CSBAが今度は米空軍の将来体制検討レポート

米海軍へのレポートでは米海軍の構想に厳しい指摘も
米空軍の戦闘機や爆撃機大増強を応援する姿勢

CSBA 5 Priorities.jpg1月22日、シンクタンクCSBAが米空軍の将来体制に関する75ページの提言レポート「Five Priorities for the Air Force’s Future Combat Air Force」を発表し、5つの優先取り組み事項を挙げ、現在は「一つの紛争」に対応可能規模だが、「二つの地域紛争」に対処可能な体制に増強すべき等々と提言しています。

この提言は、米空軍が2018年9月に明らかにした戦闘飛行隊数を25%も増強する夢構想「The Force We Need」の方向性を支持しつつ、細かな助言を行うような内容で、2019年4月にCSBAが発表したレポート「An Air Force for an Era of Great Power Competition」の内容を発展させたものだとしています

先日ご紹介したCSBAの米海軍に対する提言レポートでは、同じく艦艇数の2割増を目論む海軍に対し、米海軍が中核として調達を希望する大型イージス艦は敵の攻撃に脆弱で平時運用に非効率であるから、中小の無人艦艇(平時は少人数で有人運用)を積極的に導入せよ等々と厳しい意見を提示していましたが、米空軍には「追い風」の提言となっています

F-35 2.jpgただ、CSBAがまとめた昨年4月のレポートに関しては、CSISが同10月にパネル討議を主催し、他の委託研究結果と併せ、「無人機活用への姿勢が不十分」などと批判的に評価する声をあげており、これを受けてか22日発表のレポートでは、無人機の役割拡大に関する内容が盛り込まれいます。

しかし、先立つ予算がなく、継続する実戦運用予算と老朽化が進む現有装備品の更新の取捨選択を迫られる厳しい状況ですから、夢構想ばかり拘っていては誰も相手にしてくれない悲しい現実がそこにあり、2019年11月には早くも米空軍副参謀総長が夢構想「The Force We Need」について、「詳細な分析ではなく、変更がありうる」、「近い将来に目指す数字ではない」等とトーンダウンしていたところです。

・・・とはいえ、国家防衛戦略NDS実現のために必要な体制を見積もった検討レポートですので、「5つの優先取り組み事項」を確認しておきたいと思います

22日付米空軍協会web記事によれば
NGAD2.jpg●CSBAが22日に発表した提言レポートは、現在の米空軍の規模は一つの紛争を戦う規模となっているが、国家防衛戦略NDSが対処の焦点とする中国やロシアは、米軍が一つの紛争に従事して余裕戦力が無いタイミングで、更なる紛争を仕掛けて優位に立とうとする恐れがある
と懸念し、
●突破力のあるステルス作戦機の増強、無人機活用の拡大、新たな技術の開発加速、より分散した基地からの運用体制確立など、「5つの優先取り組み事項」を提言している、

第1に、米軍が他の紛争に従事している状況下でも、中国やロシアの侵略を抑止して食い止めるため、米空軍は2つ目の世界紛争にも対応可能な規模を備えるべきで、同時にその戦力は、厳しい脅威環境下でも敵地深く進攻でき、敵に聖域を与えない質的能力を備えている必要がある

F-22Hawaii.jpg第2に、高い脅威下での作戦運用にはステルス性が不可欠だが、米空軍のステルス機保有数は不十分であり、F-35やB-21の調達を加速し、更に次世代制空機(PCAや突破電子戦機)や突破型ISR機の開発導入を急ぐべきである
●また、現在保有のステルス爆撃機B-2は、爆撃機体制構想では2030年前半に退役する予定になっているが、不足するステルス攻撃機を確保する意味から、B-2の防御管理システムの近代化改修を引き続き進めて、B-21の機数が十分確保できるまで延命させるべき。同様にF-22についても近代化施策を継続して長く活用し、各ステルスアセットへの搭載兵器についても母機の延命仕様に合わせて能力向上を図るべきである

