嘘つき米空軍!?:A-10をシリア作戦に派遣

F-35整備員捻出にA-10全廃を進めるため、シリアでのA-10作戦は危険だと言い張ったとの疑念が・・・
Cook DOD.jpg20日、米国防省のCook報道官は記者会見で、少なくとも6機のA-10がトルコのIncirlik航空基地に展開し、シリア内での対IS作戦に加わると述べました。12機が展開してるとの報道もあります。
イラク内の対IS攻撃用に、既に昨年秋から1個飛行隊のA-10が「非公表の中東の基地」に派遣されていることは明らかになっていましたが、A-10によるシリア内での対IS攻撃は「危険だから決してない」と米空軍幹部が昨年は言い張っていたのに、あっさり派遣です
米軍事メディアの間には、米空軍に対する、「F-35整備員捻出にA-10全廃を進めるため、シリアでのA-10作戦は危険だと言い張ったのではないか」疑惑や、「A-10に活躍の場を与えたくなかったのではないか」疑惑が漂っています。
米空軍の「約300機のA-10を数年で全廃」要求は、2016年度予算案の議会審議で、強烈な反対に追って今年も却下されています。そう言えば夏頃、「A-10全廃に不利になるような発言は絶対するな。特に議員に対しては」と部下に指示していた空軍少将が、処分更迭される事件もありました
20日付DODBuzz記事によれば
A-10 4.jpg●従来の方針を変更したのか、20日米国防省は、シリアで対IS作戦に参加させるため、A-10攻撃機をトルコに派遣したと発表した。トルコ報道機関が速報したものを、米国防省が追認した形となった
●国防省のCook報道官は記者会見で、「少なくとも6機を展開」「詳細な数は把握していない」「通常の計画的なローテーション派遣の一環だ」と述べた
●昨年7月、当時の米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官であったMike Hostage大将は、A-10によるシリアでの作戦を危険だからと強く否定し、「なぜA-10を投入しないのかと皆が質問するが、A-10は1980年代の冷戦用に設計されたもので、厳しい対空脅威のあるシリアへは派遣出来ない。決して派遣することは無い」と語っていた
●また同大将は「仮に第4世代機をシリアに投入するとしたら、敵防空システムの制圧作戦を3週間は事前に実施する必要がある。低高度を飛行するA-10が受けるであろう敵攻撃を考えれば、A-10派遣はその中でも決して無い」と言い切っていた
20日付AFPは匿名米高官を引用し12機と
●20日、匿名を条件にした米政府関係者は、Incirlik基地に派遣されA-10攻撃機は12機だと語り、「他の作戦機より低高度を飛行するため、より高いリスクを負う」とA-10を表現した
●また同政府関係者は、北部シリアでの対IS作戦に使用されるだろうと述べ、ISと戦うため弾薬等の支援を先月受けた「Syrian Arab Coalition」等のグループを支援するとも語った。
全く別件ですが、同日・・・
20日、米露がシリア上空「安全覚え書き」に合意
20日付Defense-News記事によれば)
A-10 5.jpg●米露がシリア上空での飛行に関する「覚え書き」に署名したが、ロシア側の要求で内容は非公開であり、両国間に漂う不信感からすると、現実世界にはほとんど影響が無いと見られている
●20日、米国防省のCook報道官は記者会見で、「シリア上空での事案を防止するため、一連の手順を含む文書に合意した」、「もし露側がこの手順に従えば、シリア上空でのリスクは生じないはずだ」、「何が事象が発生しても、相互に空中で意思疎通し、双方が安全に運用出来るようするものだ」と説明した
●ロシア側の要求で、覚え書きの非公開になったことに関し、同報道官は「その様な要求があった。理由は分からない」とのみ答えた
●同報道官は細部に言及しなかったが、米国のみならず多国籍軍の航空機もカバーし、有人機と無人機の両方をカバーし、緊急時の通信周波数を含んでいるようだ
●ロシア軍機と多国籍軍機の「安全距離:safe distance」の定義に注目が集まったが、同報道官は具体的には言及しなかった。最近の報道では「hundreds of feet:100m程度」の接近が伝えられている
Cook DOD2.jpg●同報道官は覚え書きの有効性に関する質問に対し、「この様な文書を作成しなければならないこと自体が、ロシア側活動に関する懸念を示している」、「狭い範囲の特定事項に関する合意であり、将来ロシア軍と連携調整することを意味しない」と語った
ロシア国防省は米報道官の会見後直ちに声明を発表し、「露側は、国際テロ対処を前進させるため、もっと実質的な内容を含む覚え書きを望んでいた」、「例えば、米側にISの位置情報提供を要望したが、良い回答は得られなかった」、「撃墜されたり緊急事態航空機の相互通報や、共同した搭乗員の捜索救助を提案したが、賛同を得られなかった」と主張した
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米露の覚え書き協議は、想定通りの「冷え冷え」したものだったようです。偶発的事案が生起しないことを祈るばかりです。
米空軍を「嘘つき」と呼ぶのは酷でしょうか?
昨年秋からのF-22デビューも含めた多国籍軍によるシリア空爆で、シリア政府軍保有の準固定SAM「SA-2, SA-3 and SA-5」や、移動式SAM「SA-6, SA-8, SA-10 andSA-11」や対空機関砲が、かなり制圧されたかも知れません。
Hostage4.jpgしかし、当時の「米空軍パイロットのボス」が「絶対無い」と言い切っていたA-10派遣が、あっさり解禁になった背景を「想像」しないわけにはいきません
米空軍内のF-35命族(つまりA-10全廃推進族)の勢いが、議会の抵抗と現実の予算状況を受け、弱まってきたのかも知れません。もちろんシリア情勢が緊迫し、余裕が無い状態かも知れませんが・・・
A-10全廃案を巡る議論様々
「米陸軍は容認へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-29
「視界不良:A-10議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-07
「CASを統合で議論したい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-16-1
「F-35整備員問題は何処へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-18
「米空軍:A-10はあくまで全廃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-15
「A-10全廃案が浮上」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-16

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