消費者アンケートの罠と嘘

president.jpg見た目の似た2種類の「ジャム」を試食して好みのジャムを選んでもらい、数分の世間話後、別のジャムを意図的に「お好きなのはこれですね」と言って確認試食してもらっても、間違いに気づく客はわずか2割
消費者調査を経て市場に出ているのに、短期間に淘汰される商品が後を絶たない。そんな現実と消費者調査の罠と嘘を、雑誌プレジデント8月1日号が記事にしています。
「人は色んな状況を生き抜くために、意図的に建前や嘘をつく。また脳は融通性高く造られており、いつも揺らいでいる。」と説明する記事の概要は・・・
洗剤「アタックNEO」の例
presidentNEO.jpg●ほんの少量で洗濯でき、すすぎも1回でOK。節電・節水・時間短縮、ゴミも少ない画期的商品。環境大賞等にも輝き、話題性も申し分なし。
●消費者調査でも、模擬店舗販売でも、「これは良い」と圧倒的評価。この製品は市場に革命を起こし、占有率5割も夢じゃない・・出だしでも2割はとの見積もり
●しかし実態は、シェア一桁にとどまっている。改めて「なぜ買わないのか?」と聞くと、「こんな少量で以前と同じとは信じられない」や「なぜすすぎ1回で大丈夫なのか不明」と言った本音が。
メーカー宣伝担当者(経験17年)は、節電節水環境等を強調し、製品の良さが十分アピールできていないと反省
味の素のGABANスパイス・ドレッシングの例
presidentGABAN.jpg●味の素が何度も挑戦して破れてきたドレッシング市場に、満を持して投入した新製品
事前の調査で評判が良かったキャッチコピー「豪華な副菜」を正面に、肉や魚を野菜と混ぜて副菜にするコンセプトを提案。容器もインテリア感覚に溢れるもの
●発売から2ヶ月間は予想の5割り増しの売れ行き。しかしその後は急降下。一回は物珍しさで買ってもらったが、2回目は「副菜まで豪華にしていられない」との消費者の本音に直面し、リピーターが付かなかった。
●「コンセプトは分かるけど、実際は使いこなせないよね」との消費者の本音が後になって判明した。経験18年のマーケティング担当者、「それ良いね」との声を受けて発売したのに、裏切られた思いです。
ヘルシア緑茶の例
presidentHealth.jpg体脂肪対策として、カテキンを1日540mg摂取するコンセプトで開発。当初は苦みを除去する技術がなく、社内でも意見が割れた
開発段階の消費者調査では「こんな苦いものが飲めるか」とさんざんな結果。ただ、消費者調査の自由回答欄に「苦いけど、なんだか身体に効きそう」との意見に今思うとヒントが
苦みが意外と消費者にアピールするのでは・・・との思いも確証はなかった。
●しかし発売後、コンスタントに年間300億円売り上げるヒット商品に。
社内意見や消費者調査で出てこなかった「本音」後から出るケースが多発
消費者調査で8-9割の人が「買いたい」と答え、社内の審査をパスしても、実際市場で買ってもらえないケースが頻発している。調査では聞けなかった本音が、後から出てくることが、当たり前のように起きている。
●「ジャム」の例のように、時間や状況が変われば簡単に判断を変えるのが消費者で、アンケートの信頼性はそんなもの。本人の気付かない無意識領域で判断していることが多く、外からの観察が困難
●企業内にも課題が。社内会議では、直感的にAがよいと思っていても、論理的に良いと説明できなければ、説明しやすいBを推してしまうことがありがち。
●また社内での説明用に、簡単にネット上で調査し、結果を都合良く使用するケースが多々あるのも現実。先ほどの味の素担当者も「調査結果は如何様にもできる。設計時次第で意図的に誘導できる。だから最後は商品開発や市場調査担当者の嗅覚に掛かっている」
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読者の皆様も既に感じておられた内容かと思いましたが、具体例があって分かりやすかったのでご紹介しました。
ところで・・・最近、民放テレビ局の節電への放送姿勢が微妙です。自信のない番組ばかり放送していると、自局の視聴率ばかりが気になって節電など放送で口にできないのでしょう。あわれ・・。

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