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Dynamic force employment方式へ変更と言うも
大型爆撃機の海外駐留がこれで終了
中国兵器射程内からの撤退か?
16日、米空軍が2004年から継続していた大型爆撃機のグアム島駐留CBP(continuous bomber presence)を終了し、最後に駐留していた5機のB-52爆撃機が米本土の母機地(Minot基地)に帰還しました。
このCPBは、軍事力を急速に増強・近代化してきた中国や、挑発的行動を繰り返す北朝鮮などに「にらみ」を効かすため、また地域の地形や施設に完熟したり、地域同盟国との共同訓練の機会を増やすことなどを目的に開始されたもので、中東でも同様の取り組みが行われて来ました
ところが米空軍は、この大型爆撃機の継続的駐留方式を辞め、よくわからない「Dynamic force employment」方式に変更する方向を打ち出し、中東では18年継続した駐留を、2019年3月に当時展開していたB-1爆撃の帰国で終了しています。なお欧州では、特定な場所での継続的な駐留は行われておらず、必要に応じて、必要な場所に展開する形で行われています。
以下では、グアムでのCBP終了に関する米空軍幹部の発言や新方式「Dynamic force employment」に対する説明部分をご紹介し、併せてまんぐーすの「邪推」でその理由を考えたいと思います。
なお、ご紹介する写真は、B-52がグアムから撤収する3日前の13日に、米軍航空戦力を印象付けるため当地アンダーセン空軍基地で行われた「elephant walk:航空戦力大行進」の様子で、帰還する5機のB-52の他、同基地所在の6機のKC-135空中給油機、各1機のMH-60S多用途輸送ヘリ、RQ-4無人偵察機、MQ-4米海軍無人海洋偵察機が参加しています
17日付米空軍協会web記事によれば
●B-52をグアムに派遣していた米空軍グローバルストライクコマンド(GSC)は声明を出し、「今後も米軍の戦略爆撃機は、選択した時と場所で、アジア太平洋地域で作戦活動を継続する」、「我々は全ての機会を捉え、同盟国などと訓練し、相互運用性を高め、作戦運用面で予測しにくい(operationally unpredictable)共同行動能力を向上させていく」と今回のCBP終了に関しコメントした。
●またGSCは「Dynamic force employment」方式への移行について、大型爆撃機を米本土の基地に置く一方で、更なる強靭性をもって、海外の多様な場所から作戦を開始する機会を与えるものだ、と説明した
●「Dynamic force employment」方式について、Goldfein空軍参謀総長は「大型爆撃機に関する戦域での体制をまさに調整しているところだ」、「新方式は、高価値アセットのアジア太平洋の派遣において、「戦略的には予期可能でも、作戦面では予測困難(strategically predictable, and operationally unpredictable)」な方向を目指すものだ」と4月1日に述べ、
●GSC司令官であるTimothy Ray大将は、「Task force-size」での爆撃機派遣行動が将来にはより効果的だ、と説明している。また同大将は9月に、少数機での海外派遣要領を訓練し、B-1爆撃機の稼働率や即応態勢を改善して、2020年の太平洋戦域派遣に備えたいと述べている
●なお中東では、2019年3月に、当時UAEのアルウデイド基地に展開していたB-1爆撃機が帰国し、18年間継続した爆撃機の駐留派遣は終了した。もちろんその後、イランの脅威に対処するため、一時的にB-52数機を中東に派遣したこともあるが、継続的なローテーション派遣ではない
邪推:Dynamic force employment方式への変更理由
●貴重な戦力である大型爆撃機を、3-5機も中国の弾道ミサイル射程内に派遣しておくのはリスクが高いし、情勢が緊迫してきてから撤退させては、同盟国に与える印象が悪いので、米本土待機に変更した。
●老朽化して部品調達も難しくなっているB-1爆撃機の稼働率が、2019年には一時は2割以下に落ち込むなど、戦力を分散しかつ稼動機数を確保する必要があるCBPを維持するのが困難になった。
●20年以上続く中東での戦いのため、空軍兵士の海外派遣期間や頻度が高止まりしており、操縦者や兵士の流出に繋がっていることから改善する必要があった。
●駐留的派遣CBPを維持するためのコストが高く、予算不足の中で遣り繰りが困難になった
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「邪推」部分はあくまで「まんぐーす」の推測ですが、大きくは外れていないと思います。新方式は「Strategically Predictable, and Operationally Unpredictable」がキーワードのようです。
結果論かもしれませんが、米軍のアジア太平洋でのプレゼンスを示すために行われた「elephant walk:航空戦力大行進」は、かえって米軍戦力の中国正面からの撤退を、広く宣伝する結果になったような気がしてなりません。
コロナ感染拡大で軍事的な話題が少ない中、南国のさわやかな太陽の下で大型爆撃機が大規模に整列する写真が全世界に発信され、「悪めだち」したような気がします。
グアムCBP関連の記事
「アジアへの空軍戦力派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-14
「グアムに大型B全機種勢揃い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-12
「B-2がCBPでグアム展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-18
「CBP受入の常設部隊設置へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13-1
「爆撃機による外交」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
中東でも
「18年継続の爆撃機中東派遣終了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-30-1
「対イランに中東へB-52短期派遣」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-08
爆撃機ロードマップ
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春のBomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2