後半:欧州米空軍の苦悩と挑戦

Q:それらの取り組みに人員増は必要ないのか?
A:誰も聞きたくない(増員の)話をするのは気が進まない
C-17.jpg9月号のAirForce Magazine「European Crossroads」との記事を掲載し、欧州米空軍司令官へのインタビューを中心に、予算削減と脅威変化の嵐を真正面から受けている欧州米空軍の状況を、NATO加盟国との関係を柱に紹介しています。
具体的な数字や時期が明確になっていない部分も多いのですが、大まかな全体像を把握するのには好都合なような気がします。
自身のポストの格下げが決まっているウォルシュ欧州米空軍司令官(Gen. Mark A. Welsh III:大将)が語る後半の明日は、欧州米空軍の種々の新たな取り組みと限界についてです。
新たな協力関係構築の方向
●創造的問題解決と旧来にないパートナー関係の代表例がSAC(Strategic Airlift Capability)である。これは12カ国(NATO諸国とスウェーデンとフィンランド)で3機のC-17を協同で運用整備するモノで、1国では所有維持できない輸送機ニーズをまかなうモノである。
predator.jpgこれを将来、無人機のMQ-9・リーパーで実現できないかと考えている。独のRamstein空軍基地に協同の運用施設を設け、各国要員が運営に当たる形式
●英と伊は独自にMQ-9購入を決めているが、極めて莫大な投資を必要とする米の通信ネットワーク等を活用することになっている。AWACSも高価でNATOが協同運用しているが、その方式が出来ないはずはないと考えている。
無人機の課題は、米本土と同様に、混雑した航空交通環境下で航空局の許可が得られるかである。米でも議論中だが、欧州は更に困難と考えられる。
バルト3国の領空警戒は2004年からNATO諸国が行っているが、これを何とか出来ないかと考えている。同3国にはパイロットはいる。何らかの形で協同使用が出来ればと考えているが、空輸や無人機より利害調整が複雑かもしれない。
新規パートナー国空軍から要望
●1番目は、領空領域の防空要領である。その手順・技能等を米軍から学びたいとの基本的なニーズである。
●2番目は、戦場で負傷した兵士を救出し、後方の医療機関まで迅速に手当をしながら輸送する装備や技術。このような能力を保有していない国が多く、関心が高い。
●3番目は、航空機の維持整備に関する兵站システムである。旧ソ連方式では、一定の部品を事前に配分されてその中でやり来るする「PUSH」方式だったようだが、それでは多くの非稼働機が発生する。我々が採用している「pull」方式は、部隊の要求に応じて部品を提要する方式で、その違いを学びたいようだ。
●更に今後予想されるニーズとして、ミサイル防衛がある。この運用には航空作戦を指揮する現有の航空作戦センターがもっとも適しているだろう。指揮統制の通信手段もあり、ミサイル防衛用の各種状況把握表示機能が付加されれば使用できる。
Gen. Welsh III.jpg前線司令部からの懸念事項
経費節減熱というか、経費節減の風潮が一番心配だ。またそれが米国中心で考えてられていることがに懸念を覚える。
パートナーとの関係は常にケアが必要で、半年や1年に一度訪れ、共に行動しようと声をかけて動くモノではない。
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英や伊がどのように無人機MQ-9を保有し、米軍のネットワークを使用させてもらっているのか・・。憲法や法制の壁があるのでしょうが、日本が無人機を導入して運用するには、費用対効果で英や伊と方式が参考になるのでは、と思います。韓国とグループになるのは無理があると思いますが・・・。
それにしても、東欧のNATO諸国はまだまだ「日暮れて道遠し」ですね・・・。ウォルシュ大将の心中お察し申し上げます・・。
「警告する、NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12
「F-35は戦術核を搭載するか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
「初代アフリカ軍司令官の回想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-24
「対リビア作戦への参加国」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-27

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