第3に、母基地から、又は敵の脅威下での長距離作戦運用能力を拡大すべき。中国やロシアは作戦行動に際し、米国が対応する時間的余裕のない短期間に「既成事実の確立:a fait accompli」を試みるだろうが、これを防ぐため、敵のミサイル攻撃の射程外の基地から対応しても、迅速に戦力を作戦地域に投入できるような長距離運用能力が求められる
●なおこの際、敵のミサイルの射程外の距離からの戦力投射能力と、分散した基地からの運用能力は、貴重な戦力の保全と残存性確保のために両方確保されるべきである。国防省は最近、米陸軍が主に近距離の基地防空を担当するよう命じたようだが、CSBAは米空軍自身にも基地防御により多くの人員を割り当てるよう求める

MQ-9-3.jpg第4に、無人機や無人システムよって実施する任務分野を拡大すべきである。米空軍の現在の2030年戦力見積もりでは、無人機の規模は2020年時点の状況から若干増加する程度であるが、戦力の規模や能力を確保するため、より積極的に、例えばMQ-9Aや、有人機とチームを組んでのISRや電子戦や対航空任務に従事できる低コストの無人機活用を進めるべきである

第5に、戦力を大きく増強させることが出来る次世代兵器の開発を加速すべきである。超超音速兵器、電子妨害や電磁パルス兵器を搭載して広範囲の敵に対処可能な巡航ミサイル、燃料効率を大幅に改善して航続距離や在空時間延伸に貢献する新型エンジン、マルチドメイン作戦を支える妨害に強い新型データリンクなどが期待される分野である

●また、現有の巨大なISRアセットであるE-3 AWACSやE-8 JSTARSの後継となるアセットの開発も重要である。全ドメインをカバーする強靭な指揮統制システムを構成する重要なアセットとして、新たなアセットを投入する必要がある
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CSBAの当該レポートwebページ
https://csbaonline.org/research/publications/five-priorities-for-the-air-forces-future-combat-air-force

先日ご紹介した下院軍事委員会では、専門家として招聘されたフロノイ元国防次官らが、米海軍や空軍の戦力大増強構想を批判的に評価し、中国首脳部に武力行使を思いとどまらせる方策として、「72時間」中国海軍戦力を高いリスク下に置くアイディア等を出し、より現実的な具体案を探ろうとしていたところです

CSBAの提言は、予算や人材確保が出来れば実現可能でしょうが、F-35の調達ペースさえ上げられず、代わりに第4世代機F-15Xを導入して次世代制空機PCAの議論を先送りしたり、今現在の部隊運用経費と将来への投資のバランスで悩み深き状況の米空軍が、F-35もB-21も次世代制空機も同時に調達を加速するなど、夢のまた夢・・・と言えましょう

FlightIII-Arleigh Burke.jpg米海軍の大型艦艇分散運用思考には批判的なCSBAが、米空軍に対しては別人のように、敵のミサイル射程外で、かつ分散基地運用であれば追求せよと応援していますが、弾道ミサイルや巡航ミサイルの精度や配備数が増加する中、また中露が迎撃が困難な超超音速兵器配備を進める中、逃げ隠れ出来ない容易な目標である米空軍の遠方分散基地が生き延びることが可能でしょうか??? そんな場所があるんでしょうか???

CSBAは米海軍委は厳しく
「CSBAが米海軍に提言:大型艦艇中心ではダメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
米海空軍の戦力大増強には反対の意見
「中国抑止をフロノイ女史らが語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17

CSISがパネル討議でCSBAらの提言を批評
「CSISが3つの米空軍将来体制研究を批評」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-31
米空軍の将来体制夢構想「The Force We Need」関連
「空軍長官386個飛行隊ぶち上げ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19-1
「11月には早くも夢構想あきらめ?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-16-1

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