対ISは強固でなく緩やかな連帯で

Tel Aviv University.jpg7日付Defense-Newsが、2日の週にイスラエル研究者達が実施した「ISとイラン間の情勢緊迫」を想定したシミュレーション検討会を紹介し、従来の敵と味方の概念が通じない新たな危機の中で、イスラエルはアラブ諸国と柔軟に協力して行かねばならないとの検討会の教訓を紹介しています
最近は、対イラン強硬姿勢を米議会で訴えたネタニアフ首相のイメージがイスラエルと重なっていますが、そのネタニアフでさえ昨年の国連演説で「隣国に対するフレッシュなアプローチ」を提案しています。
ISの突きつける新たな脅威を前に、このような姿勢が不可欠だろうと考えさせられます
7日付Defense-Newsによれば
Tel Aviv University3.jpg●この模擬シナリオゲームは、テルアビブ大学内の複数の政策研究機関や研究室が協力して行われた。各参加者が15の様々な関係国や機関を演じ、イスラエル軍事力を踏まえつつ、イスラエルがイランの核脅威と戦うには、柔軟にアラブ諸国と協力関係を築く必要があるとの教訓を導いた
●ゲームは、架空のイラン外相による「仮にISが、シーア派であるイランの都市に接近したなら、イランはISとその支配地域にあらゆる軍事手段を用いる事を躊躇しない」との声明発表から始まった
●これに対しISは、イラク内の支持者に「異教徒」を攻撃するよう呼びかけ、ヨルダンやシリア内の支持者に「路上でのデモ」等を呼びかけた。この結果、IS支持者による暴力的な活動が活発化し、世界各国が対応に乗り出す
Tel Aviv University2.jpg●模擬検討会の後、主催者の一人は「イスラエルは柔軟に、前例がない新たな地域同盟を育成する必要に迫られる」、「イスラエルは脅威認識に関する先入観から脱却し、古い敵や新しい敵の概念から解放されなければならない」と語った
●別の主要参加者も「イスラエルはハンマーで荒々しく事態に対処するやり方ではなく、メスで慎重に対応する方法を学ぶ必要がある」と訴えた
既にその兆しがあるのか
●テルアビブ大学の教授は「既に今までになかった、想定も出来なかった協力関係が形作られ始めている」と述べ、「IS対処の穏健スーニ派連携が形となりつつある。このような緩やかなリンクが中庸国家間で伸張につながる可能性があり、模擬ゲームでもヨルダンがその重要な役割を担う事が現れていた」と説明した
Moshe Dayan Center.jpg●更に「(他の分野では親密とは言えない)イスラエルとエジプトがハマス対策で協力したように、このような緩やかな連携が現実的で前進できる道である」、「現在の米政権は、このような連携を支持している」と語った
●そして「課題としては、仮にUAEやサウジと連携できたとして、ガザ地区のことを誰が見るのか、イスラエルとイランとの関係を何を視点に調整するのか、との大きな問題に直面するが・・」と語った
●また「穏やかなスーニ派連帯が可能かは不明確だが、米国によるイラクやシリアにおける過激派対策が、ますますイラン革命防衛軍を頼りにしつつあることも受け止めなければならない」と述べた
●なお、ネタニアフ首相も昨年の国連総会で「我々の隣国に対するフレッシュなアプローチで、困難な中でも平和に向け前進できる。平和に対する古い概念は改めるべきだ。近隣のアラブに対する新たな役割や責務を考慮しなければならない」と訴えていた
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この模擬ゲームにはテルアビブ大学の
・Lab for Policy and Security Simulations (SIMLAB)
Yuval Ne’eman Workshop
Moshe Dayan Center が参加しています
ネタニアフ首相の演説部分「It must take into account new realities and new roles and responsibilities for our Arab neighbors.」は微妙な表現で、政権が何を考えているのか良く分かりませんが、「old template for peace must be updated」はそうなのでしょう。
また、研究者がこの緊要な時期に、提示すべき視点をきちんと提示している点は素晴らしいと思います

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