既に導入機数の約3割受領済も
イスラエルも2機導入を決定したが
1月10日付Defense-Newsは、導入予定177機の内、既に50機をボーイング社から受領しているKC-46空中給油機に関し、戦闘地域での使用ができない原因となっているRVS(Remote Vision System)の「第一級不具合:category 1 deficiencies」について、昨年2021年秋には不具合改修方針を固める予定がまだ決まらない状態だと報じています
KC-46を運用する米空軍輸送コマンド報道官からのメールを引用し、RVSを根本的に設計からやり直し、「RVS 2.0」として2023~24年から投入する予定の新設計審査について、本来は2021年5月に空軍とボーイング社で中間レビューを行い、2021年秋に決定するはずが予定通り進んでいないとDefense-Newsは伝えています
この「第一級不具合」は、操縦席後方の給油操作員が使用する給油操作表示装置(RVS:remote vision system)が、給油対象機を必要な精度や視認性で表示できず、受け手側のステルス機の機体表面を傷つけステルス性を害したり、太陽の位置関係によっては受け手側機体が良く見えない不具合ですが、現状はとりあえずの「当面のソフト改修」でしのいでいる状況で、恒久対策(RVS2.0)を検討している状態です
そんな中でも既存空中給油機KC-135やKC-10の老朽化が進み、維持整備費の高騰と整備員への負荷増大で部隊運用を圧迫しており、作戦地域以外での低リスク任務にKC-46を投入可能とすることで「その場をしのぐ」苦肉の策に米空軍は出ています
具体的には、2021年7月に米海軍機に多いセンターラインdrogueシステム使用の給油を許可し、8月にはB-52とC-17輸送機、更にKC-46に対する給油任務を許可しました。そして10月には対象機の多いF-15とF-16への給油を許可し、12月6日にはAC-130、HC-130、MC-130、C-5、E-3Gにも給油許可を出し、空中給油可能な機体の70%に給油許可を出す「なし崩し」状態となっています
こんな状態ですからKC-46の海外輸出は困難を極め、米空軍以外では日本が4機と2022年に入ってイスラエルが2機導入を決定しただけです。一方でライバルであるエアバスA330型給油機は、豪州6、英国14、UAE3、サウジ6、シンガポール1、韓国2、フランス1機が既に納入済みで、他にチェコ、インドネシア、インド、カタール、スペイン、スウェーデン等が興味を示している状況です
1月10日付Defense-News記事によれば
●10日、米空軍輸送コマンドのHope Cronin報道官はe-mailで、RVSを更新する「RVS2.0」の設計受け入れに至っていないと述べ、本来なら2021年5月に空軍とボーイング社で中間レビューを行い、2021年秋に決定するはずが、予定通り進んでいないと明らかにした
●米空軍とボーイング社は、当時のGoldfein空軍参謀総長がボーイングCEOと2020年4月に直談判までしてRVSの根本設計変更による2023年「RVS2.0」導入に合意したが、予定通りには進んでいない実態が明らかになった
●それでも同報道官は、「RVS2.0」全体のスケジュールに変更はないと述べ、「設計審査の遅れはあるが、空軍とボーイングチームが協力して問題の解決に当たり、KC-46に求められる主要任務を安全に遂行できることに自信を持っている」とメールに記している
●そして、設計審査を終えた内容は正式な政府計画となって契約内容に反映されるだろうと説明している
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2022年に入り、イスラエルがKC-46を2機導入すると発表して驚きましたが、米国からの軍事費援助を活用して購入するものと考えられ、A330のオプションは最初からなかったものと思われます
2021年11月に日本導入の最初の1機が美保基地に到着し、いよいよ航空自衛隊もKC-46とお付き合いすることになりました。改修前の「RVS」の見え具合がどうなのか? 航空自衛隊は運用体制準備完了を何時宣言するのかが気になるところです
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