岸田外相訪印:US-2は前進も原子力協定は停滞

Kishida-ASEM-Map.jpgニューデリー郊外のグルガオンで行われたアジア欧州会議(ASEM:11日)外相会議に出席のため、今年2回目のインド訪問をした岸田外相は、12日午前インドのクルシード外相と会談し、海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」のインド輸出に関し合同作業部会を近く設置することで一致しました。
しかし、日本の原子力発電装置輸出の前提となる日印原子力協定の交渉加速を確認したものの、妥結へ向けた前進はなかった模様です。各種報道を寄せ集めてご紹介します。
防衛省ネタのみで成果の岸田外相
US-2 2.jpg●US-2輸出関連以外にも、海上自衛隊とインド海軍による2回目の共同訓練を実施することも打ち出した
●US-2は、日本の新明和工業が開発した世界最高の能力を持つ救難飛行艇。インドへの輸出時には、武器や関連技術の輸出を禁じる武器輸出3原則に抵触しないように機体から敵味方識別装置などを外し民間転用してから輸出する見込み。
実現すれば政府が目指す防衛装備品の民間転用輸出の初めての例となる
日印原子力協定の交渉は頓挫
●福島原発の事故後中断していた交渉は今年9月に再開した。これまでの交渉では、日本側が「インドが核実験を再度実施すれば協定は破棄」との条件付けを主張し、インドが拒否してきた。
●更に協議が進む中で、事故の際に外国の原発企業に賠償責任を負わせるインド国内法について、日本側が懸念を深めている模様
●両国は年末ごろまでの安倍晋三首相訪印を目指しているが、首脳会談での交渉妥結は困難な情勢となってきた
天皇皇后両陛下の訪印調整も
Kishida-India.jpg●岸田外相はインド側に、11月末に予定している天皇、皇后両陛下のインド訪問協力も要請した
●また岸田外相は、自分が広島出身であることを紹介した上で、インド国会が毎年8月の広島と長崎の原爆投下日に議員による黙とうをささげていることに謝意を表明した
●安倍政権が力を入れる鉄道などのインフラ輸出に向け、ムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道計画(事業規模は最大1兆円)に新幹線システムを導入するよう働きかけ
ASEMでの出来事:番外編
11日のASEM会議の会場で、岸田外相は中国の王毅外相と握手した。岸田外相の中国外相との接触は昨年12月の就任以来初めて。7月にブルネイで開かれたASEAN関連外相会議の期間中にも王毅外相と接触することはできなかった。
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天皇陛下にご訪問頂くほど重視している対インド関係ですが、その重要な一翼を国産の航空機が担っていることを誇らしく思います
US-2は、小型ヨットで太平洋を横断中に遭難した読売テレビの辛坊治郎さんら2名を、6月21日に太平洋上の荒波の中で救助したことで国内でも名が知られるようになりました。
昨年の海上自衛隊観艦式でインド代表団がその能力を目の当たりし、猛烈にアタックを掛けてきた模様です
US-2 3.jpgこの救難飛行艇は、短距離の離水滑走でも高仰角離陸でき、かつ荒波着水時の衝撃を和らげるため低速での着陸が求められますが、これを可能にしたのが日本独自の「境界層剥離」を防ぐ技術です
高仰角離陸や低速着水には、翼のフラップを大きく下げて揚力を得ることが必要ですが、抑え角度を大きくとると翼の表面からフラップまで流れる気流が剥離してしまいます。
US-2はこれを防ぐため、境界層制御用に専用のエンジンによって圧縮された空気を翼の表目に吹き付け、空気の流れ(境界層流)が剥離しないように制御しているわけです
それにしても、原子力協定というのは難しそうです。「インド国会が毎年8月の広島と長崎の原爆投下日に議員による黙とうをささげている」ことに驚くと共に、「外国の原発企業に賠償責任を負わせるインド国内法」の存在にも時節柄を感じますし、東京裁判でのパール判事の勇気と正義感を忘れることも出来ませんし・・・
米印軍事関係の動向は?
「前進の兆し?カーター副長官訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1
「米軍がインド対応特別チームを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16
「2012年6月の訪印」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-06
「インド空軍が世界記録」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-31-1

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