米空軍ACC司令官がNGADとAWACS後継語る

8月16日のインタビュー記事
極めて慎重な語りぶりで驚く内容ではないですが・・・

Kelly4.jpg6日付Defense-Newsが、米空軍戦闘コマンドACC司令官Mark Kelly大将に行った8月16日のインタビュー概要を掲載し、同司令官の次期制空機NGADや老朽化が著しいAWACS(E-3)に関する言及ぶりを紹介しています

最近は中国に手の内を知られることを警戒し、新兵器開発や新装備導入については極力隠密で進める姿勢が貫かれており、同時に予算が良くて横ばいの実態から新装備導入の目途が立ちにくいことから、この種の話の歯切れが極めて悪いのですが、それはそれなりに「小さなことからコツコツと」積み上げていきたいと思います

次期制空機NGADについては、情報管理、コスト、コロナから色々難しいと語り、AWACS後継については、機体寿命から今後10年維持することは難しそうで、投資優先順位1番に近い装備だと述べ、候補機種についてもコメントしています

6日付Defense-News記事によれば同司令官は
NGAD8.jpgQ:昨年9月に突然、既に初飛行実施済と発表され、関係者を驚愕させたNGAD(Next Generation Air Dominance)は、有人機と無人機の混合運用、新搭載兵器やセンサーなどで関心を集めているが、開発状況はどうか?
A:高度に情報管理されたNGADについて、何時、どの程度まで情報を公開できるかは私にもわからない。その要求性能や能力について広く知ってもらえれば、より多くのご支援やご理解を頂けると思っているが、その段階にはない

Q:Kelly司令官はNGADの強い推進者だが、その理由は?
A:F-15やF-22を開発した当時、頭にある脅威はソ連やロシアであった。欧州戦線での基地運用や空域を念頭に、また当時の電磁スペクトラム環境からX-バンドセンサーを想定していた
Kelly3.JPGA:今我々は欧州戦線思考や80-90年代思考やシングルバンドセンサー思考を超える必要がある。ロシアは依然として脅威だが、我々は新たな脅威に直面しており、アジア太平洋地域における距離克服やより広い電磁スペクトラム活用や対処の課題に向き合う必要がある。より遠方を監視し、戦い、勝ち抜く必要があるからだ

Q:NGADの課題は?
A:3つの「C」が思い浮かぶ。情報管理(classification)、コスト、コロナである。高度の情報管理を要求されており、従来であれば情報セキュリティーの整った小部屋で限定した関係者に対して秘密ブリーフィング等を行ってきたが、コロナ下で「密」環境を避ける必要もあり難しさを感じている。またハイテク装備は安価ではない。NGADも例外ではない点も容易ではない理由だが、敗北のコストと比べればはるかに安価だと思う

E-3.jpgQ:ACCにとって重要なISRアセット、E-8C JSTARS、E-3 AWACS、MQ-9、RQ-4の後継検討について聞こえてこないが、状況如何?
A:ISRアセットも戦闘機クラスと同様に、最新のものはほとんどない。E-3やAWACSは旅客機B-707をベースとしており、既に利益を上げる必要がある商用機の世界には存在していない。世界で6800機が飛行しているB-737をベースにしたP-8とは、維持整備環境が全く異なっている

A:ISRアセットの優先順位について問われれば、AWACSと答えざるを得ないし、率直にいえば必死に考えなければならない状況(have to be wide-eyed)である。豪軍や英軍が保有のE-7A Wedgetailが備えるAMTI(air moving target indicator)機能を、我がAWACSが備えていないことを認めなければならない。
A:第5世代の兵器やAMTI能力を持つセンサーを合わせて運用しなければ、真の第5世代戦闘機運用者にはなれないと考えている。兵器とセンサーの能力向上は欠かせない

E-7 2.jpgQ:他の米空軍幹部で、豪軍や英軍保有のE-7A Wedgetailを強く推す声があるが、予算化の話を耳にしたことはない。AWACSの老朽化が進む中、どれくらい後継導入を先延ばしできるのか?
A:AWACSは単純な装備ではなく、前線の新人整備員から部品補給処のベテラン、更にはマテリアルコマンドのスタッフまで多数の空軍兵士の信じがたい努力と苦労の上で現在もなんとか運用している状態である。機体や翼の耐用年数から、あと10年作戦用に維持するのは難しいとみられる
A:AWACS後継機について、予算的に何時頃実現できるのか率直に私にはわからない。ただかなり明確に、戦力提供者の立場として、E-7A Wedgetaiは私のNo1要望にかなり近いと言える
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NGAD6.jpg情報セキュリティーの整った部屋(SCIF)が使用困難で、米議員等に説明が難して予算確保に障害の恐れ・・・との話は、辞任したRoper次官補もつぶやいていましたが、そんなに本質的なことなんでしょうか???

NGADの話で、F-15やF-22開発当時は「Xバンドセンサーだけを気にしていればよかったが・・」との話が出ていますが、中国正面では多様な周波数帯の防空網が構築され、誰かが「喉から手が出るほど欲しい」と言っていたF-22も、2030年から退役開始の立場なのでしょう

以前からの繰り返しですが、F-35の維持経費を冷徹に真摯に見積もり、1763機の調達機数を大幅削減しないと光は見えないと思います。日本も同じです

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