策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-10-2
「中国無人攻撃機が中東で増殖中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-10-06-2
「輸出手続きの迅速化措置」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21-1
「肩透かし無人機輸出緩和」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-3
「4月にも武器輸出新政策か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18-1
「トランプが武器輸出促進ツイート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06
「無人機輸出規制の見直し開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04

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