昨日に引き続き、サイバー戦を任務とする第24空軍を中心に、空軍教育訓練コマンド等が人材育成等に取り組んでいる様子を断片的ながら、Air Force Magazine9月号の「Building Better Cyberwarriors」との記事からご紹介します。
●人材確保の状況
本年10月1日までに、目標の約5割に当たる人材を確保予定。「5400人が米空軍内で行っている様々な業務要領に、サイバーカルチャーをたたき込む」との記事の記述からすると、24空軍の最終的な規模は5400人程度かもしれない(Holyland推定)
予備役や州空軍登録の者の中から、本分野に関わりのある1万人を24空軍や空軍宇宙コマンドに持ち込んだ(have brought)。
●サイバー業務の標準化
昨年夏の24空軍創設以来、全国のサイバー担当部署に人を派遣し、従来の業務要領を調査。その情報を元に、本年6月には個人や組織の能力を評価する基準を24空軍として標準化した。
更に本年10月の24空軍本格運用開始に向け、教育、作戦、運用手順等の業務要領を標準化して定める予定
●最新技術への取り組み
315th Network Warfare Squadron(NSAと同じ敷地内)は、メリーランド大学共同でサイバー攻撃、潜入、開発の最先端分野の革新的な業務に当たっている。またここに開設される2年のコースには、一人あたり約900万円の資金が投入され人材養成に当てられる。
昔の業務要領ではチェックリストを持って仕事する人間は「初心者」と見なされていたが、今現在では「ミスを犯さないよう」皆がチェックリストを確認しながら業務を進めている。
●取得調達業務の迅速化
航空機や衛星のような流れで取得調達業務を行っていては、日進月歩のサイバー戦分野で後れをとってしまう。これら業務の迅速化を推進する。
潜在的敵のサイバー分野への進出ハードルは極めて低い。パソコンや携帯電話等から参戦が可能である。同様に我々サイドもこの利点を生かし「それほど予算や期間を要しないで新技術や対処法を入手できる環境にあると考えるべきである。」(24空軍将来計画課長ウェイスミラー大佐)と改革への意欲を示している。
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この記事のように部隊名と任務の一端を公開することは、サイバー戦の性格を考えると好ましいとは思いませんが、「米軍のサイバー部隊が米国の法律に則って、決められた範囲の仕事をしていることを国民に理解してもらわなければならない」(米サイバーコマンドのアレクサンダー司令官:上院での証言)との発言が示すような「情報公開」も迫られているのでしょう。
「コンピュータを操作をする全ての兵士や職員が、空軍基地で無闇に飛行機に触れないような、基本的な躾を身につけることや意識改革が重要だ」との24空軍中佐の発言が核心を突いているような気がします。
(関連記事)
「(2/2)米空軍サイバーに取り組む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-07-1
「米サイバーコマンド道遠し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-16
「米サイバーコマンド準備中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-17
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7日付「Defense Tech」の記事によると、米軍サイバー戦の元締めサイバーコマンドの最大の悩みは、サイバー攻撃の法的根拠や権限をどこに求めるかにあるようです。
この根拠や権限の置き方によって、どのような被害を受けたら「攻撃を受けたと認定でき、反撃を合法化できるか」、また「反撃起こすのにどのような証拠が必要か」といった問いへの回答が得られるようでが、サイバー分野の法的解釈の整理に携わる法律家によると、現状ではそのような法体系が存在しない模様です。
サイバーコマンドは、情報や情報システムに対してdeceive, deny, disrupt, degrade, and destroyを行う技術を鋭意開発中のようですが、これを実行に移す後ろ盾が必要なようです。
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