19日及び20日付のAF・Magazineサイト記事は、米空軍報道官が、イランが無人ステルス機RQ-170を手に入れてステルス技術が流出したとしても、当面米国の優位性は変わらない、と述べたと伝えています。
空軍報道官のSteffey少佐は・・・
●歴史を振り返っても、B-2やF-22などの新たな先端航空機システムを導入する際は、プログラム開始から前線配備まで15年以上が必要である
●我が国の競争国は先端技術を追い求めているが、彼らは先端装備を部隊配備しても、空で優位を獲得するにはまだまだ大きなギャップに直面するだろう
●低視認性技術の適用は極めて複雑で高度な課題であり、米国は反射波制御の戦術、訓練、維持整備の分野で優位な位置を維持している
●爆撃機開発に於いては、実証済みの技術を用いることで同開発プログラムの経費妥当性を保ち、主要リーダーがコストと性能のトレードオフに関わる判断を適切に出来るようなデータを提供し、調達コストを目標内に納める
また別の米空軍幹部も、米空軍の長距離攻撃用爆撃機(LRS-B)構想への影響については、まだ要求性能を如何にするかを検討している段階であり、RQ-170の件による影響はないし、仮に影響があったとしても十分に対応する時間はあると述べています。
「次期爆撃機に有人型は不要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1
「序論:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃システム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
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もちろん、痛手が大きくても大したことはないと強気な発言をするのでしょうが、ステルス機の運用が維持整備を含め大変手のかかる骨の折れる仕事であることは確かなようです。
また、航空機の開発には、前線配備までに少なくとも15年以上必要なことも事実で、その他多様な要素の成熟があって初めて、システム全体として機能を発揮することが可能となります。
以前もご紹介しましたが、例えば話題の中国J-20戦闘機に関しては、米軍事サイトにコメント記事が掲載されています。 Teal Groupと言う軍事コンサルタント会社の航空宇宙部門アナリストRichard Aboulafia副社長によると・・・・
●私(Aboulafia氏)は戦闘航空機の能力を以下の基準で評価する(主要なモノのみ)
1.当該機体以外の宇宙・地上・空中センサー、特によく訓練されたAWACS/AEW(早期警戒管制機)システムとの連接
2.機外のセンサーを含む各種センサー情報を効果的に融合し、操縦者に提供できる機能
3.統合早期脅威警報・警戒システム
4.信頼できるAESA(アクティブフェイズドアレイ)レーダー
5.各種情報や装備を活用するに足る十分な訓練と基本コンセプト
6.十分な稼働時間を有する強力なエンジン(超音速巡航が可能であればより良し)
7.視認性や被探知性の低い性質を備えた機体
8.十分に高い空中給油能力(装備・訓練・即応性)
9.高度で信頼性の高い精密誘導兵器
10. ハードとソフト両面で、しっかりした維持改良の将来計画を有する
11. 適切な機体整備能力があり稼働率を維持できる。また必要な部品や電子機器診断装置、理想的には状態モニタリングシステムが容易に確保できていること
●以上の基準(順序に意味無し)からすると・・・
–中国のJ-20は7番は満たしている。また9番は満たしつつあるが、その他には私は確信が持てない。
–7番を満たす機体に世界が注目するのを見るのは愉快だ。また航空ショウで「プガチョフ・コブラ」のような特殊な機動を見るのも楽しみだ。しかし現代の戦いには全く関係ない。
–F-35にも問題はある。しかし上記11項目の一つしか満たさない中国プロトタイプ機体との比較は、どの国の専門家の眼中にもない。
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非常に冷静なご指摘で大変勉強になります。です。
「映像と評価中国ステルス機J-20」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-30
「噂中国VSTOL機初飛行か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23-2
「論争:中国空母は脅威か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
「画像中国空母Shi Lang施琅」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08
「中国海軍の何を恐れる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
「石破茂・元防衛大臣の疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-21