29日付米海軍協会web記事は、28日下院軍事小委員会(Randy Forbes委員長)で行われた「宇宙ドメイン」に関する公聴会で、3名の専門家が宇宙での対中国の課題や対応について語っている様子を報じています。
記事は断片的にしか各発言を紹介していませんが、長らく「宇宙ドメイン」について取り上げていませんので、全体の雰囲気を感じるべくご紹介します
証言者は以下の3名です
Michael Krepon(スティムソンセンター)
Ashley Tellis(カーネギー財団)
Robert Butterworth(Aries Analytics Inc理事長)
現状の認識について
●我々は現実から逃げられない。衛星は簡単に発見されうる。
●中国は軍事的にも商業活動面でも、米国ほど宇宙アセットに依存していない
●中国が投資していると推測される「宇宙エネルギー兵器」等の兵器については、その効果についてほとんど判明していない
●中国が2007年に衛星攻撃兵器の実験を行って以降、中国も宇宙ゴミにより自らのアセットが危険にさらされることを認識したのか、直接攻撃手法から「soft kill」や「vision kill」に向かいつつある。
●中国は「ジャミング」に膨大な投資を行っている
●中国は宇宙での軍事について、米国とは大きく異なる見方をしている。その見方は冷戦時代のソ連とも異なる
●紛争時に宇宙が機能すると仮定すべきではないのに、米国は機能する前提に立っている
●米国の指揮統制システムは、比較的防護された衛星だけでなく、商用衛星や無防備な軍事衛星にも頼っており、脆弱である。
●大きな被害を受けた衛星を、迅速に入れ替えることは難しい。米国は一つの衛星に機能を詰め込み、少数の衛星に頼りすぎているからだ。交代や代替衛星の配置には長期間を要する
米国や同盟国等の対応について
●3名の専門家が揃って指摘したのは、宇宙アセットへの攻撃が「どこの誰から」かを把握するため、全ての高度帯において「宇宙状況認識」を確保する必要がある点である
●しかし、攻撃源の帰属を明らかにすることは難しい。宇宙システムが制約を受けて初めて攻撃源を探すが、迅速に特定するのは困難だ
●ただ、(攻撃を受けた際の)対応の選択肢を複数保持しておくことが、全ての敵対者に対し米国が優位を確保するには必要である
●明確に潜在敵が想定できる核抑止とは異なり、宇宙での抑止は多分に推測の世界である。しかし敵対的行動は大きな被害をもたらす
●宇宙における条約が実現困難な状況なので、「行動規範:code of conduct」制定の呼びかけや、中国の軍人と文民との冷戦時代に行ったような宇宙対話が適当ではないか。
●中国では軍と文民の間で、軍事的にも外交的にも、宇宙問題への対応がバラバラなのがその背景にある
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
非常に淡泊な紹介になりましたが、手短に宇宙を巡る現在の議論をおおむね網羅出来たと思います
中国が「ソフト」や「目くらまし」や「ジャミング」を重視し始めている点が興味深いです。
また、中国内で軍と文民がバラバラだとの指摘は、「やっぱりそうなのか」の指摘です。本当にお金や武器を持たせると心配な国です
宇宙カテゴリー関連記事
「日米で宇宙状況監視を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-11
「国防省の新宇宙政策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-23
「NATO宇宙サイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19