3日早朝、産経新聞が「空自が敵基地攻撃を研究」との主旨の見出しを付け、今夏に航空自衛隊が設置を予定しているという「航空戦術教導団」(仮称)に関する「なんちゃってスクープ記事」を配信しました。
記事は「あの」半沢尚久記者によるもので、市ヶ谷の航空自衛隊関係者から「受け売り」されたであろう断片的な中身を、つれづれなるままに綴ったような内容ですが、その端々に「旧態然とした空軍の夢」を追い求める航空自衛隊の姿が垣間見えますのでご紹介いたします
「旧態然とした空軍の夢」とは、米空軍との共同作戦を「錦の御旗」に、本当は何時までも専守防衛にしがみ付いていたい戦闘機パイロットが愛玩する「約20年前」の湾岸戦争時の米空軍の姿です。
まんぐーすの勝手な邪推であればいいのですが、表面上は猫かぶっていても、戦闘機数に固執している以上、結果は同じです。
産経による「空自が敵基地攻撃を研究」記事の一部
●空自が敵基地攻撃能力の研究を本格化することは評価できる。中国と北朝鮮の「脅威」は差し迫っており、研究を急ピッチで進め、装備体系の構築も急務
●約10年前から敵基地攻撃対応に導入してきた。空中給油機や衛星誘導爆弾JDAM、F-35戦闘機がそれに当たる。
●一方で欠落能力もあり、電子戦がその典型。導入が進まなかったのは、秘匿性が高く、米軍が装備や技術の提供に消極的だったことが大きい。空自は電子戦訓練機を1機しか保有せず、老朽化も進んでいる
●防空任務でも重要性が増しており、中国の戦闘機による挑発の危険が高まる中、F-15戦闘機の改良や電子戦機の更新は待ったなし
●敵地攻撃の重要な「爆撃誘導員」も欠落している。米空軍ではヘリや落下傘降下で最前線に進出し、攻撃目標の映像や情報をリアルタイムで航空機に伝えている
「航空戦術教導団」の隊員の中には・・・
●敵ミサイル基地などの攻撃目標に近づき、戦闘機の飛行経路や爆弾投下のタイミングを指示する「爆撃誘導員」の任務が期待され、戦術教導団は誘導員の育成や訓練の内容を具体化させる
●現有装備で敵基地攻撃を行う場合、JDAM衛星誘導爆弾を投下するF-2戦闘機と、それを護衛するF-15戦闘機、敵レーダーを妨害する電子戦機EC-1、空中給油機が随伴。
●将来的には「爆撃誘導員」が敵地へ潜入する。平成28年度にF-35の調達が始まれば、F-2の任務を代替させる。
●戦術教導団はこの作戦を遂行できるよう各分野での課題を検証し、新規に導入すべき装備も洗い出す。
//////////////////////////////////////////////////////////////
この構想は、20年前にイラクによるクウェート侵攻を排除した湾岸戦争時の米空軍の作戦のイメージです。イラク軍のA2AD能力をほとんど無視することが出来た当時を「目標」にしています
今の中国が戦いの緒戦で多用すると世界の研究機関(日本を除く)が想定する、弾道ミサイルや巡航ミサイル、電子戦やサイバー攻撃や宇宙アセット攻撃等々から目を背け、F-15やF-35を中心で活躍させることを大前提にした構想です
半沢記者のたぶん適当な聞きかじりに熱くなっても仕方がないのですが、「爆弾誘導員が敵地に潜入」させるほどの決意があるなら、わが国もF-35戦闘機より遥かに「強靭性」や「費用対効果」や「抑止力」に優れた弾道ミサイルや巡航ミサイル配備をまず進めるべきでしょうし、既存の戦闘機に長射程ミサイルの搭載を考えるべきです
有人のステルス機ではなく、米海軍が間もなく導入するであろう無人ステルス攻撃偵察機(UCLASS)の日本導入もオプションとして見据えるべきです
それから・・・わが国の電子戦機導入が進まなかったのは、米軍の責任ではなく、戦闘機機数の維持だけに頭がいっぱいだったわが国の責任だと思います。空中給油機もISR能力も爆弾誘導員も基地強靭性もサイバーや宇宙も・・・全て戦闘機命派の組織防衛により無視され、F-35導入により今後も無視される重要分野です
中国軍事脅威の本質は?:世界標準の見方
「中国脅威をシナリオ風に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30
「脅威の変化を語る」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「戦闘機の呪縛」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
米海軍の無人ステルス攻撃機の方向性
「UCLASSの要求性能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24