19日、トルコの国防相が議会答弁で「企業及びシステム選定中の次期防空システムは、NATO防空システムと連接しない」と回答し、米国とNATO諸国に衝撃を与えると共に、かねてより米国が警告していた中国製システム導入に傾いたのでは、との憶測を呼んでいます
なお、ここで言う防空システムには、迎撃ミサイル、ミサイル発射機、捜索&ミサイル誘導レーダーと指揮統制装置が含まれています
トルコの防空システムは、その監視地域(air defense picture)の半分をNATOが資金や装備を拠出して運用していますが、それにもかかわらず、2013年9月にトルコが、中国製防空システムを導入すると発表して米国やNATO諸国が「激怒」し、制裁をちらつかせて「翻意」を促していたところでした
19日付Defense-Newsによれば
●19日、トルコのIsmet Yilmaz国防相は議会の質問に対し書面で、「計画中の航空機とミサイル対処防空ミサイルシステムは、現在運用しているNATOの防空システムとは連接せず、トルコ軍独自の指揮統制システム(national systems)と連接する」と回答した
●また同国防相は、導入予定のシステムとトルコ軍指揮統制システムとの連接作業は、トルコ政府が認定した企業が実施すると説明している
●更にYilmaz国防相は、防空システム導入は外国からの資金援助で行われ、新たな選定への応募企業は無い旨を明らかにした
これまでの経緯概要
●2013年9月、トルコは防空システムを中国企業CPMIEC(China Precision Machinery Import-Export Corp.)から、約3600億円で導入するといったん発表した。
●なおCPMIECは、イランや北朝鮮への装備品輸出が原因で、西側諸国の制裁を受けている企業である
●また、トルコ防空網はNATO防空網の一部をなし、同国監視地域(air defense picture)の半分をNATOが資金や装備を拠出して運用している
●NATO防空網の情報やNATOシステムに関する情報流出を懸念する米国やNATO諸国は、トルコの決定に強く反発し、中国製システムをNATOシステムと連接させない事や、CPMIEC関連事業に関与するトルコ企業を米国の制裁対象にすると伝えて再考を求めた
●NATO全体からも圧力を受け、その後トルコは、CPMIEC以外の提案企業からのヒアリングも開始した。これには「Aster 30」を提案するEuropean Eurosamや、「パトリオット」を製造するRaytheonが応じている
●昨年9月、トルコは交渉を進める中で、提案最終期限の5度目の延期(2014年末まで)を決定した。
●更に本年1月、6度目の延長として6ヶ月間の延期を発表していた
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想像をたくましくすると、中国政府の資金提援助を受け、中国企業製の防空ミサイルシステムを導入し、米国やNATOがうるさいからNATOシステムと連接せず、トルコ独自システムとして使用する・・とも解釈出来ます
航空機やミサイルの性能が向上する中、防空システムはなるべく広範な情報(範囲と深さ)を入手し、それら情報を融合して使用してこそ効果的なのですが、トルコの思惑はどこにあるのでしょう???
最初は、中国をちらつかせ、米国に「価格」や「技術提供」面で譲歩させる作戦かと思いましたが、今や中国製を導入決定する環境作りを行っているようにも見えます
イスラム国攻撃のための飛行場使用も許さず、バイデン副大統領の訪問でも態度を崩さなかったトルコ政府。不安定な中東情勢の中、「有力役者」の動きに注目です
トルコの防空システム選定
「4度目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-04
「トルコが中国企業と交渉開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-27
「トルコは中国製を選定か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-24