4日付Defense-Tech記事によれば、空母艦載無人偵察攻撃機UCLASS(Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike System)の機種(企業)選定開始は、要求性能をめぐる国防省と米海軍との議論が収束せず、2016年まで遅れる模様です
本来なら昨年7月に、米海軍が企業へ提案要求書(RFP)を提示する計画だったのですが、国防省のみならず議会からも異論が出て収拾がつかなくなっているものです。
当初想定されていたステルス機で突破力のあるUCLASS構想が、米海軍によって「軽装備のISR機でステルス性もほどほど」の要求値に格下げされたのは、FA-18の後継機となる有人機FA-XXを守るための「組織防衛」措置であることが軍事メディアによる暴露されており、その成り行きが注目されていたところです
4日付Defense-Tech記事によれば
●米海軍高官は、UCLASS要求性能をめぐる国防省のレビューのため、機種(企業)選定開始が2016年に延期されたと語った
●計画では、昨年7月に提案要求書RFPが4つの企業に提示される予定だったが、米海軍の要求性能に対し議員や国防省高官からの疑問の声が上がり、作業が遅れていた
●昨年夏、本件に関しWork副長官ら国防省幹部が、米海軍を含む4軍関係者と米軍全体の航空戦力について会議を行い、その後国防省がUCLASSを含む航空戦力の「portfolio review」を行っている
●このレビューが終了後、その結果がUCLASSの提案要求書にも反映され、企業に提示されて選定作業がスタートすることになる模様
米海軍が要求したイメージは・・
●米海軍がまとめた「格下げ」要求は、「A2AD突破まで期待しない程度のステルス」、「軽攻撃能力」、「他機に空中給油可能」、「将来の能力向上が容易」等で、対テロ程度の能力で、対中国には不十分なレベル
●また、現在のISR機が展開先国との困難な調整を必要としていることを理由に、空母を拠点とするISR機が重要で必要だとの論理を打ち出し、対テロ組織用のISR機としての活用を前面に打ち出している
●このため、海軍の要求値はステルス性を十分に追及せず、他の兵器搭載量等を犠牲にしている。提案要求書RFP発出の一時中止は、国防調達評議会(DAB:Defense Acquisition Board)の議論を経て決定された
米海軍による「要求性能格下げ」理由は
●米海軍の作成したUCLASSの提案要求コンセプトは、米海軍の次期有人機計画を保護するために格下げされた。複数の関係者の証言から米海軍協会は確信した
●特にUCLASSの当初構想であったステスル機で突破力のある機体構想が、軽装備のISR機にされたのは、FA-18の後継機となるFA-XXを守るための措置だったのだ
●軍需産業、国防省、そして一部の海軍関係者は口をそろえ、「米空母へ無人機搭載する事への組織文化的&官僚組織的な抵抗」が原因だと訴えた
●米海軍内にも対立はあったようだ。有人機派と無人機への任務シフト派の対立である。しかし無人機の役割を制限し、FA-18後継機を守る一派が海軍のUCLASS要求を押し切った
●米海軍航空部隊には3つの大きな導入計画がある。F-35とUCLASSとFA-18後継のFA-XXである。米海軍はFA-XXとUCLASSの相関関係を否定し、別々に検討されていると主張するが、両者はトレードオフの関係にある。
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米海軍側は、予算の制約も「格下げ」理由に挙げていますが、なんかプンプン臭います。
カーター氏の議会ヒアリングが行われ、近々カーター国防長官が誕生しそうですが、カーター長官&ワーク副長官の強力コンビで、「組織防衛野郎」をぜひ排除していただきたいものです。
UCLASS関連の記事
「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12
「関連企業とRFP最終調整へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-19
「なぜUCLASSが給油任務を?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02-1
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSで空中戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24