米空軍トップ:米軍の長射程攻撃を誰が担う?

陸海海兵隊が長射程攻撃兵器を重視し始める中
従来この任務を担っていた空軍として一言

Goldfein4.jpg1日、米空軍協会ミッチェル研究所からの遠隔インビューに臨んだGoldfein空軍参謀総長は、これまで米空軍が担ってきた長距離の戦力投射任務に陸海海兵隊が力を入れ始めていることに関し、予算の伸びが期待できない中で、超超音速兵器(hypersonics weapon)開発で3軍が分担協力して素晴らしい成果を挙げているように、米軍全体として長射程攻撃の分担等あり方を考えるべきだと語りました

中国が各種弾道ミサイルや対艦ミサイルを整備し、そのA2AD領域を第2列島線にまで拡大しようとしている中、米陸軍は「射程1000nmの砲」開発を開始し、海軍海兵隊は2021年度予算案で「地上や艦艇発射型トマホーク」や「Naval Strike Missileの車両搭載版」導入を柱にすえるなど長射程攻撃能力の強化が米軍内で並行的に進んでいるとこを踏まえたインタビューでのやり取りです

空軍参謀総長は、ウォーゲームの結果等から、長射程兵器だけでは勝利できず、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)が必要だと主張し、インタビューした湾岸戦争航空作戦計画の中心人物であったデプチューラ元中将も、大きな戦いでは4-6万個の攻撃目標に対処するが、費用面で長射程兵器だけでは耐えられないだろうと意見を述べています

1日付米空軍協会web記事によれば
Goldfein3.jpg米軍全体で長射程兵器への投資が過剰重複になっていないか、との質問に対し、)Goldfein空軍参謀総長は、中国やロシアなどの状況に鑑み、陸軍や海軍が各任務や文化に応じて長射程兵器に注目することに驚きはないし、以前中東軍で統合航空戦力指揮官だったときに陸海軍から射程1000nmの長射程兵器提供の申し出があったなら、絶対に断らなかったと思う、と述べた
●一方で同参謀総長は、現在の厳しい予算状況を勘案すれば、米軍内に重複投資はないか? より4軍が協力して必要能力を獲得維持する方法はないかと考えることが強く求められている、と述べた

●そして、超超音速兵器(hypersonics weapon)開発は米軍内協力の「success story」で、どの軍種が誘導装置を、弾頭部分を、本体部分を担当するのが最善かを吟味し、協力体制を作って効率的な取り組みが迅速に行われている、と評価し、
この「黄金律」を、今後の長射程兵器導入検討に生かす必要があるし、また、長射程兵器だけでは将来の戦いで勝利できないとも訴えた

●同大将は将来戦に関する多くのウォーゲームの結果を引き合いに出し、長射程兵器(standoff missiles)と使い捨て無人機(attritable aircraft)で構成される「outside force」では勝利できていない、と説明し、最も厳しいシナリオでも勝利できたのは、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)だけだと主張した

NMESIS.jpg●また同参謀総長は「長射程兵器のみ戦力推奨派」に対し、そう主張したいのなら分析結果を示せ、国家防衛の責任を負うなら、勢いだけで主張するなと厳しく表現し、将来戦において勝利できるとの証拠を示すべきだと強く訴えた
ただし同大将は、今後の兵器技術や敵情の変化などの最新軍事情報に基づき、ウォーゲーム等は継続的に実施されることから、その結果を踏まえた方向性の修正は当然ありえるとも語り、中国、ロシア、北朝鮮や他の敵対国の動静を注視する必要があると説明した

●インタビューしたミッチェル研究所のDavid Deptula元中将は、主要な地域紛争レベルになると4-6万個の攻撃目標に対処する必要があるが、その全てを長射程誘導兵器で攻撃することはコスト的に耐えがたくありえないと補足した
●最後にGoldfein空軍参謀総長は、米陸軍と海軍が、米空軍が従来担ってきた任務や役割を「密漁」しようとしているとの指摘に対し、つまらない考え方だと表現し、他軍種の動きを妨げるつもりは毛頭ないと述べた
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映像(約39分)米空軍参謀総長インタビュー
記事内容の他に、コロナ対応や操縦者不足問題などについても語っています

Goldfein空軍参謀総長や、湾岸戦争航空作戦計画でワーデン大佐の「懐刀」として中央軍作戦中枢で辣腕を振るったDavid Deptula氏の主張には頷く点が多いのですが、米陸軍の「射程1000nmの砲」や、海軍海兵隊の「地上や艦艇発射型トマホーク」や「Naval Strike Missileの車両搭載版」導入について、統合参謀本部や国防省レベルでのすり合わせが低調な様子に驚くばかりです。

中国やロシアや北朝鮮が「仁義なき戦い」を吹っかけてくるのは織り込み済みでも、ペンタゴン内での「仁義なき戦い」は、過去の歴史を教訓にぜひとも避けていただきたいものです。

大統領選挙での黒人票取り込みを狙うトランプ大統領の意向が働いて、初の黒人軍種トップとしての話題性で次の空軍参謀総長に引っ張り出されたと「勝手に邪推」しているBrown太平洋空軍司令官に置かれましては、気持を強く持っていただきたいと願うしだいです

米軍地上部隊の変革
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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