米空軍の戦闘機族ボスが謎の次世代制空機NGADを語る

機密度が高いゆえに予算確保が困難だと危機感
参謀総長の戦闘機混合分析検討をけん制か??

Kelly.jpg2月26日、米空軍戦闘コマンド司令官、つまり「戦闘機族のボス」であるMark Kelly大将が記者団と懇談し、記者団からの関連質問もない中で突然自ら次期制空機NGAD(Next Generation Air Dominance)の予算確保への危機感を訴えました

次期制空機NGADについては、4世代機や5世代機とは異なり、他の兵器や装備で構成される「family of systems」の中の構成要素の一つととらえて検討する方向性が語られるのみで、2017年以降情報が全く出ていませんでしたが、昨年9月、当時のRoper空軍調達担当次官補が突然「既にデモ機が初飛行を済ませている」と衝撃発言を行って世界中に激震が走ったところです

NGAD6.jpgしかしその後は再び闇に包まれ、昨年12月に再びRoper次官補が、米空軍の新規開発プログラムは極秘技術に関するものが多いが、米議会に説明するために必要な「機密情報隔離施設:SCIF」がコロナで使用困難で、「次世代制空機計画がコロナに殺されかねない」とまで言及して危機感を訴えていたぐらいしか関連情報がありませんでした

そんな中、期待もしていなかったNGADに関する突然の発言に、参加していた約20名の記者たちも驚いたようで、2月26日付Defense-News記事は「誰もNGADについて質問しようと考えない雰囲気の中、会見の最後に突然Kelly大将が思いを語り始めた・・・」と様子を伝えています

2月26日付Defense-News記事によれば
Kelly2.JPGMark Kelly米空軍戦闘コマンド司令官は記者団に会見の最後に自ら突然、「私は技術開発や試験状況から、NGAD技術が実用化(will get fielded)できるレベルに達していると確信している」、「また敵に大きなダメージを与えることができる技術だと確信している」と技術完成レベルに自信を示すとともに、
一方で、「中国などがこれを実現して我が国に使用する前に、我が国がこの技術に焦点を当て、配備に進む勇気を発揮できるかわからない」と現状への危機感を訴え

ただ同司令官は、いつ頃NGADを配備可能になるのか等、本計画に関する細部への言及を避け、何機デモ機が存在するのか、どの企業が担当して開発しているのかについては触れなかった
ただ「極めて重要な焦点となる技術であり、我々はこの技術がもたらす利益の重要性を国家として訴え続けなければならない。そのことにより米国と統合戦力に航空優勢を提供しなければならない」と重要性を繰り返し訴えていた

NGAD7.jpg同司令官の発言の背景には、開発を加速するために予算増が必要なタイミングにありながら、確保が進まない焦りがあると推測されている。2020年度のNGAD予算が約1000億円だったのに対し、2021年度は空軍要求の1150億円から減額され、昨年以下の約990億円に抑えられたからである
米議会は国防省の独立部署であるコスト分析計画評価局に対し、開発状況が良くわからない米海軍と海軍の次世代戦闘機開発について調査を行うよう命じており、技術的成熟度合いやコストの観点からの分析が2021年度行われる予定となっている

F-35の維持費25000ドル/時間目標@2025年について
この目標達成に確信を持てない状況だがあきらめてはいない。だから私は各部隊整備部署や修理センターや部品調達ルートの話を聞きき、何が出来るのか検討しているのだ
訪れた先では、単に感想を聞くのではなく、取るべきアクションを煮詰めるための議論を行っているが、今ここにいる段階で、目標達成に自信を持てないでいる
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2月17日のBrown空軍参謀総長による「戦闘機世代別の構成比率検討」開始宣言に対する意見表明のような気がしなくもありませんが、コロナで国家予算の重点配分先が変わりつつある中、いろんな方面でこれまでと異なる環境への対応が求められているのでしょう

NGAD5.jpgNGADに関する情報がここまで管理されているのはある面で素晴らしいことですが、中国やロシアにはしっかり漏れているかもしれません。この米空軍大将が先を越されることを恐れているくらいですから・・・。今後の米軍全体の戦い方の変化を考える上での「試金石」となる装備ですので、今後もその動向に注目したいと思います

F-35に関しては、今になっても新たな機能を盛り込んだりしているため、整備がますます複雑化し、一度は低下した整備コストが増加に転じており、低下の見通しが立たない状態です。

NGADを巡る最近の動き
「戦闘機世代混合比や5世代マイナス機の検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-19
「SCIF使用困難で戦闘機開発危機」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-12
「次期制空機のデモ機を既に初飛行済」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-16

ちょっと以前の関連記事
「空軍大将:中国正面で戦闘機のニーズは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-28
「CSBAの米空軍将来提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「連接重視で航空アセット削減へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「次期制空機検討は急がない、急げない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-19
「米空軍が次期戦闘機検討でギャンブル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-05
「戦闘機族のボスがNGAD予算を危惧」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「秋に戦闘機ロードマップを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

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