英国軍大軍縮を例に警告

以前から折に触れご紹介してきましたが、英国にキャメロン新政権が誕生後、英国の財政立て直しのため強烈な緊縮財政措置が執られています。その一環として英国防予算も年率約9%の削減を求められ、大幅な人員や装備品削減が進められてきました。
AFSepcover.jpg9月号のAirForce Magazine巻頭言が英国の例を取り上げ、米政府もしっかりとした検討に基づいた予算削減を行わないと、とんでもないことになると警告しています。「とんでもない」部分には具体的説明はありませんが、米政府や議会内での予算削減議論もあわせて概要をご紹介します。
まず米国の予算削減の検討状況・・
●まず8月2日の期限ぎりぎりに、与野党が合意して米国の負債上限を引き上げることに合
次のハードルは11月23日までに越えなければならない。8月2日に可決された2011年予算に関する法律によって設けられた12名委員会は、12年から21年までの間に$1.5 trillionの財政支出を削減する計画を作成しなければならない。
●もし仮に11月23日までに上記計画が合意に至らなければ、上記法律により自動的に政府の全分野に渡って一律の予算削減が義務付けられ国防省は年間4兆円の削減を無条件で受け入れなければならなくなる。この削減規模は英国防予算の年9%削減と似た規模である。
英国防省による年9%削減の影響(一部)は・・・
HarrierRAF.jpg●英海軍と英空軍が保有するハリアー戦闘機の早期退役
●垂直離着陸型F-35の購入をキャンセルし、安価な空母艦載型に変更
●上記2項目の結果、最新の英国空母2隻は、今後10年間にわたって艦載機0機の期間が続く。
3つの英空軍基地を閉鎖
17000人の兵員を削減。空軍からは5000人を削減
25000人の文民職員を削減。
●ニムロッド海洋監視機の改良計画を中止し、退役させる
●ニムロッド偵察機も早期退役させ、結果的に2013年のRC-135導入まで機能欠落を受け入れる
AirForce Magazine巻頭言は英国の決定を
arkroyal2.jpg●詰まるところ、英国は世界においてより小さな役割しか担わないことを受け入れた。他への影響力、自らの国益防衛の能力、遠方への影響力の弱体化を招くことを受け入れた。
●英国空軍の前参謀総長はこの計画を、今の運用を続けることのみが可能で、突発事態やより大きな事態に対応する余力を全く考慮していない、と議会で酷評した。
●英国は今回の削減案を緊急にまとめるまで、過去12年間このような戦略的戦力分析を一度も行わなかった。このような不作為は今後決して許されない、と英議会の報告書は述べている。
米国は12名委員会と議会が協力し、合理的な国防費削減案を作成して無秩序に国防力を傷つけてはならない。
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AirForce Magazineは軍需産業や空軍OBの後援を受けた団体である空軍協会の機関誌で、国防費削減には反対の勢力です。しかし、それを差し引いても、英国の国防費削減は大胆です。
どの国の国防費も、人件費やローンの支払い等の固定費が多くを占めており、9%の削減は少ない裁量可能部分を全て削っても追いつかないレベルの削減でしょう。
「英軍が戦闘機部隊を無人機部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-23
「ああ・・英国空母競売」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-29-1
「英空軍2020年までに戦闘機半減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「英国も国防省改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-16-1

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