8月13日からの規制第2弾を9月末まで延期
軍需産業界は法執行の1年程度延期を要望
14日付Defense-Newsは、米国が2018年国防権限法(NDAA)第889項で定めた、今年8月13日が期限の「特定中国企業5社の製品を使っている企業は米国政府との取引を禁止」との条項に関し、その執行を9月末まで延期すると国防省に伝えたと報じました
2018年の国防権限法(NDAA)第889項(Section 889 of the 2019 National Defense Authorization Act)は、中国への情報や技術流出を防止するために、中国への警戒感を強めている米議会が超党派の賛成で可決してトランプ大統領が2018年8月13日に署名して成立している法律で、排除される「特定中国企業5社」は、通信機器大手「ファーウェイ」や「ZTE」、監視カメラメーカー「ハイクビジョン」や「ダーファテクノロジー」、無線通信「ハイテラ」の5社です
2018年の国防権限法(NDAA)第889項は2段階で上記企業製品の排除を求めており、2019年8月に「第1弾」として上記5社からの「製品やサービスの政府(直接)調達」を禁じ、今年8月13日からは「第2弾」として、「中国5社の製品などを使う一般企業からの政府調達」を禁じています
しかし上記5社の製品はすでに広く米国企業が使用しており、多くの階層下請け企業から構成される軍需産業界を考えるとき、Lord調達担当次官が議会で「例えば第7次下請け企業が、(国防省契約と関連のない仕事で)駐車場の監視カメラに特定5社のカメラを使っていた場合までを調べ、その下請け企業をサプライヤーにしている主要軍需産業との関係を無効にするような法規制の遂行には猶予が必要だ」と訴えたように、実効性の点で問題があるようです
14日付Defense-News記事によれば
●Defense Newsが入手した政府内の「memo」によれば、米国防省は政府機関全体からファーウェイ製等の製品や部品を排除する法律の執行に関し、時間的猶予を与えられた模様である
●本来であれば今年8月13日から効力を発する2018年国防権限法(NDAA)第889項の「中国企業5社からの製品やサービスの政府調達禁止」について、9月30日まで猶予された模様である
●国家情報長官DNIであるJohn Ratcliffe氏から、Lord調達担当次官あてに出されたmemoは、「米軍が戦争を抑止し、米国の安全保障を守る米国防省の任務遂行のためのサービスや物品の調達が、2018年国防権限法(NDAA)第889項の遂行と同等に、国家安全保障の利害に直結するものだと理解する」と述べ、
●Lord次官に対し、同法律執行に関する現実のリスクとリスク緩和対策、調達禁止製品に関する代替品調達の計画状況について情報提供するようにmemoは求めている
●第889項の規定により、国防省関係機関には、自ら関連中国企業の製品を使用していないと証明できない企業とは契約変更や締結ができない状況で困惑が広がっていたところ、この「執行猶予」は一時的な安らぎにはなろう
●しかしそれ以前に、コロナ対応の軍需産業支援「追加」策が政党間の争いに巻き込まれてとん挫している中、国防省や軍需産業関係者からは、「まずコロナ対策に集中すべきだ」、「現実的に迅速な実行不可能(far-reaching)なルール強制には、1年程度の猶予期間が必要だ」との声が各所から上がっている
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これが米国軍需産業の現実だということでしょう。少なくとも2年前には米議会で可決され、トランプ大統領が署名していた法律ですから、色々努力もなされてきたのでしょうが、世界のサプライチェーンから中国製部品を排除することが如何に困難なことかを改めて示しています
最近も同様の中国企業排除の大統領指示が次々に出ていますが、実行に移すには相当な労力が必要だということです。ただ中国の姿勢を考えるとき、中国製品排除は必要なことでしょうから、皆で協力して取り組むことが必要だということでしょう。
今回の国防省への「執行猶予」で気を緩めることなく、日本企業にも中国製品排除に取り組んでいただきたいものです
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