1日付で防衛研究所の阿久津博康・主任研究官が、防衛研究所webサイトに「日韓共通戦略目標を構想する」との小論を掲載しています。
韓国大統領が竹島に上陸して以来、新大久保韓国街の人通りが減るまで冷え込んだ日韓関係の中で、それでも重要な「日韓は協力すべし」論を展開する心意気を買ってご紹介します
阿久津研究員の小論は、金正恩の指導体制に関するものを以前紹介しましたが、今回が2回目です。
NIDSコメンタリー「日韓共通戦略目標を構想する」の概要
●日本人一般の感覚とは異なり、過去20年間に日韓安全保障協力は北朝鮮への対応をめぐり大幅に進展。現在停滞も、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結など、20 年前は誰も想像しなかった
●日韓の研究者の主な共通問題認識には、中国影響力の増大、ロシアの将来の不透明性、米国の国力の変化、米中関係の日韓への影響、韓米同盟と日米同盟の新たな課題がある
●勿論、日韓には差異があるが、共に米国の同盟国で基本的価値や利益を共有することから、両国が指向すべき戦略ヴィジョンは、自ずと自明。環境の変化の中。両国は共通戦略目標を立て、実現に向けてどのように行動すべきか真剣に考えるべき時。
●1998 年の日韓共同宣言「21世紀に向けた新たなパートナーシップ」には、基本的人権、民主主義、法の支配といった基本的価値を促進することを確約することが既に示されている。
●また、日韓は米国の地域における枢要な同盟国である。北東アジアの安全保障環境の変化に鑑み、両国の間により有効な安全保障協力関係が必要である
以上に基づき、私案「共通戦略目標」を提案
●米国のアジア太平洋地域での役割の重要性に鑑み、同国の安定的な関与と拡大抑止の強化・維持に資するべく努力する。
●六者会合を通じて朝鮮半島の非核化を達成し、関連する2005 年9 月19日の共同声明の完全な実施に向けて努力する。
●すべての国連加盟国が国連安保理決議第1718 号及び1874 号の規定を遵守する義務を引き続き有し、同決議の迅速かつ完全な実施に向けて努力する。
●将来の朝鮮半島の統一を見据え、民主主義と市場経済が主導する平和的な朝鮮半島の統一に向けて協力する。
●地域及び世界の安全保障に対する中国の貢献の重要性を認識しつつ、中国に対して、責任ある国際社会の一員として行動すること、軍事分野における透明性を高めること、及び表明した政策と行動との間の一貫性を維持することを更に促す。
●インドの継続的な成長が地域の繁栄、自由及び安全に密接に繋がっていることを認識しつつ、共通の利益の分野を進展させ協力を強化するため、インドとの協力を強化する。
●ASEAN拡大国防相会議や東アジア首脳会議等での取り組みを支援し、ASEAN との安全保障協力の強化に向けて努力する。
●豪州との安全保障協力の強化に努力するとともに、双方は日米豪及び韓米豪安全保障協力の強化・構築に努力する。
まんぐーす注・・・北朝鮮関連で出てくる「共同声明」や「国連安保理決議第1718 号及び1874号」は、北朝鮮の核実験を非難し、核兵器等開発の即時停止と制裁を表現したものです。
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あえてこの時期にこの主張を展開する姿勢に拍手です。
一般大学での教職ポストを狙った研究に勤しむ研究者が幅を利かせる防衛研究所の中にあって、自らの立場を理解した立派な研究姿勢です。
勿論、慰安婦問題や韓国大統領の態度に見る韓国人の姿は「嫌悪」以外の何物でもありませんが、海外の国際機関や欧米人とともに活動する組織内では、韓国人は何となく仲間意識を感じさせる存在ですから・・・。
「北朝鮮の新体制を探る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-28
「米豪文治関係のミニ分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-12-1
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7日、韓国政府は韓国が配備する弾道ミサイルの射程を、従来の300kmから西日本をカバーする800kmにまで延伸することを米国と合意したと発表
北朝鮮対応との説明ですが、防衛省による「日韓共通戦略目標を提案する」との小論発表の直後の公表だけに、防衛省による日本世論への緩衝剤的ねらいがあったのかも・・・
射程延伸については、日中露には事前通報していたと報道されていますので・・・
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