米情報機関トップが中国開発宇宙脅威を語る

講道館で柔道を学んだ経験もある女性
オバマ時に女性初のCIA副長官や安全保障大統領副補佐官

Haines.jpg14日、米国の政府情報機関すべてを束ねる国家情報長官(DNI:Director of National Intelligence)に女性として初めて就任しているAvril Haines氏が、上院情報委員会でDNIの年次リスクレポート(Global Risk Assessment report)について証言し、中国の宇宙脅威について語りました

DNIは、911同時多発テロを事前に察知防止できなかった反省を踏まえ、セクショナリズムナリズムに陥っていた米国の政府情報機関(CIAや国防省情報機関などなど)を束ねるポストとして2005年に設立され、大統領と国家安全保障会議の情報補佐官としての役割を担っており、毎日大統領に情報ブリーフィング(President’s Daily Brief:大統領と大統領が承認した人物のみ閲覧可能)を行うポストです

Haines5.jpgAvril Haines氏は、高校卒業後に日本に1年間滞在し、その際柔道の講道館に所属した経験がある女性で、シカゴ大学で物理学士を取得した後の20代にはボルチモアの田舎でカフェを経営し、カフェでの詩の朗読を売りにしていた変わった方ですが、33歳でジョージタウン大学法学博士を取得し、国務省の条約局や政治軍事局でキャリアをスタートしています

その後、上院外交委員会の法律副主任として時のバイデン外交委員長を支え、2010年からはオバマ政権のホワイトハウスで安全保障担当スタッフを務め、2013年にオバマ大統領によって初の女性CIA副長官に指名されています。そしてCIA副長官の後は2017年まで女性初の安全保障担当副補佐官を務めました

そんなDNI女性が上院で、ロシアの宇宙脅威を説明するとともに、中国の宇宙能力開発を米国の技術競争力に対する「一番の脅威だ」と語ったようです

14日付Defense-News記事によれば
Haines3.jpgAvril Haines国家情報長官(DNI)は、中国は人民解放軍を中核として、米国を宇宙で出し抜くため、また米国が宇宙での主導権から得ていた軍事・経済面などでの利益を確保するため、米国や同盟国の衛星攻撃能力を多様な手法で獲得する野望に向かって突き進んでおり、既に一部は実用化されていると語った
年次レポートは広範なリスク分析の報告であるが、その中ではロシアの宇宙能力が引き続き脅威であることと共に、中国の宇宙能力開発を米国の技術競争力に対する「一番の脅威だ」と位置付けている

中国が着手した138個の商用地球監視衛星群に関する委員からの質問に対しDNIは、米国の宇宙支配に対する中国による多様な挑戦の一つだと回答したが、米国側の能力について保全上触れなかった
そしてHaines国家情報長官は、「一般常識として、中国は米国の宇宙での指導的立場にとって代わるため、米国よりも多様な分野で懸命な取り組みを続けており、宇宙でリーダーシップを獲得することに焦点があることは疑う余地はない」と語った

滅多に公の場で語らないDNIが議会で証言した背景には、秘密のベールに包まれ、米議会で中国の宇宙脅威への理解が不足しているとの一部議員の危機感と証言実現への働き掛けがあったと言われている
Haines4.jpg米国情報機関は具体的な中国の活動として、中国は2022~24年までに低高度軌道に宇宙ステーションを投入し、ロボットによる継続観測を企図して月面への探査ミッションを継続し、将来的には「断続的な人間チーム派遣」を目指すと分析している

中国の対宇宙兵器開発が増加しつつある状況についてレポートは、2019年に解放軍の宇宙支援部隊が地上発射対衛星兵器の訓練を開始し、既に低高度軌道の衛星のデリケートな光学センサーを無効化(blind or damage)する地上発射ミサイルや地上発射レーザー兵器を配備していると記している
またレポートは、中露両国が対衛星兵器部隊の増勢に取り組み、新たな破壊及び非破壊型対衛星兵器の配備が続いているとし

ロシアについても、「電磁波妨害やサイバー妨害、エネルギー兵器、地上及び衛星からの対衛星兵器で、米国や同盟国衛星を狙っている」、「大規模な偵察、通信、航法衛星ネットワークは、カギとなる対抗者であることを示している」と説明している
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DNIによる年次リスクレポート2021年(20ページ)
→https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/ATA-2021-Unclassified-Report.pdf
DNIによる議会証言関連報道
→https://www.airforcemag.com/dni-cyber-is-the-common-weapon-among-top-adversaries/

中国が「2022~24年までに低高度軌道に宇宙ステーションを投入」したら、スプートニクショックまではいかないまでも、少しは西側諸国に衝撃が走るのかもしれませんが、コロナの傷がいえるまで、中国の脅威への関心が高まるには時間がかかるのかもしれません

中国とロシアが西側民主主義の限界をチャンスととらえて攻勢を強める中、米国情報機関トップへの期待は高まるばかりです。かつてゲーツ氏が国防長官になる前に打診され断ったDNIポストですが、女性初の壁を何度も突破してきた講道館メンバーのAvril Haines氏に、ここは期待しておきましょう

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