「国防より組織防衛」

月刊誌・文藝春秋の12月号に、表題のコラムが掲載されました。「霞ヶ関コンフィデンシャル」というお役所人事を分析する欄で、企業人事を扱う「丸の内コンフィデンシャル」と並んで文藝春秋の人気コーナーの一つです。
中身はもちろん、防衛計画大綱での陸上自衛隊による増員要望への痛烈な批判です。その概要は・・・
bansyouK.jpg●12月に取りまとめ予定の新防衛計画の大綱で誰もが想定するのが、陸上自衛隊の縮減と、海上自衛隊と航空自衛隊の強化である。
しかし陸自は、現在の定員15万5000人を16万8000人に増加させるように要求している。南西諸島での利用防衛を訴えているが、こんなに必要なはずがない。
●中国は海空軍力を増強して我が国に迫っている。世界第6位の排他的経済水域を抱える我が国にとって、陸戦に備えるよりは安全保障を海や空から支える方が何より急務なはずだ
●それでも増員を主張しているのは、陸幕防衛部長の番匠幸一郎(写真上:サマワでの陸自初代指揮官)である。本来であれば上司である火箱(ヒバコ)陸上幕僚長(写真下)が組織を押さえなければならないが、もともと棚ぼたで陸幕長ポスト得たために、発言力が弱い
●陸自出身で制服トップの統合幕僚長である折木も、大先輩の西元徹也氏(元統幕議長)が北澤防衛大臣の補佐官に登用されたため身動きが取りにくい。なぜなら西元補佐官は統幕議長当時に一度陸自定員を削減しており、更なる削減に後ろめたさがある、と見られているからだ。
hibakoY.jpg政治サイドの削減要求に対し、「景気低迷の中、地方の就職対策の意味もある」と水面下で説明し、選挙をにらむ政治家の心をくすぐる。防衛大臣は増員に反対だが、陸自は旗を降ろさない。
陸自が増員に固執するあおりで、海自や空自の予算規模や調達装備が固まらない。きな臭いアジア情勢の中にあって、この国では、国防とはほど遠い組織防衛の論理が大手を振っている。(以上が記事概要)
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同じ12月号の文藝春秋に佐藤優氏の連載「古典でしか世界は読めない」があり、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を旧日本陸軍に当てはめて描いている。
●ガダルカナル島作戦について、誰もが難しい無謀だと考えながら、誰もそれを言い出せなかったことを例に挙げている。 つまり「負けるリスクを抱えながら突っ込んでいくコスト」と「これまでの集積をご破算にするコスト」を比較し、ご破算コストが圧倒的に大きいと考え、無謀な戦いに突っ込んでいった。
それを止めるのが幹部には期待されるが、それが出来ないのが日本の組織文化だ、との分析である。
コメントするのも疲れますが、「無謀な戦い」だけでは済まされない行為でしょう。
(関連記事)
「北岡伸一氏を支援する・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-04
「(2/2)「防衛白書」5つの背信」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-12
「(1/2)「防衛白書」5つの背信」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-11

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