Q:あなたは欧州に関心を失っていないか?
A:それは質問に値する合理的な問いだ
9月号のAirForce Magazineが「European Crossroads」との記事を掲載し、欧州米空軍司令官へのインタビューを中心に、予算削減と脅威変化の嵐を真正面から受けている欧州米空軍の状況を、NATO加盟国との関係を柱に紹介しています。具体的な数字や時期が明確になっていない部分も多いのですが、大まかな全体像を把握するのには好都合なような気がします。
具体的な時期は関係国と調整中ながら、自身のポストが大将から中将ポストに格下げが決まっているウォルシュ欧州米空軍司令官(Gen. Mark A. Welsh III:大将)は、軍人らしく淡々と、しかしその任務の重要性を巧みに訴えています。
同司令官の話を中心に、2回に分けてご紹介します。本日は欧州米空軍の方向と現状について、後半の明日は種々の新たな取り組みと限界についてです。
どのような変化が欧州米空軍に
●冷戦の終結と旧ソ連崩壊による存在意義の揺らぎ、更に米軍経費削減と体制見直しの一環で欧州米空軍司令官の4つ星から3つ星への格下げ決定により、欧州米空軍は地域で難しい立場に置かれている。同時に、欧州各国の経済情勢から来る平均2割の国防費削減により、環境も大きく変化しつつある。
●2012年末には、ほんの数年前に出来たばかりのアフリカ軍隷下の米第17空軍が閉鎖され、欧州担当の第3空軍と統合されることになる。
●装備や人員は減少方向にある中で、欧州とアフリカに任務をどう両立させるのかは未定である。特にアフリカ諸国との軍事関係が軌道に乗り始めた時期だけに、資源配分の優先順位に関し苦悩は大きい。
●欧州内の英・独・伊の米軍基地にはA-10やF-16が所在するが、F-22はハワイ、グアム、日本など西太平洋地域を中心に展開して欧州にはほとんど飛来しない。またF-35の欧州への配備の話は現時点でない。
●騒音問題もあり、英や独国内では住民の反対により低空飛行など本格的な演習などは出来なくなっており、ポーランド等の広大な空域を使用できる東欧諸国でも空域使用料の話が出てきている。
欧州各国軍との関係強化は
●欧州米軍司令官でNATO司令官でもあるスタブリディス海軍大将(Adm. James G. Stavridis)は、3つの目標、アフガンでの勝利、NATOチームの強化、同盟の将来形成を掲げている。特にパートナー国の能力強化に重点がある。
●例えば、昨年はJTAC(前線で地上から航空攻撃を誘導する要員)を72名、本年は214名要請してアフガンで活躍してもらっている。これにより米兵の派遣数を減らせている。
●また、大小あわせ年間1800程度の演習・会議・専門家の各国派遣等を行っている。着任する前、NATO加盟国でも何も出来ない国があるだろうと予期していたが、装備は不十分でも情熱・努力・人材でコミットしてる姿には正直感銘を受けている。
●欧州軍司令官の目標以外に、2つ重要な役割があると考えている。それは創造的問題解決と旧来にないパートナー関係である。
///////////////////////////////////////////////
欧州と同時に、アフリカへの関与も削減方向のようです・・・。資源を巡り、中国の怒濤の進出が叫ばれる中・・・。
欧州米空軍を取り巻く状況の一端ですが、指揮官のランク格下げと能力の実質削減・・・士気の低下も懸念ですね・・。
後半の明日は、種々の新たな取り組みと限界についてです
「警告する、NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12
「F-35は戦術核を搭載するか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
「初代アフリカ軍司令官の回想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-24
「対リビア作戦への参加国」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-27