2日付DODBuzzが、米海軍研究所(ONR:Office of Naval Research)研究者へのインタビュー記事を掲載し、米海軍が北極海の「氷の縮小」を把握するため、無人潜水艇(underwater drone)等を用いて精力的な調査を行っている様子を紹介しています
「氷の縮小」を把握するため・・・となっていますが、もちろん将来の潜水艦作戦を中心とした海での戦いを想定した調査も含まれるのでしょう。
技術的な部分はよくわかりませんが、推測を交えた意訳な訳で概要をご紹介致します
2日付DODBuzzによれば
●ONR所属の科学者であるMartin Jeffries氏は、米海軍が「氷の下」の海水の状態を調査し、氷の溶ける予測や海水の状態を把握するため無人潜水艇を展開させていると語った
●無人艇によって得られたデータは、氷解を予測するシミュレーションモデルの精度向上などに活用されると同氏は説明してくれた
●米海軍は「Arctic Road Map」を発表し、北極海の氷の急激な減少によって、当海域を担当する艦艇を今後20年間で増強する必要があると訴えており、その背景にはウクライナ情勢が示すロシアの攻撃的とも言える姿勢もある
●必要な海軍艦艇増強のペースを見積もるには、氷の減少ペースを出来るだけ正確に見積もる必要があるとのこと。ちなみに、過去8年間、北極の氷の面積は1979年以来の最低を更新し続けている
●調査のため米海軍は、ONRが海洋調査用に独自開発した無人水中艇「Seaglider」(長さ2.8m、重さ約50kg)を使用し、水深1000mまでの調査を行っている
●Jeffries氏は「海水温や塩分濃度等に関する情報を正確に把握することが出来る。氷が少なくなる夏季に、風と太陽光の影響を受けて氷の減少が加速するが、氷の下の海水の状態や動きを把握することで、氷解メカニズム全体をより正確に把握出来る」と語っている
●2014年夏までの段階で、100回以上の水中艇による調査が実施されている。水中艇運航時は、固定ブイから水中に吊されたケーブルから水中艇に、緯度経度情報が伝えられ、水中艇自身の位置把握を容易にする
●北極海は極度に多層化された海域であるが、水深1000mにまで及ぶ多層な調査により、風の影響で温かい海水が表面付近に持ち上げられている様子を確認出来る模様。
●氷は太陽光を反射し、海水による熱の吸収を妨げるが、氷が減少すると熱の吸収がますます増加することとなり、この氷解サイクルが加速することになる
●またJeffries氏は「太平洋から北極海に流入する温かい海水は水深50m付近で流入し、大西洋からのものは水深200m程度で来る。これが風の影響で深海や表面に混ぜられ、氷解を更に加速させる」と氷解により風の影響が大きくなる影響を分析している
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「ブイ」の話や、「無人艇による100回以上の調査」の部分は、上記の解釈で良いのか自信がありません
まぁ、最初に申し上げたように、「氷解の予測」だけで無く、将来の潜水艦作戦を中心とした海での戦いに資するデータの収集も兼ねて行われているのでしょう。
海は宇宙よりも未知の部分が多いとも言われますが、地道な努力が、つまり静かな戦いが既に始まっています。
北極海を巡る米国や露の動き
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20