期待外れ?トランプの無人機輸出緩和

FMSでなく、企業による直接交渉を許可する方向も
MTCRの変更には当面踏み込まない模様
Navarro.jpg19日、ホワイトハウスの貿易代表Peter Navarro氏と国務省担当官が米国製武器の輸出を容易にすべく新たな方針を打ち出し、今後60日間で産業界の意見を聴取すると明らかにしました。
「economic security is national security」とのスローガンのもと、これまで米国製を使用してきた中東などの国が、安価な製品を売り出す中国に流れないようにとの狙いを込、「より簡単に米国製兵器等を入手できるように」規制を緩和するようです
細部がまだ明らかではありませんが、米国航空宇宙工業会の副会長は「これは大きな出来事だ」と感想を述べ、「政権を信用し、諸外国との関係強化を重要課題にしている国防長官を信じよう」と語っており、歓迎ムードです
MQ-9 5.jpg一方、感心が高かった無人機関連では、MTCRの「category-1」に含まれ輸出が厳しく規制されている「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の完成した無人航空機システム」から、「速度が時速650㎞以下」の無人機システムを、規制が緩い「category-2」に落とす方向とのうわさも流れて言いましたが、その実現はならず、期待外れな感が否めません
なおMTCRは米国をはじめとする西側主要国による、「ミサイル技術管理レジーム:Missile Technology Control Regime」です。末尾にご紹介する外務省の解説をご覧ください。
それでも、この無人機分野でも2つの変更点が、ホワイトハウスと国務省の担当官から発表されたようですので、ご紹介しておきます
19日付Defense-News記事によれば
Kaidanow.jpg●19日の発表で国務省の政軍関係担当次官補代理のTina Kaidanow女史は、無人機輸出に2つの変更を行うと説明し、その一つは、企業が2国間の政府経由で売買を交渉するFMSではなく、「Direct Commercial Sales process」との企業による直接交渉を可能にする方針転換である
2つ目は、MTCRの「category-1」に含まれ輸出が厳しい「搭載能力500kg以上かつ射程300km以上の無人機」でも、武器を搭載していないければ、レーザー照準器「laser-designator」搭載機への制限をなくすことである。
●同次官補代理は、「米国軍需産業が、他の競争国と輸出を争い、同様の製品を我が同盟国等に売り込む際、より少ない障壁と手続き上の混乱で行えるようにすることが目的だ」と説明した
●一方で同次官補代理は、MTCRが引きつづき検討の対象であるとの考えを示し、「我々はMTCRがダイナミックに変化する質を保つように注視している」と語った
●また、武器輸出緩和に伴い、輸出先での人権侵害を懸念するNPO等に対しては、「何も変わりはない。今後も輸出相手国との連携を密にし、輸出装備のモニターを継続し、国際法等に沿って民間人への被害を防止する」と説明した
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MQ-9 3.jpg2013年から17年の間の統計で、世界の武器輸出のトップは米国で、世界の34%で98か国に輸出しています。2位がロシアの22%で47か国に輸出、中国は5位で5.7%の48か国となってるようです。
秋の中間選挙に向け、様々な形でトランプ式の輸出促進策が打ち出されるのでしょうが、商業製品だけでなく、武器取引にも仁義なき戦いが始まるのでしょうか・・・
外務省によるMTCR解説
→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html
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