「J-20や空母に注目が集まるが、真の懸念は衛星破壊兵器や巡航ミサイル、サイバー攻撃能力」(IISS:英国際戦略研究所)
7日、IISS(英国際戦略研究所)が恒例の「ミリタリーバランス2012」を発表しました。7日付「Defense-News」より
会見でチップマン所長は:7日付「Defense-News」より
●グローバルな経済活動のシフトが、そのまま軍事支出にも反映されている
●2008年のリーマンショック以後、欧州とアジアの軍事費の差が縮まりつつあった。人口一人当たりの軍事費は欧州と比してアジアは非常に低いレベルにあるが、軍事費の総額では、2012年にアジアは欧州を抜くことになるだろう
●アジアでは、経済発展に伴い軍の近代化を進める中国の軍事費がリードしているが、欧州では経済危機以降、例えば軍事費トップの英国が3割削減するなど、装備品の将来調達や現有装備品数の削減、国防組織の縮小傾向が続いている。
●2008年から2010年の間では、NATO欧州メンバーの中で16ヶ国が軍事費を削減しており、その削減比率は10%を越える。
●このような予算削減の影響もありNATO加盟国間の能力差が拡大しており、リビア作戦時にはターゲティング、空中給油、ISR能力の差が問題となった
「警告:NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12
IISSプレスリリースでは中国を・・
●J-20や空母試験に注目が集まっているが、誇大な警鐘者が主張するより、中国の技術進歩はむしろ控えめである。J-20や空母の能力はたかが知れている。例えば、中国は固定翼機を空母から運用する能力はないのである
●しかし、中国の対衛星兵器、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー戦能力開発は、他国の国防関係者の頭から離れない。
●中国による近代装備の追求は、台湾海峡をはさんだ不均衡を拡大させている。
●中国軍の戦略的優先事項が、中国国境の防衛から、東アジアやシーレーンの安全確保への戦力投射へ徐々に拡大している
8日付読売新聞ロンドン特派員記事も・・
●中国については、過去10年で軍事費が2.5倍に達し、経済成長のペースを上回ったと指摘。
●ただし、ステルス性の高い次世代戦闘機J-20や、整備が進む初の空母ワリャーグに注目が集まるものの、真の懸念材料は衛星破壊兵器や巡航ミサイル、サイバー攻撃能力など。
●また、2050年までに米国の対等なライバルになるという中国の目標は達成可能だと分析
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このブログでは、CSBAやRANDのレポートを通じ、戦闘機や空母が真の脅威ではなく、衛星破壊兵器や巡航・弾道ミサイル、サイバー攻撃能力が新たに注目すべき脅威だと指摘し続けてきたのですが、IISSもこの流れに加わりました。
「お金儲けにどん欲」と言われ、シャングリラ・ダイアログ等、ダイアログシリーズの会議誘致を餌に資金提供をねじ込んでくる(らしい)IISSのチップマン所長ですが、中国の脅威に関する見立ては間違いないと思います。
「RANDが中国空軍戦略を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「映像と評価中国ステルス機J-20」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-30
「論争:中国空母は脅威か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
「画像中国空母Shi Lang施琅」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08
「中国海軍の何を恐れる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
「石破茂・元防衛大臣の疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-21