30日付米空軍協会web記事が、米軍ICBM製造を担う企業幹部へのインタビュー記事を掲載し、現有「Minuteman III」の後継を具体化する基礎技術が固まりつつ有り、後継ICBM選定のための「RFP:提案要求書」が2016年3月頃には米空軍から発出される可能性があると明らかにしています
装備老朽化が深刻な段階に進む中、人里離れた場所での勤務を強いられるICBM部隊は、部隊に勤務する士官を含めた兵士の士気低下や規律の乱れが深刻化しており、ここ数年、歴代国防長官や空軍長官が「てこ入れ」に奔走しています。
予算厳しき中で抜本的対策は進まず、ICBMを含む米空軍核運用部隊を指揮するGSC(Global Strike Command)司令官の「大将」格上げ(大将が28日就任)が目立つ程度です。
30日付米空軍協会web記事によれば
●7月29日のインタビューで、次期ICBM製造の候補企業の一つである「Aerojet Rocketdyne Missile Systems」のBright副社長は、現有「Minuteman III」との共有化や価格管理を可能な限り追求したいと語った
●「堤防が決壊すること避けるため」、政府は「Minuteman III」の多くの側面を次期ICBMでも維持しようと考えている。例えば、再突入体、上段部分、燃料、現運用場所、ICBM格納サイロ、指揮統制装置等をアップデートするもののなるべく活用したいと。
●軍需産業側もまた、長期的なコスト削減に技術的改善を活用して取り組んでいる。「維持に多くの投資が必要ないミサイルを確実なものにしたい」とも同副社長は語った
●例えば、「Minuteman III」は20年経過したら燃料交換の必要があるが、次期ICBMではICBMの寿命が続く限り燃料交換無しを狙っており、少なくとも2070年までを使用可能としたい
●過去10年間、米空軍と我が社Aerojetとライバル企業のATKは、「Minuteman III」の発展を目的に検討を行ってきた。その結果、次期ICBM着手に「産業基盤は準備完了」の状態にある。
●「我々は新たな素材を開発し、推進薬も見極め、ロケットエンジンも点火試験し、次世代の地上配備戦略抑止確立のスタート位置に付いている」とも表現した
●米空軍内での基礎的な調査研究は昨年終了しており、2016年3月にはRFP提案要求書が候補企業に向け発出される予期しており、選定された企業は2019年か20年に開発契約に至るものと考えている
●我がAerojet社は、企業選定を歓迎する。企業間の競争により、技術革新やコスト削減が進み、航空宇宙産業全体にとってベターだからである。
●どの企業が採用されようとも、「Minuteman III」が退役する2025年半ばから2029年以下かけ、次期ICBMは製造されるだろうとBright副社長は語った
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RFP発出から決定契約まで、および生産までの期間が異常に長いようにも思いますが、色々と確認すべき事があるのでしょう。
それまでの間に、核運用部隊の不具合や核兵器の管理問題が発生しないことを祈るばかりです。これは中国やロシアを含めての話です。もちろんパキスタンやインドでも。英仏でも。
何処の国の人間でも、この兵器を維持管理していくのは大変だと思います。米国だけ問題が明らかになり、他国ではひたすら隠しているのでは・・・と懸念しています
昨年11月14日:ヘーゲル国防長官(当時)
●継続して誰も注目せず資源配分もされなかった結果、核運用部隊の士官に、将来の伸展や昇進の見込みがない無視された分野に配属されたとの意識が染みついている
●ICBM部隊は組織改編の度にメジャーコマンド間をたらい回しにされ、予算も人的施策も後回し・・・誇りも気概も消え失せた
●資源投資の問題だけではなく、(海空軍の)文化の問題でもある
米軍「核の傘」で内部崩壊
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27
「米海軍トップが危機感訴え」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-10
「ICBM部隊に不合格判定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-15
「ICBM部隊で士官17名処分」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-11
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29
「米軍核戦力は大丈夫か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-28-1