16日、グリーナート海軍作戦部長(陸空の参謀総長と同格)がナショナル・プレス・クラブで講演し、米海軍を取り巻く種々の課題について語りました
複雑な国際情勢とアジア太平洋への「リバランス」推進のため、海軍兵士の派遣期間や頻度が上昇傾向にある中、様々なきしみを組織として抱えている様子が伺えます
勿論、「現状には満足しているが、種々の懸念に先行して対応が必要」とのスタンスですが、組織としては既に厳しい状況にある様子が伺えます
グリーナート海軍大将は・・・
●過去10年にわたり、海軍艦艇の約半数はアジア太平洋地域に前進展開していた。そしてその半数は展開先を母港のようにしている。
●このような前方展開は、同盟関係を確かにし、国際関係強化に貢献している。アイザ太平洋地域ではこのような関係が成熟度を増しており、例えば日本や韓国では、両国海軍関係者と同じ場所で勤務し、個人レベルでの関係まで深めている
●中国海軍との対話も、艦長レベルから更にハイレベルの艦隊司令官レベルにまで拡大しており、国防省の戦略に沿った方向で進んでいる
●リバランスはアジアだけに関するものではない。スペインのロタ島を米イージス艦4隻の母港にし、他6隻を他地域に転用する合意も最近結ばれたところである
●また、米西海岸により多くの艦艇を配備し、2020年までに西海岸を含む太平洋地域に全艦艇の6割を配属する予定である(「6割」の件は本年のシャングリラダイアログでパネッタ長官が発表したもの)
●現在は派遣艦艇の1/3が中東やアラビア海に展開している。18隻程度が地中海に所在している。これは重要な海上交通の要所であるスエズ運河、ホルムズ海峡、ジブラルタル海峡等へのアクセスを確保する助けとなるものである
●これら地域に米本国から艦艇を派遣すると、数日から3週間必要となる。この点から前進展開部隊は重要なのである
一方で兵士のストレスは大きな課題に
●性的襲撃(sexual assaults)と自殺事案の増加傾向は、海軍としても大きな課題である。性的襲撃の増加傾向に歯止めをかけ、減少させるに至っていない現状にある
●自殺については、数年前は10万人当たりの自殺者数が13名だったが、現在15名にまで増加している。我々は兵士たちがストレスに対処できるよう力付なければならない(empower our sailors)。また、誰かが兆候に気付いたら、ケアを提供できる準備がなくてはならない
●海軍の作戦派遣の頻度は、昨年よりも高まっている模様である。訓練や艦艇整備の調整も含め、どのように任務と負担軽減を調和させていくかを考えていかなくてはならない
●派遣されている艦艇への人員充足には満足しているが、高技能者とリーダーの配置には、全体のバランスに今後とも注意し修正を行っていく必要がある
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自殺者の比率は、日本社会全体で10万人当たり50人程度なので、海軍はそれよりは低いことになります。空軍も同程度だったような記憶が。
性的襲撃については、米空軍が9月ぐらいに「本年に入り少なくとも600件」と言ってましたので、これはけた違いに日本より多いと思います
「財政の崖」とか強制削減とかを話題にしていますが、足元の人的側面も危うい感じがします
「国防省の自殺防止会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25
「陸軍も6年連続自殺増」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-14
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19
「空軍内で既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1